この記事の対象:特定技能外国人を雇う企業の人事・労務担当者、雇用契約の賃金を見直す受入れ機関の担当者

算入する賃金:毎月支払われる基本的な賃金だけを比べる

最低賃金法第4条は、最低賃金の適用を受ける労働者に最低賃金額以上の賃金を支払う義務を定め、下回る契約部分は無効で最低賃金と同様の定めをしたものとみなす、としています。比較するのは、支払う賃金のすべてではありません。

厚生労働省の最低賃金特設サイトは、最低賃金の対象となるのは毎月支払われる基本的な賃金で、残業代やボーナスは含まれないと説明しています。実際に支払う賃金から、次の表の賃金を除いた額を比べます。

法第4条第3項は、1月を超えない期間ごとに支払われる賃金以外のもの、通常の労働時間または労働日の賃金以外のもの、その最低賃金で算入しないと定めたものを算入しないとしています。前の2つの中身は、施行規則第1条が定めています。

最低賃金の比較から除く賃金
除く賃金例根拠
臨時に支払われる賃金結婚手当など施行規則第1条第1項
1か月を超える期間ごとに支払われる賃金賞与など施行規則第1条第1項
所定労働時間を超える労働の賃金時間外割増賃金など施行規則第1条第2項第1号
所定労働日以外の労働の賃金休日割増賃金など施行規則第1条第2項第2号
午後10時〜午前5時の労働の賃金のうち通常の賃金の計算額を超える部分深夜割増賃金など施行規則第1条第2項第3号
精皆勤手当、通勤手当、家族手当毎月支払われる手当でも除く厚生労働省の最低賃金特設サイト

出典:e-Gov法令検索「最低賃金法」(確認日:2026年10月10日)、e-Gov法令検索「最低賃金法施行規則」(昭和34年労働省令第16号)(確認日:2026年10月13日)、厚生労働省 最低賃金特設サイト「ポイント!最低賃金」対象となる賃金は?(確認日:2026年10月13日)

時間額への換算:時給・日給・月給・出来高払の比べ方

地域別最低賃金は時間額で定められています。時給以外で賃金を決めている場合は、算入する賃金を時間額に直して比べます(施行規則第2条)。

日給は1日の所定労働時間数で(日額が定められた特定最低賃金が適用される場合は日給を日額と直接比べます)、月給は1か月平均所定労働時間数で割ります。所定労働時間が日や月で異なる場合の平均の取り方も、施行規則第2条が定めています。出来高払は、賃金算定期間の賃金総額を、その期間の総労働時間数で割ります。

基本給が日給制で職務手当が月給制のように組み合わさる場合は、それぞれを時間額に換算して合計し、最低賃金額と比べます。厚生労働省の例では、年間所定労働日数250日・1日8時間の会社で、月給の基本給150,000円と職務手当30,000円を算入します。

月の所定労働時間は8時間×250日÷12か月です。通勤手当5,000円と時間外手当は算入しません。

賃金の決め方ごとの比較式(厚生労働省の最低賃金特設サイト)
賃金の決め方比較式
時給時給 ≧ 最低賃金額(時間額)
日給日給 ÷ 1日の所定労働時間 ≧ 最低賃金額(時間額)
月給月給 ÷ 1か月平均所定労働時間 ≧ 最低賃金額(時間額)
出来高払制その他の請負制賃金総額 ÷ 総労働時間数 ≧ 最低賃金額(時間額)

出典:e-Gov法令検索「最低賃金法施行規則」(昭和34年労働省令第16号)(確認日:2026年10月13日)、厚生労働省 最低賃金特設サイト「ポイント!最低賃金」最低賃金のチェック方法は?(確認日:2026年10月13日)

適用範囲:地域別は全労働者、特定最低賃金は産業ごと

厚生労働省は、地域別最低賃金は雇用形態や呼称に関係なく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用されると説明しています。

特定(産業別)最低賃金は、特定の産業の基幹的労働者に適用されます。18歳未満または65歳以上の人などは適用されず、対象は特定最低賃金ごとに異なります。特定最低賃金の額は、その事業場の地域別最低賃金を上回らなければなりません(法第16条)。

