この記事の対象:特定技能外国人を雇う企業の人事・労務担当者、妊娠の申出を受けた受入れ機関の担当者

産前産後休業:産前6週(多胎14週)は請求、産後8週は就業させない

労働基準法第65条は、6週間(多胎妊娠は14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合は就業させてはならない、産後8週間を経過しない女性も就業させてはならない、と定めています。

厚生労働省のQ&Aによると、産前休業は女性が請求した場合に就業させてはならない期間で、産後休業は請求がなくても就業させてはならない期間です。

ただし、産後6週間を経過した女性が請求し、医師が支障がないと認めた業務に就かせることは差し支えありません(第65条第2項ただし書)。同Q&Aは、これらの保護規定がパート、アルバイト等を含むすべての妊産婦に適用されると説明しています。

産前産後休業の期間(労働基準法第65条)
区分期間就業させてはならない条件
産前(単胎)6週間以内に出産する予定の女性女性が休業を請求した場合
産前(多胎)14週間以内に出産する予定の女性女性が休業を請求した場合
産後産後8週間請求の有無にかかわらず(6週間経過後は請求と医師の判断で就業可)

出典:e-Gov法令検索「労働基準法」(昭和22年法律第49号)(確認日:2026年10月8日)、厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A「妊産婦について、労基法にはどのような保護規定がありますか?」(確認日:2026年10月13日)

休業中の賃金と解雇制限:賃金の義務はなく、休業後30日も原則解雇不可

厚生労働省のQ&Aは、産前・産後休業の間の賃金は、労働基準法上は有給にすることが義務付けられておらず、就業規則などで定めるところによると説明しています。

第19条は、産前産後の女性が第65条によって休業する期間とその後30日間は、解雇してはならないと定めています。ただし、打切補償を支払う場合や、天災事変その他やむを得ない事由で事業の継続が不可能となった場合は、この限りではありません。後者の場合は、その事由について行政官庁の認定を受けなければなりません。

解雇一般の予告のルールは、解雇の30日前予告のガイドで確認できます。

出典:e-Gov法令検索「労働基準法」(昭和22年法律第49号)(確認日:2026年10月8日)、厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A「妊産婦について、労基法にはどのような保護規定がありますか?」(確認日:2026年10月13日)

休業中の所得保障:健康保険の出産手当金(協会けんぽの場合)

賃金が無給でもよい休業の間は、健康保険から出産手当金が支給される場合があります。協会けんぽは、出産のため会社を休み、その間に給与の支払いを受けなかった被保険者に支給すると説明しています。

対象になる期間は、出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠は98日)から、出産の翌日以後56日目までの範囲で、会社を休んだ期間です。出産が予定日より遅れた場合は、その遅れた期間も対象です。

休んだ期間に給与の支払いがあっても、その日額が出産手当金の日額より少ないときは、差額が支給されます。出産手当金と傷病手当金は重複して受け取れず、傷病手当金の方が多いときは差額が傷病手当金として支給されます。傷病手当金は、病気やけがで休んだ場合の別の給付です。

協会けんぽの支給額例は、標準報酬月額を16万円(6か月)と18万円(6か月)とした場合、12か月の平均17万円を30で割って5,670円、その3分の2の3,780円を1日あたりの額としています。実際の額は個々の標準報酬月額で変わります。支給開始日以前の期間が12か月に満たないときは、別の計算方法があります。

申請書は「健康保険出産手当金支給申請書」で、提出先は加入する協会けんぽの支部です。退職した場合も、資格喪失日の前日までに被保険者期間が継続して1年以上あり、資格喪失日の前日に出産手当金を受けているか受けられる状態であれば、資格喪失後も受けられると説明されています。退職日に出勤した場合は受けられません。

これは協会けんぽに加入している場合の説明です。健康保険組合など他の保険者や、加入していない場合の扱いは、加入先の保険者に確認してください。受給できるかどうかと額は個別の事情で決まります。

出産手当金の支給範囲(協会けんぽ)
区分支給の対象になる期間
単胎妊娠出産の日以前42日から出産の翌日以後56日目まで(休んだ期間)
多胎妊娠出産の日以前98日から出産の翌日以後56日目まで(休んだ期間)
出産が予定日より遅れた場合遅れた期間も対象

出典:全国健康保険協会(協会けんぽ)「出産手当金」(確認日:2026年10月14日)

休業以外の保護:軽易業務への転換、時間外・深夜業の制限、育児時間

産前産後休業のほかにも、労働基準法は妊産婦(妊娠中の女性と産後1年を経過しない女性)に関する保護規定を置いています。

多くは本人の請求が前提です。使用者は、妊娠中の女性が請求した場合は他の軽易な業務に転換させなければならず(第65条第3項)、妊産婦が請求した場合は時間外労働・休日労働・深夜業をさせてはなりません(第66条)。

