この記事の対象:特定技能外国人を雇う企業の人事・労務担当者、受入れ機関の相談窓口の担当者
事業主の義務:均等法第15条と育児・介護休業法第25条
男女雇用機会均等法第15条は、妊娠・出産に関する言動で女性労働者の就業環境が害されないよう、相談に応じ適切に対応するための体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を事業主に義務づけています。
育児・介護休業法第25条にも、育児休業、介護休業その他の子の養育や家族の介護に関する制度の利用に関する言動で、労働者の就業環境が害されないよう同じ種類の措置を講じる義務があります。均等法は女性労働者、育児・介護休業法は労働者が対象です。
どちらの条文も、労働者が相談したことや、事業主の相談対応に協力して事実を述べたことを理由に、解雇その他の不利益な取扱いをしてはならないと定めています。国籍による区別は、条文にありません。
厚生労働省の「職場におけるハラスメントの防止のために」のページでも、妊娠・出産等、育児・介護休業等に関するハラスメント対策は事業主の義務と案内されています。
2つの型:制度等の利用型と状態への嫌がらせ型
厚生労働省の指針は、妊娠、出産等に関するハラスメントを、上司または同僚から行われる2つの型に分けています。業務分担や安全配慮の観点から、客観的にみて業務上の必要性に基づく言動は、ハラスメントに当たらないとされています。このセクションの型と措置は、妊娠、出産等に関する指針の内容です。育児休業等の制度利用については別の指針があり、このページでは扱いません。
制度等の利用への嫌がらせ型は、産前休業、母性健康管理措置、軽易な業務への転換、時間外労働や深夜業の制限、育児時間などの利用に関する言動で就業環境が害されるものです。上司が制度の利用をしないよう言うこと、請求を取り下げるよう言うことなどが典型例として挙げられています。
状態への嫌がらせ型は、妊娠したこと、出産したこと、つわりなど妊娠や出産に起因する症状で働けないことや労働能率が低下したことなどに関する言動で就業環境が害されるものです。指針の典型例はこれらに限られず、限定列挙ではありません。
| 型 | 対象となる事由 | 典型例の方向 |
|---|---|---|
| 制度等の利用への嫌がらせ型 | 産前休業、母性健康管理措置、軽易な業務への転換、時間外労働・深夜業の制限、育児時間など | 解雇などの不利益を示唆する、請求をしないよう言う、取り下げるよう言う、利用したことで嫌がらせをする |
| 状態への嫌がらせ型 | 妊娠したこと、出産したこと、つわりなど妊娠・出産に起因する症状で働けないこと・能率が下がったことなど | 解雇などの不利益を示唆する、妊娠等したことにより嫌がらせ等をする |
講ずべき措置:方針の周知、相談体制、事後対応、要因の解消、プライバシー保護
指針は、事業主が雇用管理上講ずべき措置を、大きく5つにまとめています。
方針の明確化と周知・啓発では、ハラスメントの内容、行ってはならない旨の方針、制度等を利用できる旨を、管理監督者を含む労働者に周知します。行為者に厳正に対処する旨は、就業規則などに規定して周知します。
原因や背景となる要因を解消する措置として、指針は、妊娠した労働者の周囲の労働者の業務の偏りを軽減する業務分担の見直しや、業務の効率化を例に挙げています。妊娠した労働者がつわりなどで働けず、周囲の業務負担が増えることが背景の一つになりうるためです。
5つ目の併せて講ずべき措置では、相談者・行為者のプライバシーを保護し、相談したことなどを理由とする不利益な取扱いを禁止する旨を労働者に周知します。
- ハラスメントを行ってはならない方針と、妊娠・出産・育児休業等の制度を利用できる旨を、就業規則などで周知した
- 行為者に厳正に対処する旨と、その内容を就業規則などに定めた
- 相談窓口を定め、担当者が内容や状況に応じて適切に対応できるようにした
- ハラスメントが生じたとき、事実関係の確認と、被害者・行為者への措置を行う手順を決めた
- 周囲の労働者の業務の偏りを減らす業務分担の見直しを行える体制にした
- 相談者・行為者のプライバシーの保護と、相談を理由に不利益に扱わない旨を周知した
特定技能外国人を雇う場合:国籍にかかわらず同じ義務
均等法と育児・介護休業法の義務は、国籍にかかわらず、事業主が雇用する労働者に当てはまります。
妊娠や出産に関する休業や、育児休業などの制度を利用できる旨を周知する必要があるため、特定技能外国人にも、本人が理解できる形で伝えられているかを確認しておくと、制度の利用を阻害する言動の予防につながります。
このページは条文と公表資料の整理です。個別の言動がハラスメントに当たるか、どの措置をとるかは、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)などに確認してください。当サイトは、個別の法律相談や労務の助言をしません。
妊娠中・産後の解雇制限や休業は産前産後休業と解雇制限のガイドで確認できます。
よくある質問
妊娠・出産に関するハラスメント防止措置は、法律の義務ですか?
はい。男女雇用機会均等法第15条が、事業主に相談体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じることを義務づけています。育児休業などの制度の利用に関しては、育児・介護休業法第25条にも同じ種類の義務があります。
妊婦健診の日程を上司が聞くのはハラスメントですか?
指針は、業務分担や安全配慮の観点から、客観的にみて業務上の必要性に基づく言動はハラスメントに当たらないとしています。個別の言動の判断は、都道府県労働局などに確認してください。
相談した労働者を不利益に扱ってもよいですか?
いいえ。均等法第15条第2項と育児・介護休業法第25条第2項が、相談したことなどを理由とする解雇その他の不利益な取扱いを禁止しています。
外国人の労働者にも同じ義務が当てはまりますか?
はい。確認した条文と指針に、国籍による区別はありません。
参照した公的一次資料
- e-Gov法令検索「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(昭和47年法律第113号)(確認日:2026年10月13日、次回確認:2027年4月13日)
- e-Gov法令検索「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(確認日:2026年10月13日、次回確認:2027年1月13日)
- 厚生労働省「事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(平成28年厚生労働省告示第312号)(確認日:2026年10月19日、次回確認:2027年4月19日)
- 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」(カスタマーハラスメント対策が令和8年10月1日から義務化)(確認日:2026年10月13日、次回確認:2027年4月13日)