この記事の対象:特定技能外国人の労働時間と残業代の取り扱いを確認する受入れ企業の人事・経理担当者、登録支援機関
法定労働時間と、時間外労働に必要な36協定
労働基準法第32条は、休憩時間を除いて1週間に40時間、1日に8時間を超えて働かせてはならないと定めています。
この時間を超えて働かせるには、第36条の労使協定(36協定)が要ります。事業場の労働者の過半数で組織する労働組合、ない場合は労働者の過半数を代表する者と書面で協定し、行政官庁に届け出ると、協定で定める範囲で時間外労働や休日労働をさせることができます。
協定には、対象の労働者の範囲、対象期間(1年間に限る)、時間外労働をさせる場合、1日・1か月・1年それぞれの延長できる時間または休日の日数などを定めます。協定がないまま法定の時間を超えて働かせたり、協定の範囲を超えさせたりすると、第119条により6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象になります。
出典:e-Gov法令検索「労働基準法」(昭和22年法律第49号)(確認日:2026年10月8日)
時間外労働の上限:月45時間・年360時間と、特別条項の上限
36協定で定める時間外労働の限度は、原則として1か月45時間、1年360時間です。
第36条第3項と第4項は、この限度時間を超えない範囲で協定を結ぶよう定めています。3か月を超える期間の変形労働時間制を採る場合は、1か月42時間、1年320時間です。
通常予見できない業務量の大幅な増加などで臨時的に限度を超える必要がある場合は、協定に特別な定め(特別条項)を置けます。その場合でも、時間外労働と休日労働を合わせて1か月100時間未満、時間外労働は1年720時間以内に収める必要があります。
協定の内容にかかわらず、使用者は、時間外労働と休日労働の合計を1か月100時間未満にし、対象期間の初日から1か月ごとに区切った各期間について、直前の1か月から5か月までを加えた2か月から6か月の平均を、それぞれ1か月あたり80時間以下にしなければなりません。第6項の違反も、第119条の罰則の対象です。
| 区分 | 上限 |
|---|---|
| 原則(協定の限度時間) | 1か月45時間・1年360時間 |
| 特別条項を置いた場合の1か月 | 時間外と休日労働の合計が100時間未満 |
| 特別条項を置いた場合の1年 | 時間外労働が720時間以内 |
| 複数月の平均 | 時間外と休日労働の合計が、2〜6か月の平均で1か月あたり80時間以下 |
出典:e-Gov法令検索「労働基準法」(昭和22年法律第49号)(確認日:2026年10月8日)
割増賃金率:時間外・法定休日・深夜・月60時間超
時間外労働には25%以上、法定休日の労働には35%以上、午後10時から午前5時の深夜労働には25%以上の割増賃金を、使用者は支払わなければなりません。
第37条は、時間外・休日の割増賃金を通常の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲で政令が定める率以上とし、1か月60時間を超えた時間外労働には5割以上としています。深夜の割増は2割5分以上です。
厚生労働省のリーフレットによると、月60時間を超える時間外労働の割増率50%は、2023年4月1日から中小企業にも適用されています。中小企業かどうかは企業単位で、資本金または常時使用する労働者数のどちらかが基準以下かどうかで判断します。基準は、小売業が5,000万円以下または50人以下、サービス業が5,000万円以下または100人以下、卸売業が1億円以下または100人以下、その他の業種が3億円以下または300人以下です。
月60時間を超える時間外労働が深夜に及ぶ場合は、深夜の25%と時間外の50%を足した75%になります。60時間の数え方には、法定休日に行った労働時間は含まれず、それ以外の休日に行った労働時間は含まれます。
割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当など厚生労働省令で定める賃金は算入しないと、第37条第5項にあります。割増賃金を払わない場合も第119条の罰則の対象です。
| 場面 | 割増率 |
|---|---|
| 時間外労働(1か月60時間以下) | 25%以上 |
| 時間外労働(1か月60時間超) | 50%以上 |
| 法定休日の労働 | 35%以上 |
| 深夜(午後10時〜午前5時)の労働 | 25%以上 |
| 1か月60時間超の時間外労働が深夜に及ぶ場合 | 75%以上(50%+25%) |
- 事業場で36協定を結び、行政官庁に届け出ているか
- 協定の限度時間と、特別条項の有無を確認しているか
- 月60時間を超える時間外労働に50%以上の率を使っているか
- 割増賃金の基礎から除く手当の範囲を給与計算の担当者と揃えているか
出典:e-Gov法令検索「労働基準法」(昭和22年法律第49号)(確認日:2026年10月8日)、厚生労働省「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」(中小企業の事業主向け)(確認日:2026年10月13日)
特定技能外国人の場合:国籍による差別の禁止と報酬の基準
労働基準法第3条は、国籍を理由に賃金や労働時間などの労働条件で差別的な取り扱いをしてはならないと定めています。
時間外労働の上限や割増賃金率について、特定技能外国人向けの別の定めは、今回確認した条文とリーフレットにはありません。日本人の労働者と同じルールが適用されます。
特定技能基準省令は、外国人の報酬の額を、日本人が同じ業務に従事する場合の報酬の額と同等以上にすることを求めています。出入国在留管理庁の運用要領は、通勤手当や扶養手当、住宅手当など実費弁償の性格を持つものは、一般的にここでいう報酬に含まれないとしています。詳しくは報酬の基準のガイドで扱っています。
このガイドは制度の説明です。個別の事業場の労働時間管理や賃金の計算が法に合っているかは、労働基準監督署や社会保険労務士などに確認してください。
出典:e-Gov法令検索「労働基準法」(昭和22年法律第49号)(確認日:2026年10月8日)、出入国在留管理庁「特定技能外国人受入れに関する運用要領」(確認日:2026年8月11日)、出入国在留管理庁「特定技能制度に関するQ&A」(確認日:2026年7月26日)
よくある質問
時間外労働には、どんな手続きが要りますか?
労働基準法第36条の労使協定(36協定)を書面で結び、行政官庁に届け出ます。協定がないまま法定労働時間(原則として1日8時間・1週40時間。小規模な事業場の特例は別に定めがあり、このガイドでは扱いません)を超えて働かせることはできません。
時間外労働の上限は何時間ですか?
協定の限度時間は原則として1か月45時間、1年360時間です。特別条項を置いても、時間外と休日労働の合計は1か月100時間未満、時間外労働は1年720時間以内です。
割増賃金の率はいくらですか?
時間外労働は25%以上、1か月60時間を超える部分は50%以上、法定休日の労働は35%以上、深夜労働は25%以上です。
中小企業は、月60時間を超える残業の割増率が違いますか?
厚生労働省のリーフレットによると、2023年4月1日から中小企業も50%以上です。猶予は終わっています。
参照した公的一次資料
- e-Gov法令検索「労働基準法」(昭和22年法律第49号)(確認日:2026年10月8日、次回確認:2027年1月8日)
- 厚生労働省「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」(中小企業の事業主向け)(確認日:2026年10月13日、次回確認:2027年4月13日)
- 出入国在留管理庁「特定技能外国人受入れに関する運用要領」(確認日:2026年8月11日、次回確認:2026年11月11日)
- 出入国在留管理庁「特定技能制度に関するQ&A」(確認日:2026年7月26日、次回確認:2026年10月26日)
次に確認すること
この記事の条件を引き継いで、未確認費目を整理する(金額は概算で、見積の代わりではありません)