この記事の対象:製造・食品加工・ビルクリーニングなどで化学物質を扱う現場に特定技能外国人を配置する企業の人事・安全衛生担当者、登録支援機関の担当者
ラベル・SDS・調査・周知の4つは、義務を負う人が違う
化学物質に関する労働安全衛生法の規定は、物を譲渡・提供する側と、使う事業者側で、義務を負う人が分かれています。
第57条は、爆発性や引火性などの危険のある物や、健康障害のおそれのある物で政令で定めるものを容器に入れて譲渡・提供する者に、名称、人体に及ぼす作用、取扱い上の注意などの表示を求めています。第57条の2は、同じく譲渡・提供する者に、名称、成分とその含有量、応急の措置などを記載した文書(一般にSDSと呼ばれます)の交付などによる通知を求めています。
使う側の事業者には、第57条の3が、これらの物による危険性や有害性等を調べること(リスクアセスメント)を義務づけています。調べた結果に基づく措置は、法の第57条の3第2項では、講ずるよう努める義務とされています。リスクアセスメント対象物については、労働安全衛生規則第577条の2が、ばく露を最小限度にする措置を別に義務づけています。
第101条第4項は、通知された事項を、その物を取り扱う各作業場の見やすい場所に常時掲示するか備え付けることなどによって、取り扱う労働者に周知させることを事業者に求めています。特定技能外国人にも、日本人と同じ規定が適用されます。
| 条文 | 義務を負う人 | 内容 |
|---|---|---|
| 第57条 | 容器に入れて譲渡・提供する者 | 名称、人体に及ぼす作用、取扱い上の注意などを容器・包装に表示する |
| 第57条の2 | 通知対象物を譲渡・提供する者 | 名称、成分とその含有量、応急の措置などを文書の交付などで通知する |
| 第57条の3 | 使う側の事業者 | 危険性や有害性等を調査する。結果に基づく措置は、法では講ずるよう努める(対象物は規則第577条の2で別に義務) |
| 第101条第4項 | 使う側の事業者 | 通知された事項を作業場に掲示・備え付けるなどして、取り扱う労働者に周知させる |
化学物質管理者と保護具着用管理責任者の選任(14日以内)
労働安全衛生規則第12条の5は、リスクアセスメントの対象になる物を製造し、または取り扱う事業場ごとに、化学物質管理者を選任することを事業者に求めています。
対象になる物は、同条が「リスクアセスメント対象物」と呼ぶ、施行令第18条各号に掲げる物と、第57条の2第1項の通知対象物です。主として一般消費者の生活の用に供される製品に係る調査は、除かれています。
選任は、選任すべき事由が発生した日から14日以内に行います。厚生労働省の資料では、令和6年4月1日から業種・規模にかかわらず対象で、リスクアセスメント対象物を製造する事業場では、専門的講習の修了者から選ぶ必要があります。製造しない事業場では、講習の修了は要件ではなく、修了することが勧められています。
化学物質管理者を選任した事業者が、リスクアセスメントの結果に基づく措置として労働者に保護具を使用させるときは、第12条の6により、保護具着用管理責任者も選任します。これも14日以内で、保護具に関する知識と経験を有すると認められる者から選びます。
どちらも、選任したときは、権限を与えること、氏名を事業場の見やすい箇所に掲示するなどして関係労働者に周知することが求められています(化学物質管理者は第12条の5第4項・第5項、保護具着用管理責任者は第12条の6第3項・第4項)。
| 号 | 管理する事項 |
|---|---|
| 第1号 | ラベル表示、文書、通知(法第57条、第57条の2)に関すること |
| 第2号 | リスクアセスメントの実施に関すること |
| 第3号 | リスクアセスメントの結果に基づく措置の内容と実施に関すること |
| 第4号 | 対象物を原因とする労働災害が発生した場合の対応に関すること |
| 第5号 | リスクアセスメントの結果の記録の作成・保存と周知に関すること |
| 第6号 | 第577条の2第11項の規定による記録の作成・保存と周知に関すること |
| 第7号 | 第1号から第4号の管理を行うための、労働者への必要な教育に関すること |
調査のあとは、ばく露を最小限度にする措置と記録が必要
リスクアセスメント対象物を製造し、または取り扱う事業場では、労働安全衛生規則第577条の2が、調査の結果に基づいて労働者のばく露を最小限度にすることを事業者に義務づけています。
