この記事の対象:特定技能外国人の受入れ時の安全衛生教育を準備する企業の人事・現場責任者、登録支援機関
雇入れ時と作業内容の変更時に、教育が義務になる
労働安全衛生法第59条第1項は、事業者が労働者を雇い入れたときに、その従事する業務に関する安全または衛生のための教育を行わなければならないと定めています。
第2項は、労働者の作業内容を変更したときにも同じ教育を求めています。特定技能外国人を受け入れた直後だけでなく、配置を変えたときも対象です。
労働安全衛生規則第35条は、この教育を「遅滞なく」行うよう定めています。日数の定めはなく、雇入れから間を空けずに行うことが求められます。
第59条第1項の違反は、同法第120条により50万円以下の罰金の対象になります。第2項で準用する場合も含まれます。
出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」(確認日:2026年10月3日)、e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」(確認日:2026年10月3日)
教育する8項目と、省略できる場合
規則第35条第1項は、次の8項目のうち、その労働者が従事する業務に関する安全または衛生のために必要な事項を教育するよう定めています。
8項目すべてを一律に行うのではなく、従事する業務に必要な事項を選びます。第8号は、前の7号以外でも業務の安全衛生に必要な事項を含める規定です。
第2項は、8項目の全部または一部について十分な知識と技能があると認められる労働者には、その事項の教育を省略できるとしています。
| 号 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 機械等、原材料等の危険性または有害性と、その取扱い方法 |
| 2 | 安全装置、有害物抑制装置、保護具の性能と、その取扱い方法 |
| 3 | 作業手順 |
| 4 | 作業開始時の点検 |
| 5 | その業務で起こるおそれのある疾病の原因と予防 |
| 6 | 整理、整頓、清潔の保持 |
| 7 | 事故時等の応急措置と退避 |
| 8 | そのほか、業務の安全または衛生に必要な事項 |
出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」(確認日:2026年10月3日)
外国人には、内容を確実に理解できる方法で行う
厚生労働省の通達(基発0328第28号、平成31年3月28日)は、外国人労働者への安全衛生教育を、母国語等や視聴覚教材を用いるなど、本人がその内容を確実に理解できる方法で行うよう求めています。
通達は、外国人労働者が日本語や日本の労働慣行に習熟していないことが多い点を理由に挙げています。特に、使わせる機械等や原材料等の危険性・有害性と、その取扱方法が確実に理解されるよう留意するとしています。
職場の標識、掲示、表示は、図解を使う、母国語で注意喚起語を表示するなど、外国人労働者が理解できるものにするとしています。
具体的な進め方として、通達は、外国人を従事させる業務のリスクアセスメントで日本語の作業標準が理解しにくいことを踏まえること、翻訳された教材や視聴覚教材を準備すること、日本語の理解度を把握して合図や標識も教えることを挙げています。同じ言語を話せる日本語の上手な労働者(同じ国・地域出身の上司や先輩など)に通訳や補助役を頼むことが望ましいとし、理解度を確認しながら繰り返し教育することも望ましいとしています。
ただし、教育の義務そのものを定めているのは第59条と規則第35条です。通達の求める方法を採らなかった場合の罰則は、今回確認した資料には書かれていません。
- 教育の内容を、従事する業務に合わせて8項目から選んだか
- 本人の母国語や視聴覚教材など、理解できる方法を用意したか
- 教育の後に、本人が内容を理解できたかを確認する方法を決めたか
- 職場の標識や掲示を、図解や母国語の表示にしたか
出典:厚生労働省 基発0328第28号「外国人労働者に対する安全衛生教育の推進等について」(平成31年3月28日)(確認日:2026年10月13日)
厚生労働省が公開している教材と、労働災害の状況
厚生労働省の「外国人労働者の安全衛生管理」のページに、外国人向けの教材が載っています。
「マンガでわかる働く人の安全と健康」は、日本語、英語、中国語、ベトナム語、タガログ語、クメール語、インドネシア語、タイ語、ミャンマー語、ネパール語、モンゴル語の11言語に対応し、8業種と業種共通の教材があると、同ページに書かれています。中小規模の事業場向けには、雇入れ時や作業内容変更時の教育に役立つ「未熟練労働者に対する安全衛生教育マニュアル」(英語、中国語、スペイン語、ポルトガル語)も案内されています。
教材の言語は、受け入れる人の母国語と一致するか、事前に確かめてください。ページは更新されることがあります。
厚生労働省が2025年5月30日に公表した令和6年の労働災害発生状況では、外国人労働者の死傷年千人率(1年間に労働者1,000人あたりに発生した労働災害の件数)は2.71で、前年から0.06ポイント、2.2%減でした。
出典:厚生労働省「外国人労働者の安全衛生管理」(多言語の安全衛生教育教材の案内)(確認日:2026年10月13日)、厚生労働省報道発表「令和6年の労働災害発生状況を公表」(令和7年5月30日)(確認日:2026年10月13日)
特定技能の受入れで確認すること
雇入れ時の安全衛生教育は、労働安全衛生法で事業者に課される義務です。特定技能の受入れでは、登録支援機関に委託する支援の内容とは分けて考える必要があります。
今回確認した条文と通達には、特定技能外国人だけに別の教育義務を定めた記述はありません。日本人の労働者と同じ義務が、外国人にも適用されます。
第59条が教育を義務づけている相手は事業者です。通達は、同じ言語を話せる日本語の上手な労働者に通訳や補助役を頼むことが望ましいとしています。
このガイドは制度の説明です。個別の職場でどの項目をどう教育すれば法に合うかは、労働基準監督署や社会保険労務士などに確認してください。
出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」(確認日:2026年10月3日)、厚生労働省 基発0328第28号「外国人労働者に対する安全衛生教育の推進等について」(平成31年3月28日)(確認日:2026年10月13日)
よくある質問
雇入れ時の安全衛生教育は、いつまでに行いますか?
労働安全衛生規則第35条は「遅滞なく」行うと定めています。日数の定めはなく、雇入れから間を空けずに行うことが求められます。
外国人に教育するとき、母国語で行う必要がありますか?
厚生労働省の通達は、母国語等や視聴覚教材を用いるなど、本人が内容を確実に理解できる方法で行うよう求めています。母国語に限るとは書かれていませんが、理解できる方法であることが求められます。
安全衛生教育をしなかった場合の罰則はありますか?
第59条第1項の違反は、労働安全衛生法第120条により50万円以下の罰金の対象です。作業内容を変更したときの教育も同じです。
経験のある外国人でも、教育は必要ですか?
規則第35条第2項は、十分な知識と技能があると認められる労働者には、その事項の教育を省略できるとしています。省略できるのはその事項だけで、判断は事業者が行います。
参照した公的一次資料
- e-Gov法令検索「労働安全衛生法」(確認日:2026年10月3日、次回確認:2026年12月3日)
- e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」(確認日:2026年10月3日、次回確認:2026年12月3日)
- 厚生労働省 基発0328第28号「外国人労働者に対する安全衛生教育の推進等について」(平成31年3月28日)(確認日:2026年10月13日、次回確認:2027年4月13日)
- 厚生労働省「外国人労働者の安全衛生管理」(多言語の安全衛生教育教材の案内)(確認日:2026年10月13日、次回確認:2027年4月13日)
- 厚生労働省報道発表「令和6年の労働災害発生状況を公表」(令和7年5月30日)(確認日:2026年10月13日、次回確認:2027年4月13日)
次に確認すること
この記事の条件を引き継いで、未確認費目を整理する(金額は概算で、見積の代わりではありません)