この記事の対象:製造業や建設業などの現場に特定技能外国人を配置する企業の安全衛生担当者・現場責任者

危険性又は有害性等の調査は、労働安全衛生法第28条の2が定める、事業者の自主的な安全衛生活動の仕組みです。

第28条の2第1項は、事業者が、建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じんなどによる危険性や有害性、作業行動その他の業務に起因する危険性や有害性を調べ、その結果に基づいて必要な措置を講ずるよう努めなければならないと定めています。条文の言い方は努力義務です。

ただし書により、化学物質などに係る調査以外の調査は、製造業その他厚生労働省令で定める業種の事業者が対象です。労働安全衛生規則第24条の11第2項は、その業種を、労働安全衛生法施行令第2条第1号に掲げる業種(林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業)と、同条第2号に掲げる業種(製造業を除く)としています。

第2号には、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゆう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゆう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業、機械修理業が並びます。

第57条の3は、表示や文書交付の対象になる化学物質(第57条第1項の政令で定める物と通知対象物)による危険性又は有害性等の調査を、事業者が行わなければならないものとしています。第28条の2の調査は、これらの物を除いた部分を扱います。化学物質の調査は、別のガイドで整理しています。

化学物質のラベル・SDS・化学物質管理者は、化学物質の管理:リスクアセスメントと化学物質管理者の選任で確認できます。

調査の根拠条文と性格
対象根拠性格
表示・文書交付の対象物を除く危険性又は有害性(機械、作業方法など)法第28条の2、規則第24条の11努力義務。製造業など、省令で定める業種の事業者が対象
表示・文書交付の対象になる化学物質法第57条の3調査は義務。調査結果に基づく措置は努力義務

実施時期:設備・作業方法を変えるときなど5つの場面

調査は、一度やれば終わりではなく、現場の状況が変わる場面ごとに行います。

規則第24条の11第1項は、調査を行う時期として、建設物の設置・移転・変更・解体、設備や原材料等の新規採用・変更、作業方法や作業手順の新規採用・変更、そのほか危険性又は有害性等に変化が生じ、または生ずるおそれがあるときを挙げています。

厚生労働省の指針は、これに加えて、労働災害が発生した場合で過去の調査の内容に問題があるとき、前回の調査から一定の期間が経ち、機械設備の経年劣化や労働者の入れ替わりに伴う知識経験の変化、新たな安全衛生の知見の集積があったときも、時期として挙げています。

設備の導入や作業方法の変更にあたっては、作業を開始する前にリスク低減措置を実施する必要があると、指針は述べています。新しい作業に新しく配属する人を就かせる前の確認として、この時期の考え方が役立ちます。

調査を行う時期(規則第24条の11第1項と指針)
場面根拠
建設物を設置し、移転し、変更し、または解体するとき規則第24条の11第1項第1号
設備、原材料等を新規に採用し、または変更するとき規則第24条の11第1項第2号
作業方法または作業手順を新規に採用し、または変更するとき規則第24条の11第1項第3号
危険性又は有害性等に変化が生じ、または生ずるおそれがあるとき規則第24条の11第1項第4号
労働災害が発生し過去の調査に問題がある場合、前回から一定期間が経過した場合指針の5(1)オ

手順:特定・見積り・措置の検討・実施の4段階

指針は、調査とその結果に基づく措置を、4つの事項を順に実施するものとして示しています。

4つの事項は、労働者の就業に係る危険性又は有害性の特定、負傷や疾病の重篤度と発生の可能性の度合(リスク)の見積り、見積りに基づくリスク低減の優先度の設定と措置内容の検討、優先度に対応したリスク低減措置の実施です。

体制について、指針は、総括安全衛生管理者など事業の実施を統括管理する者に調査等の実施を統括管理させること、安全管理者や衛生管理者に実施を管理させること、安全衛生委員会等の活用などで労働者を参画させることを挙げています。作業内容を詳しく把握している職長等に、特定・見積り・措置の検討を行わせるよう努めることも求めています。

調査等を実施するために必要な教育も、事業者が実施するものとされています。

情報の入手では、作業標準や作業手順書、仕様書や化学物質等安全データシート、機械設備のレイアウト、作業環境測定結果、災害事例などを活用します。定常作業だけでなく非定常作業の資料も含めます。