妊産婦を一定の危険有害業務に就かせることはできません(第64条の3)。生後1年に満たない子を育てる女性が請求した場合は、1日2回30分以上の育児時間を与える必要があります(第67条)。育児時間の賃金も、労働基準法上は有給にする義務はありません。

妊産婦に関する労働基準法の主な保護規定
内容条請求の要否
軽易な業務への転換(妊娠中)第65条第3項女性の請求
時間外労働・休日労働・深夜業の制限第66条妊産婦の請求
危険有害業務の就業制限第64条の3請求の定めなし(条文にもQ&Aにも請求は要件として書かれていない)
育児時間(1日2回30分以上)第67条女性の請求

出典:e-Gov法令検索「労働基準法」(昭和22年法律第49号)(確認日:2026年10月8日)、厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A「妊産婦について、労基法にはどのような保護規定がありますか?」(確認日:2026年10月13日)

不利益取扱いの禁止:妊娠・出産・休業を理由とする解雇その他

男女雇用機会均等法第9条第3項は、事業主が、女性労働者の妊娠、出産、産前産後休業の請求や取得などを理由に、解雇その他不利益な取扱いをしてはならないと定めています。

同条第1項は、妊娠や出産を退職理由として予定する定めを禁じています。第4項は、妊娠中と出産後1年を経過しない女性への解雇を無効とし、事業主が妊娠等を理由とする解雇でないことを証明したときだけを例外としています。

厚生労働省の「女性にやさしい職場づくりナビ」は、禁止の対象として、妊娠・出産のほか、母性健康管理措置を求めたり受けたりしたこと、産前休業を請求・取得したこと、産後の就業制限や産後休業をしたことなどを挙げています。

  • 産前休業の請求があれば就業させない
  • 産後8週間は請求がなくても就業させない(6週経過後は請求と医師の判断が要件)
  • 休業中と休業後30日間は解雇しない
  • 妊娠・出産・休業を理由とする解雇や不利益な取扱いをしない
  • 賃金の扱いは就業規則などで確認する

出典:e-Gov法令検索「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(昭和47年法律第113号)(確認日:2026年10月13日)、厚生労働省委託「女性にやさしい職場づくりナビ」妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止(確認日:2026年10月13日)、厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A「妊産婦について、労基法にはどのような保護規定がありますか?」(確認日:2026年10月13日)

特定技能外国人の場合と罰則

労働基準法第3条は、国籍を理由に、賃金、労働時間その他の労働条件で差別的な取扱いをしてはならないと定めています。

第65条などは国籍で区別していないため、産前産後休業と妊産婦の保護規定は、日本人と同じく特定技能外国人にも適用される前提で確認します。休業した期間が通算在留期間にどう扱われるかは、通算5年の例外のガイドで整理しています。

第65条を含む第64条の3から第67条までの違反は、第119条により6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です。このガイドは制度の説明です。個別の事案は、労働基準監督署や都道府県労働局に確認してください。

出典:e-Gov法令検索「労働基準法」(昭和22年法律第49号)(確認日:2026年10月8日)

よくある質問

産後休業は、本人が希望しなければ取らなくてよいですか?

厚生労働省のQ&Aによると、産後休業は請求がなくても就業させてはならない期間です。産後6週間を経過した女性が請求し、医師が支障がないと認めた業務に就かせることだけが例外です。

産前産後休業の間の賃金は支払う必要がありますか?

厚生労働省のQ&Aは、労働基準法上は有給にすることが義務付けられておらず、就業規則などで定めるところによると説明しています。

産前産後休業の間に無給の場合、健康保険からの給付はありますか?

協会けんぽは、出産のため会社を休み、その間に給与の支払いを受けなかった被保険者に出産手当金が支給されると説明しています。対象は出産の日以前42日(多胎98日)から出産の翌日以後56日目までの休んだ期間です。他の保険者や個別の受給可否は、加入先に確認してください。

産前産後休業の間に、会社の都合で解雇できますか?

第19条により、休業する期間とその後30日間は解雇できません。例外は、打切補償を支払う場合と、天災事変その他やむを得ない事由で事業の継続が不可能となり、行政官庁の認定を受けた場合です。

妊娠中の人を、軽い仕事に替えなければなりませんか?

妊娠中の女性が請求した場合は、他の軽易な業務に転換させなければなりません(第65条第3項)。

妊娠を理由に契約を打ち切ることはできますか?

男女雇用機会均等法第9条第3項は、妊娠・出産等を理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁じています。同条第4項は、妊娠中と出産後1年以内の解雇を、事業主が理由の違いを証明できない限り無効としています。

参照した公的一次資料

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