この記事の対象:特定技能外国人を雇う企業の人事・労務担当者、相談窓口の担当者

事業主の義務:相談体制の整備などの措置を講じる

労働施策総合推進法第31条第1項は、職場の優越的な関係を背景とした言動で業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されないよう、相談に応じ適切に対応するための体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じることを事業主に義務づけています。

性的な言動については、男女雇用機会均等法第11条第1項が、同じ趣旨の措置義務を事業主に定めています。厚生労働省のページは、セクシュアルハラスメント対策の措置も、方針の周知、相談体制の整備、事後の対応、プライバシーの保護と不利益取扱いの禁止を柱にしています。

第31条は事業主一般に措置を義務づけており、条文上、規模による除外は置かれていません。パワーハラスメント防止措置は、令和4年4月1日から中小企業にも義務化されました。厚生労働省のページは、セクシュアルハラスメント等の措置を、業種・規模に関わらずすべての事業主に義務づけられたものとしています。

措置の具体的な内容は、厚生労働大臣が定める指針(令和2年厚生労働省告示第5号)に書かれています。令和8年10月1日適用の版が公表されています。

出典:e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(第31条・第33条・第34条・第36条)(確認日:2026年10月13日)、e-Gov法令検索「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(昭和47年法律第113号)(確認日:2026年10月13日)、厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号、令和8年10月1日適用)(確認日:2026年10月13日)、厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」(カスタマーハラスメント対策が令和8年10月1日から義務化)(確認日:2026年10月13日)

パワーハラスメントに当たる言動:3つの要素をすべて満たすもの

指針は、職場におけるパワーハラスメントを、優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるもので、3つの要素をすべて満たすものと定めています。

客観的にみて業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は、パワーハラスメントに当たりません。

対象の「労働者」は、正規雇用労働者に限らず、パートタイム労働者や契約社員などを含む、事業主が雇用する労働者のすべてです。職場は、通常働いている場所以外でも、業務を行う場所であれば含まれます。

指針は代表的な言動を6つの類型に分け、それぞれ該当する例と該当しない例を挙げています。限定列挙ではなく、個別の事案の状況で判断が異なることがあるとされています。

指針が挙げる6つの類型(令和2年厚生労働省告示第5号)
類型該当すると考えられる例(指針から)
身体的な攻撃殴打、足蹴りを行うこと
精神的な攻撃人格を否定する言動、必要以上に長時間にわたる厳しい叱責の繰り返し
人間関係からの切り離し一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させること
過大な要求業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせること
過小な要求嫌がらせのために仕事を与えないこと
個の侵害性的指向や病歴などの機微な個人情報を、本人の了解を得ずに他の労働者に暴露すること

出典:厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号、令和8年10月1日適用)(確認日:2026年10月13日)

講じる措置:方針の周知、相談窓口、事後対応、プライバシー保護

指針は、事業主が講じなければならない措置として、方針の明確化と周知・啓発、相談に応じる体制の整備、相談後の迅速かつ適切な対応、あわせて講ずべき措置(プライバシーの保護と不利益取扱いの禁止の周知)の4つを示しています。

方針の周知では、パワーハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確にして、管理監督者を含む労働者に周知・啓発します。指針の例は、就業規則などへの規定、社内報やパンフレットへの記載、研修・講習の実施です。あわせて、行為者に厳正に対処する旨の方針と対処の内容は、就業規則その他の服務規律を定めた文書に規定して周知・啓発します。

相談体制では、相談窓口をあらかじめ定めて労働者に周知します。指針は、担当者を定める、制度を設ける、外部の機関に委託する、のいずれもが窓口を定めている例だとしています。パワーハラスメントに該当するか微妙な場合でも広く相談に対応することが求められます。

相談があったときは、事実関係を迅速かつ正確に確認し、確認できた場合は被害者と行為者のそれぞれに適正に対処し、再発防止の措置を講じます。事実が確認できなかった場合も、方針の再周知などの再発防止の措置を講じることとされています。

