この記事の対象:特定技能外国人の時給を最低賃金に合わせて引き上げる受入れ企業の経営者・人事・労務担当者

助成金の仕組み:賃金の引上げと設備投資をセットで行う

業務改善助成金は、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げ、生産性向上に資する設備投資等を行ったときに、その費用の一部を助成する制度です。

厚生労働省のページによると、事業場内最低賃金は事業場で最も低い時間給を指します。ただし、この助成金では、雇用保険被保険者で雇入れ後6か月を経過した労働者の事業場内最低賃金を引き上げる必要があります。

助成額は、設備投資等にかかった費用に助成率をかけた金額と、助成上限額を比べて、いずれか安い方です。リーフレットの計算例では、事業場内最低賃金が1,040円の事業場が8人を90円コースで引き上げ、設備投資が600万円のとき、助成率4/5で480万円、上限額が450万円なので、450万円が支給されます。

賃金の引上げ計画と設備投資等の計画を立てて申請し、交付決定を受けてから計画どおりに実施します。事業の結果を報告したあとに、費用の一部が支給されます。

  • 事業場で最も低い時間給を把握している
  • 引き上げる労働者が雇用保険被保険者で、雇入れ後6か月を過ぎている
  • 設備投資等の見積書を用意している
  • 交付決定の前に設備を購入・導入していない

コース別の助成上限額:50円・70円・90円以上の3種類

令和8年度のリーフレットは、事業場内最低賃金の引上げ額に応じて、50円コース、70円コース、90円コースの3つを示しています。

上限額は、引き上げる労働者の人数でも変わります。下の表の左の金額は「特例事業者以外の事業者」、右の金額は「特例事業者」の上限額で、10人以上の区分は、特例事業者が10人以上の賃金を引き上げる場合だけが対象です。

賃金が事業場内最低賃金の労働者を引き上げて追い抜かれる労働者も、申請コースと同額以上引き上げていれば、引き上げる労働者の数に含められます。数え方の詳細は、厚生労働省の申請マニュアルで確認します。

令和8年度の助成上限額(特例事業者以外/特例事業者。厚生労働省リーフレット)
引き上げる労働者数50円コース70円コース90円コース
1人30万円/40万円40万円/50万円90万円/100万円
2〜3人40万円/70万円50万円/100万円150万円/240万円
4〜5人70万円/70万円130万円/130万円270万円/270万円
6〜7人90万円/90万円180万円/180万円360万円/360万円
8人以上110万円/110万円230万円/230万円450万円/450万円
10人以上(特例事業者のみ)130万円300万円600万円

特例事業者の2つの要件

特例事業者になると、助成上限額の拡大を受けられます。厚生労働省のページは、次のア・イのいずれかに当たる事業者を特例事業者としています。

アの賃金要件は、事業場内最低賃金が1,050円未満の事業場について申請する事業者です。イの物価高騰等要件は、原材料費の高騰などの外的要因で、申請前6か月の平均の利益率が前年同期より3%ポイント以上下がった事業者です。

イに当たる場合は、申請時に「事業活動の状況に関する申出書」の提出が必要です。助成対象経費も広がり、通常は対象外のパソコン、スマートフォン、タブレットなどの端末と周辺機器の新規導入が認められます。

申請期限と賃金を引き上げる期限:発効日の前日まで

令和8年度の申請期間は、9月1日から、申請事業場の都道府県の地域別最低賃金の発効日の前日か11月30日の、いずれか早い日までです。

厚生労働省は、都道府県によっては9月末が申請期限になるとして注意を呼びかけています。賃金の引上げも、地域別最低賃金の発効日の前日までに完了し、引上げ後の額を就業規則等に定める必要があります。リーフレットの例では、10月1日に新しい地域別最低賃金が発効する場合、9月30日までに引き上げた事業場は対象で、10月1日に引き上げた事業場は対象外です。

設備の納品、代金の支払、賃金の引上げは、いずれも交付決定の属する年度の1月31日までに終える必要があります。やむを得ない理由があり、事前に理由書とともに申請したときは、3月31日までの延長が認められる場合があります。

令和8年度の主な期限(厚生労働省)
項目期限・条件
交付申請9月1日〜地域別最低賃金の発効日の前日か11月30日の早い日
賃金の引上げ申請事業場に適用される地域別最低賃金の発効日の前日まで
事業完了(納品・支払・賃金引上げの最も遅い日)交付決定の属する年度の1月31日(事前申請で3月31日まで延長の場合あり)
設備の導入交付決定のあと(決定前に導入した設備は対象外)

対象事業者と引き上げる労働者の条件

リーフレットは、対象事業者を中小企業・小規模事業者とし、事業場内最低賃金が令和8年度の地域別最低賃金未満であることを求めています。

解雇や賃金の引下げなどの不交付事由がないことも要件です。申請は、工場や事務所などの労働者がいる事業所ごとに行い、同じ事業所の申請は年度内に1回までです。

引き上げる対象の労働者は、週の所定労働時間が20時間以上の雇用保険加入者です。複数回に分けた引上げは認められません。地域別最低賃金の水準や、最低賃金に算入する賃金の範囲は、最低賃金法と厚生労働省の案内で確認します。

  • 中小企業・小規模事業者に当たる
  • 事業場内最低賃金が令和8年度の地域別最低賃金を下回っている
  • 解雇や賃金の引下げなどの不交付事由がない
  • 引き上げる労働者が週所定20時間以上の雇用保険加入者である

特定技能外国人を雇う企業が使うときの注意

今回確認した厚生労働省の2つの資料に、国籍や在留資格による対象の区分は書かれていません。

特定技能外国人を引き上げる労働者に数えるかどうかや、設備投資が助成対象になるかは、個別の事情で変わります。申請先は事業所の所在地を管轄する都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)で、電子申請にはJグランツとGビズIDプライムを使います。

厚生労働省のページは、厚生労働省から委託を受けたと装って助成金の活用を勧誘する事業者がいると注意を呼びかけています。厚生労働省や労働局が、特定の事業者に助成金の勧誘を委託することはありません。このガイドは制度の説明で、申請の代行や個別の可否の判断は行いません。

よくある質問

業務改善助成金は何に使えますか?

事業場内最低賃金を引き上げたうえで行う、生産性向上に資する設備投資等(機械設備の導入やコンサルティングなど)の費用の一部に使えます。賃金の引上げだけでは対象になりません。

助成上限額はいくらですか?

引上げ額のコース(50円・70円・90円以上)と引き上げる労働者数で決まります。令和8年度は、特例事業者以外で30万円から450万円まで、10人以上の賃金を引き上げる特例事業者は最大600万円です。

設備を先に買ってから申請してもよいですか?

交付決定の前に助成対象の設備を導入した場合は、助成の対象になりません。計画を申請し、交付決定を受けてから導入します。

賃金はいつまでに引き上げますか?

申請事業場に適用される地域別最低賃金の発効日の前日までです。事業の完了は交付決定の属する年度の1月31日までで、やむを得ない理由があるときは3月31日までの延長が認められる場合があります。

引き上げる労働者に条件はありますか?

週の所定労働時間が20時間以上の雇用保険加入者です。事業場内最低賃金は、雇用保険被保険者で雇入れ後6か月を経過した労働者の賃金を引き上げる必要があります。

参照した公的一次資料

試算に使う一次資料の一覧と確認状況を見る

次に確認すること

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