この記事の対象:特定技能外国人を雇う企業の人事・労務・現場管理の担当者
令和8年10月1日から、防止措置は事業主の義務になった
改正法の施行により、令和8年10月1日から、カスタマーハラスメントの防止措置を講じることが事業主の義務になりました。
厚生労働省は、令和7年法律第63号による改正で、カスタマーハラスメント対策が事業主の義務となり、令和8年10月1日に施行されると案内しています。措置義務の条文は、労働施策総合推進法の第33条です。同じ日に、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策も義務になりました。
令和8年5月14日付で、厚生労働省と出入国在留管理庁は、特定技能所属機関と登録支援機関あてに、この改正への対応を依頼する文書を出しています。文書は、カスタマーハラスメントの対象に、特定技能外国人を含む全ての労働者が含まれると書いています。
出典:e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(第31条・第33条・第34条・第36条)(確認日:2026年10月13日)、厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」(カスタマーハラスメント対策が令和8年10月1日から義務化)(確認日:2026年10月13日)、厚生労働省・出入国在留管理庁「【特定技能所属機関/登録支援機関各位】カスタマーハラスメント及び求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止対策の強化について」(令和8年5月14日)(確認日:2026年10月13日)
カスタマーハラスメントに当たる3つの要素
厚生労働省の指針は、次の3つの要素を全て満たすものを、職場におけるカスタマーハラスメントとしています。
苦情の全てが該当するわけではありません。指針は、客観的にみて社会通念上許容される範囲で行われた申入れは正当な申入れであり、カスタマーハラスメントには当たらないとしています。
障害のある人が、障害を理由とする不当な差別的取扱いをしないよう求めることや、社会的障壁の除去が必要だと伝えること自体も、カスタマーハラスメントには当たらないと、指針は書いています。電話やSNSなどインターネット上で行われる言動も対象です。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| ①顧客等の言動 | 職場において行われる、顧客や取引の相手方、施設の利用者などの言動 |
| ②社会通念上許容される範囲を超えている | 言動の内容が契約内容からして相当性を欠く、または手段や態様が相当でない |
| ③就業環境が害される | 労働者が身体的または精神的に苦痛を与えられ、就業する上で看過できない程度の支障が生じる |
出典:厚生労働省「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第51号)(確認日:2026年10月13日)
顧客等とは誰か:取引先の担当者も施設の近隣住民も含む
指針の「顧客等」は、商品やサービスを買う人に限られず、事業に関係を持つ人が広く入ります。
指針は、今後利用する可能性のある人も含めるとしたうえで、商品の購入やサービスの利用をする人、事業の内容を問い合わせる人、取引先の担当者、契約交渉の担当者、施設やサービスの利用者とその家族、施設の近隣住民を挙げています。
職場は、労働者が通常働く場所に限りません。取引先の事務所や、打合せをする飲食店、顧客の自宅でも、労働者が業務を行う場所であれば職場に含まれます。
労働者には、パートタイム労働者や契約社員も入ります。派遣労働者については、派遣先も同じ措置を講じる必要があると、指針は書いています。
出典:厚生労働省「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第51号)(確認日:2026年10月13日)
許容範囲を超える言動の典型例:内容と手段・態様
指針は、許容範囲を超える言動の典型例を、言動の内容と、手段や態様に分けて挙げています。
どちらか一方だけが許容範囲を超える場合でも、該当することがあります。指針は、例が限定列挙ではないこと、個別の事案の状況で判断が異なり得ることに注意するよう書いています。
判断では、言動の目的、経緯、業種や業務の内容、言動の頻度や継続性、労働者の属性や心身の状況などを総合的に考慮します。事業主や労働者の側の不適切な対応が原因や背景になっている場合がある点にも、指針は触れています。
| 分類 | 典型例 |
|---|---|
| 言動の内容 | 理由のない要求、契約内容を著しく超えるサービスの要求、契約金額の著しい減額の要求、商品やサービスと無関係な不当な損害賠償要求 |
| 身体的な攻撃 | 殴る、蹴る、物を投げつける、つばを吐きかける |
| 精神的な攻撃 | 脅迫、暴言、人格を否定する言動、土下座の強要、店舗の物を壊すことやSNSへ悪評を投稿することをほのめかして脅す発言、SNSへの労働者のプライバシー情報の投稿、盗撮や無断の撮影 |
| 威圧的な言動 | 大きな声で労働者や周囲を威圧する |
| 継続的、執拗な言動 | 同じ質問や同じメールの繰り返し、揚げ足取り、執拗な責め立て |
| 拘束的な言動 | 長時間の居座りや、電話での長時間の拘束 |
出典:厚生労働省「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第51号)(確認日:2026年10月13日)
事業主が講じる措置:方針、相談体制、事後対応、抑止、プライバシー
事業主は、指針の4が定める次の措置を講じなければなりません。
