この記事の対象:特定技能外国人の残業が月60時間を超えることがある企業の人事・労務担当者、登録支援機関の担当者

代替休暇は、月60時間超の引上げ分だけを休暇に置き換える制度

代替休暇は、月60時間を超えた時間外労働の割増賃金のうち、引上げ分(協定で定めた2つの率の差。資料の例では5割と2割5分の差)の支払いに代えて、有給の休暇を与える制度です。

労働基準法第37条第1項ただし書は、時間外労働が1か月について60時間を超えた場合、その超えた時間の労働について、通常の労働時間の賃金の計算額の5割以上の率で計算した割増賃金を支払うよう定めています。

同条第3項は、事業場の労働者の過半数で組織する労働組合、ない場合は労働者の過半数を代表する者との書面による協定で、この割増賃金の支払いに代えて、通常の労働時間の賃金が支払われる休暇を与えることを定められるとしています。年次有給休暇(第39条)は、この休暇から除かれています。

厚生労働省の資料によると、この制度は、特に長い時間外労働をさせた労働者に休息の機会を与えることが目的です。休暇を取得した場合に支払いが不要になるのは、引上げ分の割増賃金だけです。

中小企業にも、2023年4月1日から月60時間超の割増賃金率5割が適用されています(厚生労働省のリーフレット)。このため、代替休暇の制度も中小企業が使える対象になっています。

月60時間超の割増率そのものは、割増賃金率のガイドで確認できます。

労使協定で定める事項は、算定方法・単位・期間・取得日の決め方

代替休暇を使うには、労使協定を結び、就業規則にも内容を定める必要があります。

労働基準法施行規則第19条の2第1項は、協定で定める事項として、代替休暇として与えられる時間数の算定方法、代替休暇の単位、代替休暇を与えられる期間の3つを挙げています。

厚生労働省の資料は、これに加えて、代替休暇の取得日の決定方法と割増賃金の支払日も労使で定めておくべきものとしています。この協定は、労働基準監督署への届出は不要です。

同じ資料によると、代替休暇は労働基準法第89条第1項第1号の「休暇」に関するものなので、就業規則にも内容を規定する必要があります。協定は事業場で制度を設けられるようにするだけで、個々の労働者に取得を義務づけるものではありません。

労使協定で定める事項(上3行は施行規則第19条の2第1項、4行目は厚生労働省の資料)
事項内容
算定方法月60時間を超えた時間数に、換算率(取得しないときの率と取得したときの率の差)を乗じて、休暇の時間数を出す
単位1日または半日。他の有給の休暇と合わせた1日または半日を含めることもできる
期間60時間を超えた月の末日の翌日から2か月以内
取得日の決め方・支払日(資料が定めておくべきとする事項)取得の意向の確認方法と取得日の決め方、割増賃金をいつ支払うか

休暇の時間数は、60時間超の時間数に換算率を掛けて出す

換算率は、代替休暇を取得しなかったときの割増賃金率と、取得したときの割増賃金率の差です。

施行規則第19条の2第2項は、月60時間を超えた時間数に換算率を掛けて算定すると定めています。厚生労働省の資料の式は、代替休暇の時間数=(1か月の時間外労働時間数-60)×換算率です。

資料の例では、取得しなかった場合の率が50%、取得した場合の率が25%で、換算率は0.25です。時間外労働が76時間なら、(76時間-60時間)×0.25=4時間が、代替休暇として取れる時間数になります。

取得した休暇の時間数に対応して支払いが不要になる時間外労働の時間数は、取得時間を換算率で割って求めます(施行規則第19条の2第3項)。4時間の休暇なら、4時間÷0.25=16時間分の引上げ分が不要になります。

資料の別の例では、月60時間超の時間外労働が40時間、換算率25%で、休暇にできる時間が10時間です。半日(4時間)を1回取得すると16時間分の引上げ分が不要になり、残りの24時間分は50%の割増賃金を支払います。

