この記事の対象:毒物・劇物に当たる洗浄剤や薬品を使う現場に特定技能外国人を配置する企業の安全衛生・総務担当者
登録がいらない使用者も、守る規定がある
毒物及び劇物取締法の登録が要るのは、毒物・劇物を販売や譲渡の目的で製造・輸入・販売する人です。自分の業務のために使うだけの会社は、登録が不要です。
厚生労働省の毒物及び劇物取締法Q&A(令和8年4月30日更新)は、登録が不要な例として、製造原料として使う場合、試験研究や分析に使う場合、毒物・劇物に当たる農薬、洗浄剤、接着剤、塗料などを自分の業務のために使い切る場合を挙げています。
ただし、これらの使用者は「届出不要の業務上取扱者」にあたり、法第22条第5項で準用される規定を守る必要があるとされています。毒物・劇物を原料にして、毒物・劇物ではない製品を作る場合も、同じ扱いです。
毒物・劇物に当たるのは、法の別表と政令で指定された物です。使う薬品が当たるかどうかは、製品のSDSや、都道府県の薬務担当の窓口で、配置の前に確かめます。
守る規定:盗難・紛失の防止、流出の防止、表示、容器、廃棄
法第22条第5項は、第11条、第12条第1項と第3項、第17条、第18条を、省令で定める毒物・劇物を業務上取り扱う人に準用しています。
第11条は、毒物・劇物が盗まれたり、なくなったりしないための必要な措置、施設の外へ飛散し、漏れ、流れ出し、地下にしみ込むのを防ぐ措置、施設の外へ運ぶときの漏れを防ぐ措置を求めています。毒物と、省令で定める劇物については、飲食物の容器として通常使われる物を、容器に使ってはなりません。
第12条は、容器と包装に「医薬用外」の文字と、毒物は赤地に白色の「毒物」、劇物は白地に赤色の「劇物」の文字を表示するよう定めています。貯蔵・陳列する場所にも、「医薬用外」と「毒物」または「劇物」の文字を表示します。
廃棄の基準(第15条の2)は準用ではなく、業務上取扱者を含め誰にでも直接適用され、政令の技術上の基準に従わなければなりません。基準は、中和、加水分解、酸化、還元、希釈などで毒物・劇物に当たらない物にすることなどです(施行令第40条)。
| 守ること | 根拠 | 違反したときの罰則 |
|---|---|---|
| 盗難・紛失・飛散・漏れの防止、飲食物の容器の不使用 | 第11条 | 知事の命令(第22条第6項)に違反した人は、2年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその併科(第24条の2第3号) |
| 容器・包装と、貯蔵・陳列場所の「医薬用外」表示 | 第12条第1項・第3項 | 表示をせず、または虚偽の表示をした人は3年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金、またはその併科(第24条第2号) |
| 政令の基準に従った廃棄 | 第15条の2、施行令第40条 | 3年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金、またはその併科(第24条第5号) |
| 事故・盗難の届出と応急の措置 | 第17条 | 30万円以下の罰金(第25条第3号) |
- 毒物・劇物の保管場所に、盗難・紛失を防ぐ施錠などの措置をした
- 容器と保管場所に「医薬用外」と「毒物」または「劇物」の文字を表示した
- 飲食物の容器に移し替えない約束を、作業前に実物で伝えた
届出が要る4つの事業と、専任の責任者
上の規定に加えて、特定の事業を行う人は、事業場ごとに都道府県知事(保健所設置市・特別区では市長・区長)への届出が必要です(法第22条第1項)。
施行令第41条が定める事業は、電気めっきを行う事業、金属熱処理を行う事業、最大積載量が5,000キログラム以上の大型自動車などを用いた毒物・劇物の運送の事業、しろありの防除を行う事業の4つです。取り扱う毒物・劇物は事業ごとに決まり、めっきと金属熱処理は無機シアン化合物たる毒物とその製剤、しろありの防除は砒素化合物たる毒物とその製剤です(施行令第42条)。
届出は、その業務上取り扱うことになった日から30日以内です。これらの事業を行う人には、毒物劇物取扱責任者を置く規定(第7条)も準用されます。厚生労働省の解説ページも、毒物劇物取扱責任者の設置と、第11条・第12条の規定が営業者と同様に適用されると説明しています。
届出の内容を変更したときや、事業をやめたときも、知事への届出が必要です(同条第3項)。特定技能の分野でこの4事業に当たりうる現場は、配置の前に、都道府県の窓口へ確認します。
- 使う薬品を洗い出す
SDSなどで、毒物・劇物に当たる成分が含まれるかどうかを、薬品ごとに確かめます。
- 4事業に当たるかを確かめる
めっき、金属熱処理、大型の運送、しろあり防除のいずれかに当たるときは、30日以内の届出と責任者の設置を確かめます。
- 保管と表示を整える
施錠、飛散防止、「医薬用外」の表示、廃棄の方法を、作業が始まる前に決めておきます。
事故が起きたときの届出と、知事の命令
毒物・劇物が飛散したり、盗まれたりしたときの届出先は、事故の種類で分かれています。
第17条第1項は、飛散・漏れ・流出・しみ出し・地下へのしみ込みで、不特定または多数の人に保健衛生上の危害が生じるおそれがあるときは、直ちに保健所、警察署または消防機関に届け出て、危害を防ぐ応急の措置を講じるよう求めています。盗難や紛失は、第2項により、直ちに警察署に届け出ます。
知事は、準用される第11条に違反していると認めるときは、その人に必要な措置をとるべきことを命じることができます(第22条第6項)。命令に違反すると、表のとおり罰則の対象です。
配置する人には、保管場所の位置、こぼしたときの連絡先、飲食物の容器に移し替えない約束を、作業の前に実物の容器で伝えます。
よくある質問
洗浄剤を自社の掃除だけに使う場合も、登録が必要ですか?
毒物・劇物に当たる洗浄剤を自分の業務のために使い切る場合は、登録は不要です。ただし、届出不要の業務上取扱者として、保管・表示などの規定を守る必要があるとされています。
どんな事業が、知事への届出の対象ですか?
電気めっき、金属熱処理、大型自動車での毒物・劇物の運送、しろありの防除の4事業です。届出は、業務上取り扱うことになった日から30日以内です(施行令第41条、法第22条第1項)。
毒物・劇物を飲料のペットボトルに移してもよいですか?
毒物と、省令で定める劇物は、飲食物の容器として通常使われる物を容器に使ってはなりません(第11条第4項)。移し替えは避けます。
毒物・劇物をこぼして外へ流れ出たときは、どうしますか?
不特定または多数の人に保健衛生上の危害が生じるおそれがあるときは、直ちに保健所、警察署または消防機関に届け出て、応急の措置を講じます(第17条第1項)。
参照した公的一次資料
- e-Gov法令検索「毒物及び劇物取締法」第7条・第11条・第12条・第15条の2・第17条・第22条・第24条・第24条の2・第25条(確認日:2026年10月21日、次回確認:2027年1月21日)
- e-Gov法令検索「毒物及び劇物取締法施行令」第40条〜第42条(廃棄の方法・業務上取扱者の届出)(確認日:2026年10月21日、次回確認:2027年1月21日)
- 厚生労働省「毒物及び劇物取締法Q&A」(令和8年4月30日更新、問3-2〜3-5)(確認日:2026年10月21日、次回確認:2027年1月21日)
- 厚生労働省「めっき業者、金属熱処理業者、毒物劇物を大量に運送する業者、しろあり防除業者の方に適用される規定」(確認日:2026年10月21日、次回確認:2027年1月21日)