法第33条第1項は、措置として、相談に応じ適切に対応するための体制の整備と、対応の実効性を確保するための抑止のための措置を挙げています。指針は、相談窓口を他のハラスメントの窓口と一体で置くことも考えられるとしています。
対処の方針の例として、指針は、犯罪に該当し得る言動の警察への通報、警告文の発出、法令の制限内での商品の販売やサービスの提供の停止、店舗や施設への出入りの禁止などを挙げています。業法でサービス提供の義務が定められている場合などは、業種ごとに必要な対応が異なると、指針は注意しています。
事業主は、労働者が相談したことや、相談への対応に協力して事実を述べたことを理由に、解雇その他の不利益な取扱いをしてはなりません(法第33条第2項)。この旨を定めて周知することも、指針が求める措置です。
| 措置 | 内容 |
|---|---|
| ⑴方針の明確化と周知・啓発 | 毅然とした態度で対応し労働者を保護する方針と、あらかじめ定めた対処の内容を、管理監督者を含む労働者に周知する |
| ⑵相談体制の整備 | 相談窓口をあらかじめ定めて周知し、担当者が内容や状況に応じて適切に対応できるようにする。発生のおそれがある場合や、該当するか微妙な場合も広く受け付ける |
| ⑶事後の迅速かつ適切な対応 | 事実関係を迅速かつ正確に確認し、被害を受けた労働者への配慮や、再発防止の措置を講じる |
| ⑷抑止のための措置 | 特に悪質なものへの対処の方針をあらかじめ定めて周知し、その対処を行える体制を整える |
| ⑸併せて講ずる措置 | 相談者等のプライバシーを保護し、相談したことを理由に不利益な取扱いをされない旨を定めて周知する |
- カスタマーハラスメントに毅然と対応し、労働者を守る方針を文書にして、外国人を含む全ての労働者に伝える
- 相談窓口と担当者を決め、窓口の連絡先を労働者に知らせる
- 相談を受けたときの事実確認の手順と、プライバシーの守り方をマニュアルにする
- 悪質な言動への対処の方針(警告、警察への通報など)を決め、現場の管理者に共有する
- 相談を理由に不利益な取扱いをしない旨を、就業規則などに書いて周知する
出典:e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(第31条・第33条・第34条・第36条)(確認日:2026年10月13日)、厚生労働省「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第51号)(確認日:2026年10月13日)
迷ったときの相談先と、このガイドの範囲
個別の言動が措置の対象になるかどうかは、事案の状況で判断が分かれるため、このガイドでは断定しません。
法第36条は、紛争の当事者が解決の援助を求めた場合に、都道府県労働局長が必要な助言、指導または勧告をすることができると定めています。措置の具体的な進め方は、厚生労働省の指針とリーフレット、所轄の都道府県労働局で確認してください。
このガイドは、事業主の措置義務の概要を整理したものです。労務管理の個別の助言はしません。指針は、相談窓口を他のハラスメントの相談窓口と一体的に設置することも考えられるとしています。
出典:e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(第31条・第33条・第34条・第36条)(確認日:2026年10月13日)、厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」(カスタマーハラスメント対策が令和8年10月1日から義務化)(確認日:2026年10月13日)
よくある質問
カスタマーハラスメント対策は、いつから義務ですか?
令和8年10月1日からです。厚生労働省が、令和7年法律第63号による改正で、事業主の義務となり同日に施行されると案内しています。
特定技能外国人もカスタマーハラスメント対策の対象ですか?
対象です。厚生労働省と出入国在留管理庁の令和8年5月14日付の文書は、特定技能外国人を含む全ての労働者が含まれると書いています。
お客様の苦情は全てカスタマーハラスメントになりますか?
なりません。指針は、客観的にみて社会通念上許容される範囲で行われた申入れは、正当な申入れでカスタマーハラスメントには当たらないとしています。
取引先の担当者の言動も対象になりますか?
対象になり得ます。指針は、顧客等に取引先の担当者や契約交渉の担当者を含めています。
相談した労働者に不利益な取扱いをしてよいですか?
してはなりません。法第33条第2項は、相談したことなどを理由とした解雇その他の不利益な取扱いを禁じています。
参照した公的一次資料
- e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(第31条・第33条・第34条・第36条)(確認日:2026年10月13日、次回確認:2027年4月13日)
- 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」(カスタマーハラスメント対策が令和8年10月1日から義務化)(確認日:2026年10月13日、次回確認:2027年4月13日)
- 厚生労働省「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第51号)(確認日:2026年10月13日、次回確認:2027年4月13日)
- 厚生労働省・出入国在留管理庁「【特定技能所属機関/登録支援機関各位】カスタマーハラスメント及び求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止対策の強化について」(令和8年5月14日)(確認日:2026年10月13日、次回確認:2027年4月13日)
次に確認すること
この記事の条件を引き継いで、未確認費目を整理する(金額は概算で、見積の代わりではありません)