計算の例(厚生労働省の資料の数値)
項目例1例2
月の時間外労働76時間60時間超の部分が40時間
換算率0.250.25
代替休暇にできる時間4時間(16時間×0.25)10時間(40時間×0.25)
半日(4時間)を取得したとき引上げ分の支払いは16時間分が不要引上げ分の支払いは16時間分が不要、残り24時間分は50%で支払う

単位は1日か半日、期間は2か月以内。端数は他の有給休暇と合わせられる

休暇の時間数が1日や半日にそろわないときの扱いは、協定で決めておきます。

厚生労働省の資料によると、半日は原則として1日の所定労働時間の半分ですが、午前3時間半・午後4時間半のように分けることも、協定で定めれば可能です。

端数が出たときの処理は2通りです。端数にならない部分だけを休暇にして残りを割増賃金で支払う方法と、協定で認めている場合に、端数の時間に他の有給の休暇を合わせて半日または1日にする方法です。他の有給の休暇には、事業場で任意に設ける休暇、既存の休暇、年次有給休暇があり、年次有給休暇を合わせるときは労働者がその時季に請求することが前提です。

与えられる期間は、60時間を超えた月の末日の翌日から2か月以内です。1か月目と2か月目の分を合算して取得することもできます。

取得は本人の意思。取得しなかった分は、割増賃金で支払う

代替休暇を取るかどうかは労働者が決めます。会社が取得を強制することはできません。

厚生労働省の資料は、取得するかどうかは法律上、労働者の意思に委ねられており、これを強制してはならず、取得日も労働者の意向を踏まえたものにしなければならないとしています。

期間内に取得されなかった場合も、使用者の割増賃金の支払義務はなくなりません。代替休暇として与える予定だった分を含めて、すべての割増賃金を支払う必要があります。

代替休暇は、通常の賃金が支払われる休暇なので、無給にすることはできません。同じ資料のQ&Aが示しています。

意向の確認は、たとえば月末から5日以内に、取得するかどうかを使用者が労働者に尋ね、取得する場合に取得日を決める、という手順を協定に定めておく方法が資料に例示されています。外国人従業員に確認するときは、本人が内容を理解できる言語や方法を選ぶことが考えられます。

適用の可否や個別の判断は、所轄の労働基準監督署に確認してください。当サイトは個別の労務判断をしません。

  • 月60時間を超える時間外労働が実際に出ているか、月ごとに集計しているか
  • 書面の労使協定で、算定方法・単位・期間を定めたか
  • 取得日の決め方と割増賃金の支払日を定めたか
  • 就業規則に代替休暇の定めを入れたか
  • 取得を強制せず、本人の意向を確認する手順を決めたか
  • 取得しなかった月は、引上げ分を含めた割増賃金を支払っているか

よくある質問

代替休暇の労使協定は、労働基準監督署に届け出ますか?

届出は不要です。厚生労働省の資料に、この労使協定は労働基準監督署への届出は必要ないと書かれています。ただし、就業規則には代替休暇の内容を規定する必要があります。

代替休暇を取ると、割増賃金は全額払わなくてよいのですか?

全額ではありません。支払いが不要になるのは、月60時間を超えた分の引上げ分(協定で定めた2つの率の差。資料の例では5割と2割5分の差)だけです。厚生労働省の資料の例では、半日の休暇を取っても、残りの時間外労働には50%の割増賃金を支払います。

会社が代替休暇の取得を指示できますか?

できません。厚生労働省の資料は、取得するかどうかは労働者の意思に委ねられており、強制してはならないとしています。取得日も労働者の意向を踏まえて決めます。

代替休暇を無給にできますか?

できません。厚生労働省の資料のQ&Aは、代替休暇は通常の賃金が支払われる休暇であり、無給にはできないとしています。

期間内に取得されなかったときは、どうなりますか?

割増賃金の支払義務はなくなりません。代替休暇として与える予定だった分を含めて、すべての割増賃金を支払う必要があります。

参照した公的一次資料

試算に使う一次資料の一覧と確認状況を見る

次に確認すること

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