この記事の対象:工業製品製造業、建設、造船・舶用工業などで金属アーク溶接を行う現場に特定技能外国人を配置する企業の安全衛生・現場責任者

対象になる作業:金属アーク溶接等作業と溶接ヒューム

溶接ヒュームは、特定化学物質障害予防規則(特化則)の対象で、金属アーク溶接等作業にはこの規則の措置が必要です。

特化則第27条第2項は、金属をアーク溶接する作業、アークを用いて金属を溶断したりガウジングしたりする作業、その他の溶接ヒュームを製造し、または取り扱う作業を「金属アーク溶接等作業」と呼んでいます。

厚生労働省の労働局の解説によると、溶接ヒュームは金属アーク溶接等作業で加熱により発生する粒子状物質です。ばく露による神経障害などの健康障害のおそれが明らかになったことから、令和3年4月1日から順次、特定化学物質を扱う作業に準じた作業環境管理と健康管理が義務づけられました。濃度測定と作業主任者の選任には、令和4年3月31日までの経過措置が置かれていました。

措置のうち、換気と濃度測定は屋内作業場に関わるもので、作業主任者の選任と健康診断は屋内・屋外に共通します。

屋内作業場の換気と濃度測定、呼吸用保護具

金属アーク溶接等作業を行う屋内作業場には、換気、濃度測定、呼吸用保護具の定めがあります。

第38条の21第1項は、金属アーク溶接等作業を行う屋内作業場について、溶接ヒュームを減らすため、全体換気装置による換気か、これと同等以上の措置を求めています。労働局の解説では、同等以上の措置に局所排気装置とプッシュプル型換気装置が含まれると説明されています。

金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場で、新しい作業の方法を採用するときや変更するときは、あらかじめ、労働者の身体に装着する試料採取機器を使った測定で、空気中の溶接ヒュームの濃度を測定します(同条第2項)。結果に応じて換気装置の風量を増やすなどの措置を講じ、その効果を確認するため再度測定します(同条第3項・第4項)。

労働局の解説では、最初の測定でマンガンの濃度が0.05mg/㎥以上のときは、風量の増加などの措置を必ず行う、と説明されています。また同じ解説は、「継続して行う屋内作業場」に、建築中の建物内部などで同じ場所で繰り返し行わないものは含まれず、「変更」とは溶接方法、溶接材料・母材、作業場所の変更が濃度に大きく影響する場合をいう、と説明しています。

金属アーク溶接等作業に労働者を従事させるときは、有効な呼吸用保護具を使わせます(同条第5項)。継続して行う屋内作業場では、測定の結果に応じた呼吸用保護具を使わせます(同条第7項)。第7項の呼吸用保護具のうち面体を有するものは、1年以内ごとに1回、適切に装着されているかを確認し、結果を記録して3年間保存します(同条第9項)。

測定の記録は、その作業の方法を用いなくなった日から3年を経過する日まで保存します(同条第10項)。作業の一部を請負人に任せるときは、有効な呼吸用保護具の使用が必要であることを周知します(同条第6項・第8項)。

屋内作業場の溶接ヒューム対策の流れ(特化則第38条の21)
段階内容条
換気全体換気装置による換気か、これと同等以上の措置第1項
測定継続して行う屋内作業場で、作業の方法を新たに採用・変更するとき、あらかじめ濃度を測定第2項
改善と再測定結果に応じて風量の増加などを行い、効果を確認する再測定第3項・第4項
呼吸用保護具有効なものを使わせる。継続する屋内作業場では測定の結果に応じる第5項・第7項
装着の確認第7項の保護具のうち面体を有するものは、1年以内ごとに1回確認し、記録を3年保存第9項

作業主任者の選任と職務

金属アーク溶接等作業には、作業主任者の選任が必要です。

労働安全衛生法施行令第6条第18号は、別表第3の特定化学物質を製造し、または取り扱う作業を、作業主任者を選任すべき作業としています。特化則第27条第2項は、金属アーク溶接等作業について、講習科目を限定した特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習の修了者から、金属アーク溶接等作業主任者を選任できると定めています。

第28条の2は、作業主任者の職務として、作業の方法を決めて労働者を指揮すること、全体換気装置その他の健康障害を予防するための装置を1月を超えない期間ごとに点検すること、保護具の使用状況を監視することの3つを挙げています。

作業主任者を選任したときは、その氏名と行わせる事項を、作業場の見やすい箇所に掲示するなどして関係する労働者に周知します(労働安全衛生規則第18条)。日本語が十分でない労働者には、掲示の内容が伝わる形にすることも考えておくとよいでしょう。

特殊健康診断:雇入れ時・配置換え時と6月以内ごと

金属アーク溶接等作業に常時従事する労働者には、じん肺健康診断とは別に、特殊健康診断が必要です。

労働局の解説によると、雇入れまたは当該業務への配置換えの際と、その後6月以内ごとに1回、定期に健康診断を行い、結果を遅滞なく所轄労働基準監督署長に報告します。一次検診の項目は、業務の経歴の調査、作業条件の簡易な調査、パーキンソン病症候群様症状の既往歴の有無の検査、握力の測定などです。一次検診で他覚症状が認められ、医師が必要と認めた人には二次検診を受けさせます。

健康診断を行うべき有害な業務は、労働安全衛生法施行令第22条で定められています。自社の作業が当てはまるかは、条文と所轄の労働基準監督署で確認してください。

  • 金属アーク溶接等作業(溶断・ガウジングを含む)がどの現場にあるかを洗い出す
  • 屋内作業場の換気の方式(全体換気か同等以上の措置)を確認する
  • 継続して行う屋内作業場で、溶接の方法や材料を変えるときの濃度測定の時期を決める
  • 呼吸用保護具の種類と、継続して行う屋内作業場で使う面体を有するものの年1回の装着確認の記録(3年保存)を管理する
  • 作業主任者を選任し、換気装置を1月を超えない期間ごとに点検する
  • 雇入れ時・配置換え時と6月以内ごとの特殊健康診断の日程を管理する

よくある質問

溶接ヒュームの濃度測定は、いつ必要ですか?

特化則第38条の21第2項により、金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場で、新たな作業の方法を採用するときや変更するときに、あらかじめ測定します。結果に応じた措置を講じたあとは、効果を確認するため再度測定します。

呼吸用保護具の装着確認はどのくらいの頻度ですか?

同条第9項により、継続して行う屋内作業場で測定の結果に応じて使わせる呼吸用保護具(第7項)のうち、面体を有するものは、1年以内ごとに1回、定期に適切に装着されているかを確認し、結果を記録して3年間保存します。

溶接作業の健康診断は、じん肺健康診断だけでよいですか?

厚生労働省の労働局の解説では、金属アーク溶接等作業に常時従事する労働者には、じん肺健康診断に加えて、溶接ヒュームに係る特殊健康診断(雇入れ時・配置換え時と6月以内ごとに1回)が義務づけられたと説明されています。

参照した公的一次資料

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