二つ以上の最低賃金が適用される労働者には、そのうち最高の額で第4条を適用します(法第6条)。地域別最低賃金の額は、事業場の所在地の都道府県のものを、年度ごとの全国一覧で確認します。この記事には金額を載せていません。

出典:e-Gov法令検索「最低賃金法」(確認日:2026年10月10日)、厚生労働省 最低賃金特設サイト「ポイント!最低賃金」適用される対象者は?(確認日:2026年10月13日)、厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」(確認日:2026年10月10日)

減額の特例:都道府県労働局長の許可が前提

法第7条は、使用者が都道府県労働局長の許可を受けた場合に限り、一定の労働者について最低賃金額を減額して第4条を適用すると定めています。

厚生労働省は、対象として、著しく労働能力の低い障害のある人、試の使用期間中の人、認定職業訓練のうち基礎的な技能等を習得させるものを受ける人、軽易な業務に従事する人、断続的労働に従事する人を挙げています。

許可申請は、所定様式の申請書2通を、所轄の労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長へ提出します。許可を受けずに、試用期間であることを理由に最低賃金額を下回る賃金にすることはできません。

出典:e-Gov法令検索「最低賃金法」(確認日:2026年10月10日)、厚生労働省 最低賃金特設サイト「ポイント!最低賃金」適用される対象者は?(確認日:2026年10月13日)

周知義務と罰則:掲示で概要を知らせ、違反は50万円以下の罰金

最低賃金の適用を受ける使用者は、最低賃金の概要を、常時作業場の見やすい場所に掲示するなどして労働者に周知させる措置をとらなければなりません(法第8条)。

地域別最低賃金について第4条第1項に違反した場合は、50万円以下の罰金の定めがあります(法第40条)。労働者は、違反があるときに都道府県労働局長、労働基準監督署長または労働基準監督官へ申告でき、使用者は申告を理由に解雇その他不利益な取扱いをしてはなりません(法第34条)。

改定後の額と発効日は年度ごとに公表されるため、改定のたびに、算入する賃金を時間額に換算して比べ直します。このガイドは制度の説明です。個別の事案は、都道府県労働局や労働基準監督署に確認してください。

  • 事業場の所在地の地域別最低賃金と発効日を確認する
  • 算入しない賃金を除いて時間額に換算する
  • 該当する特定最低賃金があれば高い方と比べる
  • 減額の特例は許可を受けた場合に限る
  • 概要を見やすい場所に掲示する

出典:e-Gov法令検索「最低賃金法」(確認日:2026年10月10日)、厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」(確認日:2026年10月10日)

よくある質問

通勤手当や残業代は最低賃金の比較に含めますか?

含めません。厚生労働省の最低賃金特設サイトは、精皆勤手当、通勤手当、家族手当と、時間外・休日・深夜の割増賃金を、最低賃金の対象とならない賃金として挙げています。

月給制の場合、最低賃金とどう比べますか?

算入する月給を1か月平均所定労働時間で割った時間額を、最低賃金額(時間額)と比べます。月の所定労働時間は、年間の所定労働時間を12か月で割る例が厚生労働省の資料に示されています。

試用期間中は最低賃金を下回る賃金にできますか?

使用者が都道府県労働局長の許可を受けた場合に限り、減額の特例があります(法第7条)。許可なく下回る賃金にはできません。

特定技能外国人にも日本人と同じ最低賃金が適用されますか?

地域別最低賃金は、雇用形態や呼称に関係なく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者に適用されると厚生労働省が説明しています。

最低賃金は毎年変わりますか?

地域別最低賃金の額と発効日は、厚生労働省が年度ごとに全国一覧で公表しています。改定のたびに賃金を比べ直します。

参照した公的一次資料

試算に使う一次資料の一覧と確認状況を見る

次に確認すること

この記事の条件を引き継いで、未確認費目を整理する(金額は概算で、見積の代わりではありません)