この記事の対象:製造・建設・溶接などの現場で特定技能外国人に防じんマスクや防毒マスクを使わせる企業の、安全衛生・現場管理の担当者

備える義務と、選び方・使い方を示す通達の位置づけ

呼吸用保護具を備える義務は安衛則に、選び方と使い方の細部は厚生労働省の通達に定められています。

労働安全衛生規則第593条第1項は、ガスや蒸気、粉じんを発散する有害な場所での業務などで、事業者に呼吸用保護具などの適切な保護具を備えることを求めています。第2項は、その業務の一部を請負人に請け負わせるときに、請負人にも保護具を使えるようにする必要があると周知することを求めています。

選び方と使い方の細部は、令和5年5月25日付の通達「防じんマスク、防毒マスク及び電動ファン付き呼吸用保護具の選択、使用等について」(基発0525第3号)にまとまっています。この通達は、新しい化学物質管理の導入に伴って出され、従来の防じんマスク通達と防毒マスク通達を廃止しています。

通達は対象者を国籍で区別していません。ここでは、作業者に説明する前に事業者が押さえておく点を、通達の原文に沿って整理します。

保護具着用管理責任者の選任と、その役目

リスクアセスメントの結果に基づいて保護具を使わせるときは、保護具着用管理責任者を選びます。

安衛則第12条の6によると、化学物質管理者を選任した事業者は、リスクアセスメントの結果に基づく措置として労働者に保護具を使わせるときに、保護具着用管理責任者を選任します。選任するのは、選任の事由が発生した日から14日以内で、保護具に関する知識と経験を有すると認められる人の中からです。氏名は、事業場の見やすい箇所への掲示などで関係労働者に知らせます。

管理させる事項は、保護具の適正な選択、労働者の保護具の適正な使用、保護具の保守管理の3つです。通達は、保護具着用管理責任者に、着用する労働者へ作業環境中の有害物質の種類やばく露の危険性についての教育を行わせ、各製品の取扱説明書に基づく装着方法と、顔と面体の密着性の確認方法についての教育と訓練を行わせるよう求めています。

化学物質管理者の選任の全体像は、別の記事で整理しています。

化学物質管理者の選任の要否は、化学物質管理者とリスクアセスメントのガイドで確認できます。

保護具着用管理責任者が管理する事項(安衛則第12条の6、通達の第1の3)
管理する事項通達が挙げる内容
保護具の適正な選択安衛則第12条の6第1項第1号。呼吸用保護具の選択についての管理
労働者の適正な使用装着方法・使用方法・密着性の確認方法の教育と訓練、計画どおりに使われているかの確認
保護具の保守管理ばく露の状況の記録を把握したうえでの適正な保守管理

呼吸用保護具の種類の選び方:使ってはいけない場所を先に確認する

通達は、まず使ってはいけない場所を確かめ、そのうえで性能の高さを比べる順に説明しています。

酸素欠乏のおそれがある場所と、有害物質の濃度が分からない場所では、ろ過式の呼吸用保護具を使わせてはいけません。酸素欠乏のおそれがある場所では、指定防護係数が1000以上の全面形面体を持つ給気式の呼吸用保護具から選ぶとされています。

防じんマスクと、防じん機能を持つ電動ファン付き呼吸用保護具(P-PAPR)は、酸素濃度が18%以上の場所でも、有害なガスや蒸気がある場所では使いません。その場所では、防毒マスク、防毒機能を持つ電動ファン付き呼吸用保護具(G-PAPR)、または給気式を使います。

性能は、要求防護係数と指定防護係数で比べます。溶接ヒュームや、濃度基準値のある物質では、測定した濃度から算出した要求防護係数を、上回る指定防護係数を持つ保護具を選びます。濃度基準値やばく露限界の情報がないときは、化学物質管理者や労働衛生の専門家に相談して選ぶとされています。

溶接ヒュームと鉛を扱う作業では、ろ過材の種類はRS2、RL2、DS2、DL2以上とされています。算出した要求防護係数の値にはかかわりません。粉じんとしての有害性も考えるためです。

場所の条件と使えない保護具(通達の第1の4)
場所の条件通達の扱い
酸素欠乏のおそれがある場所ろ過式は使わない。指定防護係数1000以上の全面形面体の給気式から選ぶ
有害物質の濃度が不明な場所ろ過式の呼吸用保護具は使わせない
有毒ガスや蒸気がある場所(酸素濃度18%以上でも)防じんマスクとP-PAPRは使わない。防毒マスク、G-PAPR、給気式を使う
溶接ヒュームや鉛を扱う作業ろ過材の種類はRS2、RL2、DS2、DL2以上