第577条の2第1項が例に挙げる措置は、代替物の使用、発散源を密閉する設備、局所排気装置または全体換気装置の設置と稼働、作業の方法の改善、有効な呼吸用保護具を使用させることです。どれを選ぶかは、調査の結果等に基づいて決めます。
調査を行ったときは、対象物の名称、業務の内容、調査の結果、講ずる措置の内容を記録し、原則として次の調査を行うまでの期間(3年以内に再び調査した場合は3年間)保存して、その業務に従事する労働者に周知させなければなりません(規則第34条の2の8)。周知の方法は、作業場への掲示や備え付け、書面の交付などです。
措置の状況などについては、第577条の2第10項と第11項が、関係労働者の意見を聴く機会を設けることと、1年を超えない期間ごとに1回の記録の作成を求めています。個別の物質ごとの要否は、使う物のSDSと条文を照らして確認してください。
外国人労働者に配属する前に確認すること
条文は、掲示や周知の言語を定めていません。配属前の確認は、本人が内容を理解できる状態になっているかを軸に進めます。
第59条第1項は、労働者を雇い入れたときに、その従事する業務に関する安全または衛生のための教育を行うことを事業者に求めています。違反は第120条の罰則(50万円以下の罰金)の対象に挙がっています。化学物質を扱う業務では、この教育の中で、ラベルの表示とSDSの読み方を扱うことが考えられます。
使う物のラベルやSDSが日本語だけの場合に、どの言語で周知すれば足りるかは、条文からは読み取れません。個別の判断は、所轄の労働基準監督署に確認してください。当サイトは個別の事案の判定や安全衛生の個別助言をしません。
雇入れ時の教育の全体像は、雇入れ時の安全衛生教育のガイドで確認できます。
- 配属先で使う化学物質が、リスクアセスメント対象物に当たるか確認したか
- ラベルと、SDSなどの通知事項を、作業場に掲示または備え付けたか
- リスクアセスメントを実施し、結果に基づく措置を検討したか
- 化学物質管理者を14日以内に選任し、氏名を掲示したか
- 保護具を使わせる場合に、保護具着用管理責任者を選任したか
- 雇入れ時の教育で、ラベルとSDSの読み方を本人が理解できる形で伝えたか
よくある質問
SDSとラベルは、受入れ企業が作る必要がありますか?
ラベルの表示(第57条)と文書の交付などによる通知(第57条の2)は、物を譲渡・提供する者の義務です。使う側の受入れ企業には、調査(第57条の3)と周知(第101条第4項)の義務があります。調査の結果に基づく措置は、法の第57条の3第2項では努力義務ですが、リスクアセスメント対象物のばく露を最小限度にする措置は、規則第577条の2が義務としています。
化学物質管理者は、資格がないと選べませんか?
リスクアセスメント対象物を製造する事業場では専門的講習の修了者から選任する必要があります。製造しない事業場では、規則第12条の5に講習修了の要件はなく、厚生労働省の資料では修了が勧められています。
特定技能外国人だけ別の義務がありますか?
条文に国籍による区別はなく、日本人と同じ規定が適用されます。周知の言語の定めも条文にはないため、個別の判断は労働基準監督署に確認してください。
保護具着用管理責任者は、いつ必要ですか?
化学物質管理者を選任した事業者が、リスクアセスメントの結果に基づく措置として労働者に保護具を使用させるときです(規則第12条の6)。
参照した公的一次資料
- e-Gov法令検索「労働安全衛生法」第57条(表示等)・第57条の2(文書の交付等)・第57条の3(危険性又は有害性等の調査等)・第101条(法令等の周知)・第120条(確認日:2026年10月18日、次回確認:2027年2月11日)
- e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」第12条の5(化学物質管理者の選任等)・第12条の6(保護具着用管理責任者の選任等)・第34条の2の8(リスクアセスメントの結果等の記録)・第577条の2(ばく露の程度の低減等)(確認日:2026年10月18日、次回確認:2027年2月12日)
- 京都労働局「令和6年4月1日から 新たな化学物質規制が全面施行されます」(確認日:2026年10月18日、次回確認:2027年1月18日)
- e-Gov法令検索「労働安全衛生法」第59条(安全衛生教育)(確認日:2026年10月13日、次回確認:2027年1月13日)