  1. 危険性又は有害性の特定

    作業標準等に基づいて作業を洗い出し、あらかじめ定めた分類に沿って各作業の危険性又は有害性を特定します。

  2. リスクの見積り

    負傷や疾病の重篤度と、発生する可能性の度合を考慮して、リスクを見積もります。

  3. 優先度の設定と措置内容の検討

    見積りに基づき、リスクを低減する優先度を決め、措置の内容を検討します。

  4. リスク低減措置の実施

    優先度に対応して措置を実施します。実施した内容は記録します。

見積りと低減措置:最悪を想定し、除去・工学・管理・保護具の順で検討する

リスクの見積り方と、リスク低減措置を検討する順番は、指針に決まりがあります。

見積りの方法として、指針は、重篤度と可能性の度合を縦軸と横軸にした表を使う方法、両者を数値化して加算や乗算で求める方法、段階的に分岐していく方法を例示しています。

見積りにあたっては、過去に実際に発生した負傷や疾病の重篤度ではなく、最悪の状況を想定した最も重篤な負傷や疾病の重篤度を見積もります。重篤度は、基本的に休業日数などを尺度として共通に使うことが望ましいとされています。

措置の検討では、法令に定められた事項は必ず実施したうえで、4つの優先順位で検討します。リスク低減に要する負担が効果と比べて大幅に大きく、著しく不均衡で、措置を求めることが著しく合理性を欠くと考えられるときを除き、可能な限り高い優先順位の措置を実施します。死亡や後遺障害、重篤な疾病をもたらすおそれのあるリスクで、適切な措置に時間がかかるときは、暫定的な措置を直ちに講じます。

リスク低減措置の優先順位(指針の10(1))
順位措置の種類内容
1危険な作業の廃止・変更等設計や計画の段階から危険性又は有害性を除去または低減する
2工学的対策インターロック、局所排気装置等の設置
3管理的対策マニュアルの整備等
4個人用保護具の使用保護具を使わせる

記録:洗い出した作業からリスク低減措置の内容まで5項目

指針は、調査等の結果として記録する事項を5つ挙げています。

記録する事項は、洗い出した作業、特定した危険性又は有害性、見積もったリスク、設定したリスク低減措置の優先度、実施したリスク低減措置の内容です。

この指針は、労働安全衛生法第28条の2第2項に基づいて公表されたものです。同条第3項は、厚生労働大臣が指針に従い、事業者や団体に必要な指導や援助を行えるとしています。個別の事業場への具体的な当てはめは、所轄の労働基準監督署などの確認を優先してください。

  • 自社の業種が、法第28条の2ただし書の製造業、または規則第24条の11第2項の業種(建設業など)に当たるかを確認する
  • 設備・原材料・作業方法を変える前に、調査の時期に当たるかを確認する
  • 作業を洗い出し、危険性又は有害性を特定する
  • 最悪を想定して重篤度と可能性の度合を見積もる
  • 除去・工学的対策・管理的対策・保護具の順で措置を検討し、5項目を記録する

よくある質問

リスクアセスメントは、法律で義務ですか?

労働安全衛生法第28条の2は、表示・文書交付の対象物を除く調査と措置を、事業者の努力義務として定めています。表示・文書交付の対象になる化学物質の調査は、第57条の3で行わなければならないとされています。

どの業種の事業者が対象ですか?

化学物質以外の調査は、製造業のほか、規則第24条の11第2項が定める、林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業と、労働安全衛生法施行令第2条第2号の業種(製造業を除く)が対象です。化学物質に係る調査は業種を限っていません。

いつ実施しますか?

建設物の設置や変更、設備・原材料・作業方法の新規採用や変更、危険性又は有害性等に変化が生じるおそれがあるときです(規則第24条の11第1項)。指針は、労働災害が発生したときや、前回から一定期間が経過したときも挙げています。

記録には何を残しますか?

洗い出した作業、特定した危険性又は有害性、見積もったリスク、設定したリスク低減措置の優先度、実施したリスク低減措置の内容の5項目です(指針の11)。

参照した公的一次資料

試算に使う一次資料の一覧と確認状況を見る

次に確認すること

この記事の条件を引き継いで、未確認費目を整理する