この記事の対象:農薬を使う農業の現場に特定技能外国人を配置する企業の安全衛生・総務担当者
使える農薬の範囲と、違反の罰則
農薬取締法は、容器や包装に法定の表示がある農薬と、特定農薬のほかは使ってはならないと定めています(第24条)。さらに、農薬を使う人は、使用の時期や方法についての国の基準に違反して使ってはなりません(第25条第3項)。
法第2条の農薬は、農作物(樹木と農林産物を含む)を害する菌、虫、草などの防除に使う殺菌剤、殺虫剤、除草剤などと、成長促進剤や発芽抑制剤など農作物の生理機能の増進・抑制に使う薬剤です。防除に使う天敵も、農薬とみなされます。
第24条または第25条第3項に違反した人は、3年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金に処せられ、または併科されます(法第47条第3号)。違反した人が対象で、実際に農薬を使った人も含まれうる点を、配置前に確かめておきます。
基準そのものは、農林水産省令・環境省令の「農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令」が定めています。基準を使う人の側から見ると、守るべき内容は、ラベル(容器の表示)に書かれた使い方に重なります。
義務の5項目:作物・量・希釈・時期・回数
省令第2条第1項は、食用と飼料用の農作物(食用農作物等)に農薬を使うときに守る基準を、5つ並べています。違反すると、法第25条第3項の違反になります。
5つは、適用農作物等の範囲に含まれない食用農作物等に使わないこと、定められた算式の量を超えて使わないこと、希釈倍数の最低限度を下回って使わないこと、使用時期以外に使わないこと、生育期間の総使用回数を超えて使わないことです。
ラベルに載せる使用方法は、農薬取締法施行規則第14条第2項が、適用農作物等の種類ごとに、単位面積当たりの使用量の最高限度と最低限度、希釈倍数の最高限度と最低限度、使用時期、生育期間の総使用回数、有効成分ごとの総使用回数、使用の態様などを書くよう定めています。つまり、ラベルの該当欄が、5項目を確認する出発点になります。
同じ有効成分を含む農薬を複数使うときは、有効成分ごとの総使用回数で数えます。種苗に使用済みの農薬の回数が表示されている場合は、その回数を引いて数えます(省令第2条第1項第5号)。
| 守る基準 | 確認するラベルの項目 | 違反した場合 |
|---|---|---|
| 適用農作物等の範囲に含まれない作物には使わない | 適用農作物等の種類 | 法第25条第3項違反(法第47条第3号の罰則) |
| 定められた量を超えて使わない | 単位面積当たりの使用量 | 同上 |
| 希釈倍数の最低限度を下回って使わない | 希釈倍数 | 同上 |
| 使用時期以外に使わない | 使用時期 | 同上 |
| 生育期間の総使用回数を超えて使わない | 有効成分ごとの総使用回数 | 同上 |
- 散布する作物が、ラベルの適用農作物等に載っていることを確かめた
- 使用量と希釈倍数が、ラベルの範囲内であることを確かめた
- 使用時期と、有効成分ごとの使用回数の累計を確かめた
努力義務と届出:飛散・流出防止、帳簿、くん蒸
省令の第6条から第9条は、使い方に応じた措置と帳簿の記載を「努めなければならない」と定めています。罰則の対象になる義務とは、書き方が違います。
住宅、学校、保育所、病院、公園など人が居住・滞在し、または頻繁に訪れる施設の敷地とその近接地では、農薬が飛散しないための措置に努めます(第6条)。水田では農薬の流出を防ぐ措置(第7条)、クロルピクリンを含む農薬では土壌からの揮散を防ぐ措置(第8条)に、それぞれ努めます。
帳簿は、農薬を使ったときに、使用した年月日、場所、農作物等、農薬の種類または名称、単位面積当たりの使用量または希釈倍数の5つを記載するよう努めます(第9条)。法第27条も、使う人が安全で適正な使用の知識と理解を深め、普及指導員などの指導を受けるよう努めるものとしています。
努力義務とは別に、くん蒸で農薬を使う人(自ら栽培する農作物等に使う人を除く)は、毎年度の最初の使用日までに、農薬使用計画書を農林水産大臣に提出します(第3条)。都道府県知事が、水質汚濁性農薬の使用について地域を限って許可制とした場合は、許可を受けずに使うと罰則の対象です(法第26条第2項、第47条第6号)。
- ラベルを読み合わせる
初めて使う農薬は、作物・量・希釈倍数・時期・回数の欄を、作業前に担当者と一緒に読みます。
- 使用の記録を残す
年月日、場所、作物、農薬名、使用量または希釈倍数の5つを帳簿に書きます。
- 周辺と水を確かめる
近くに住宅、学校、公園、水田があるときは、飛散や流出を防ぐ方法を決めてから使います。
現場での使い方:農林水産省の6〜8月の運動と、3種類の啓発資料
農林水産省は、農薬の安全で適正な使用、使用中の事故の防止、環境への配慮を進めるため、毎年6月から8月までの3か月間、農薬危害防止運動を実施しています。
同省の「農薬の適正な使用」のページには、令和8年度の運動の概要と実施要綱、重点指導項目、防護装備の着用の啓発ポスターが載っています。あわせて、リーフレットとして、事故被害防止編、農薬ラベル確認編、飛散防止編の3種類が公開されています。
クロルピクリン剤については、安全使用に関する別のチラシとポスターがあります。資料の外国語版の有無は同ページに記載がないため、このガイドでは扱いません。配置する人の理解に合わせて、ラベルの読み合わせと作業の実演を、事前に段取りしておきます。
よくある質問
農薬の使い方を守らないと、どうなりますか?
農薬取締法第25条第3項は、国の基準に違反した農薬の使用を禁じています。違反は、3年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその併科の対象です(第47条第3号)。
ラベルに書かれた使い方は、守らないといけませんか?
食用・飼料用の農作物等に使うときは、ラベルに書かれた適用作物、使用量、希釈倍数、使用時期、総使用回数を守ることが、省令第2条第1項の基準になっています。
農薬の使用の帳簿は、つけないといけませんか?
省令第9条は、使用した年月日、場所、農作物等、農薬の種類または名称、単位面積当たりの使用量または希釈倍数の記載を「努めなければならない」としています。努力義務です。
住宅の近くで農薬を使うときは、何を守りますか?
省令第6条は、住宅、学校、保育所、病院、公園などの敷地とその近接地では、農薬が飛散しないための措置を講じるよう努めるものとしています。
参照した公的一次資料
- e-Gov法令検索「農薬取締法」第2条・第16条・第24条〜第27条・第47条(定義、使用禁止、使用基準、罰則)(確認日:2026年10月21日、次回確認:2027年1月21日)
- e-Gov法令検索「農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令」第1条〜第9条(確認日:2026年10月21日、次回確認:2027年1月21日)
- e-Gov法令検索「農薬取締法施行規則」第14条(農薬の表示の方法等)(確認日:2026年10月21日、次回確認:2027年1月21日)
- 農林水産省「農薬の適正な使用」(農薬危害防止運動・啓発資料)(確認日:2026年10月21日、次回確認:2027年1月21日)