あわせて、相談者や行為者のプライバシーを保護する措置を講じて労働者に周知し、相談したことや事実関係の確認に協力したことを理由に不利益な取扱いをしない旨を定めて周知します。法第31条第2項も、相談したことなどを理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁じています。

講じる措置と指針が挙げる例
措置指針が挙げる例
方針の明確化と周知・啓発就業規則への規定、社内報やパンフレットへの記載、研修・講習の実施
相談体制の整備担当者をあらかじめ定める、相談の制度を設ける、外部機関に委託する
事後の迅速かつ適切な対応相談者と行為者の双方から事実確認、配置転換や謝罪などの被害者への配慮、行為者への懲戒など
プライバシー保護と不利益取扱いの禁止対応のマニュアル化、担当者への研修、不利益な取扱いをしない旨の周知
  • パワーハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確にして周知している
  • 行為者に厳正に対処する旨の方針と対処の内容を、就業規則などに規定している
  • 相談窓口を定め、労働者に周知している
  • 相談窓口の担当者が、対応の手順とプライバシーの扱いを理解している
  • 相談したことを理由とする不利益な取扱いをしない旨を周知している

出典:厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号、令和8年10月1日適用)(確認日:2026年10月13日)、厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」(カスタマーハラスメント対策が令和8年10月1日から義務化)(確認日:2026年10月13日)、e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(第31条・第33条・第34条・第36条)(確認日:2026年10月13日)

特定技能所属機関への依頼と、措置を講じないときの扱い

厚生労働省のハラスメント防止のページは、特定技能所属機関等においても適切な対応をお願いするとして、関係する文書を掲載しています。パワーハラスメントの欄には、特定技能所属機関と登録支援機関あての「改正労働施策総合推進法等の施行によるハラスメント防止対策の強化について」が載っています。

令和8年5月14日付の厚生労働省と出入国在留管理庁の文書は、これとは別に、カスタマーハラスメントと求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止対策を扱い、対象に特定技能外国人を含むすべての労働者が含まれるとしています。パワーハラスメント等は、令和2年2月14日付の文書で依頼したと同文書に書かれています。

労働施策総合推進法第42条は、厚生労働大臣が事業主に助言、指導または勧告をすることができるとし、第31条第1項・第2項などに違反している事業主が勧告に従わないときは、その旨を公表できると定めています。

労働者と事業主の間で紛争が起きたときは、都道府県労働局による援助や調停の仕組みがあります(法第36条・第37条)。個別の事案の判断は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)などに確認してください。

出典:e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(第31条・第33条・第34条・第36条)(確認日:2026年10月13日)、厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」(カスタマーハラスメント対策が令和8年10月1日から義務化)(確認日:2026年10月13日)、厚生労働省・出入国在留管理庁「【特定技能所属機関/登録支援機関各位】カスタマーハラスメント及び求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止対策の強化について」(令和8年5月14日)(確認日:2026年10月13日)

よくある質問

パワーハラスメントの防止措置は、小さな会社にも義務ですか?

労働施策総合推進法第31条は、措置を講じる義務を事業主に課しており、規模による除外を置いていません。パワーハラスメント防止措置は、令和4年4月1日から中小企業にも義務化されました。

業務上の厳しい指導は、すべてパワーハラスメントになりますか?

なりません。指針は、客観的にみて業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は、パワーハラスメントに該当しないとしています。

相談窓口は外部の機関に委託できますか?

指針は、外部の機関に相談への対応を委託することを、相談窓口をあらかじめ定めていると認められる例の一つに挙げています。

相談した労働者に不利益な取扱いをしてもよいですか?

できません。労働施策総合推進法第31条第2項は、相談したことなどを理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁じています。

措置を講じない場合はどうなりますか?

厚生労働大臣は助言、指導または勧告をすることができ、勧告に従わないときは公表されることがあります(法第42条)。

参照した公的一次資料

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