フィットテストとシールチェック:顔に合っているかを確かめる

面体を持つ保護具は、顔にすき間なく密着して初めて性能が出るため、通達は2つの確認を求めています。

フィットテストは、労働者が使う面体がその人の顔に密着するかを評価する検査です。通達によると、金属アーク溶接等作業の作業場所、第三管理区分の場所、リスクアセスメントに基づく措置として呼吸用保護具を使わせる事業場では、1年以内ごとに1回、定期にフィットテストを実施します。対象は面体を持つ保護具で、顔との密着を求めないルーズフィット形は対象外です。

フィットテストは、保護具を選ぶときや、顔の手術などで面体の密着に影響しそうな変形があったときにも実施することが望ましいとされています。不合格のときは、同じ型式で寸法の違う面体、別の型式の面体、ルーズフィット形の保護具などを検討します。

シールチェックは、着用した直後に、着用者自身が行う密着性の確認です。取扱説明書に従って行い、主な方法には陰圧法と陽圧法があります。

陰圧法は吸気口をふさいで息を吸い、面体が顔に吸いつくことを確かめます。陽圧法は排気口をふさいで息を吐き、面体が膨らむことを確かめます。

フィットテストとシールチェックの違い(通達の第1の5)
項目フィットテストシールチェック
目的その人の顔に合う面体かを評価する着用した状態で密着しているかを確かめる
行う人測定の方法に基づいて実施(JIS T 8150の方法またはこれと同等の方法)着用者自身
頻度1年以内ごとに1回(対象の作業場)。選ぶときや顔の変形があったときも望ましい面体を着用するたび、着用した直後

着用させるときにやってはいけないことと、交換の目安

密着を妨げる着け方と、ろ過材の交換の目安は、現場で作業者に直接伝える項目です。

通達は、しめひもを耳にかけず後頭部で固定させることを求め、次の着用をさせないよう留意するとしています。面体と顔の間にタオルなどを挟むこと、ひげやもみあげ、前髪が面体の接顔部と顔の間に入り込む状態で使うこと、ヘルメットの上からしめひもを使うことです。

防じんマスクやP-PAPRを使っていて息苦しさを感じたら、ろ過材を交換します。使い捨て式の防じんマスクは、表示された使用限度時間の前でも、息苦しさを感じるときや著しく型くずれしたときは、廃棄して交換します。ヒ素やクロムなど有害性が高い粉じんに使ったろ過材は、1回使うごとに廃棄します。

作業中に臭気や息苦しさなどの異常を感じたら、作業者はただちに作業を中止して避難し、保護具着用管理責任者などに報告します。呼吸用保護具をつけた作業は体への負担が大きいため、心肺機能への影響や閉所恐怖症、皮膚炎などの可能性がないかを、産業医などに確認することも通達に書かれています。

粉じん作業に特有の義務は、粉じん作業の換気・特別教育・呼吸用保護具のガイドで確認できます。

  • 使う作業場所が、酸素欠乏や有毒ガス、濃度不明の場所に当たらないか確かめた
  • 保護具着用管理責任者を選任し、氏名を掲示した
  • 面体を持つ保護具で、1年以内ごとのフィットテストの日程を決めた
  • 着用直後のシールチェックの方法を、取扱説明書に基づいて作業者に伝えた
  • ひげ、タオルの挟み込み、ヘルメットの上のしめひもを禁止する旨を伝えた
  • 息苦しさや異常を感じたときの作業の中止と報告の流れを決めた

よくある質問

呼吸用保護具の使い方の教育は、外国人にどう行えばよいですか?

通達は、保護具着用管理責任者に、各製品の取扱説明書に基づく装着方法、使用方法、顔と面体の密着性の確認方法の教育と訓練を行わせるよう求めています。言語や教材の選び方は通達に書かれていないため、作業者が理解できる形にすることを、責任者と相談して決めます。

フィットテストは必ず毎年行うのですか?

通達は、金属アーク溶接等作業の作業場所、第三管理区分の場所、リスクアセスメントに基づく措置として面体を持つ呼吸用保護具を使わせる事業場で、1年以内ごとに1回、定期に行うとしています。それ以外の場合の扱いは、通達の原文と所轄の労働基準監督署で確認してください。

ひげがあるとマスクは使えませんか?

通達は、ひげやもみあげ、前髪が面体の接顔部と顔の間に入り込む状態で使わせないよう留意することを求めています。その状態では密着が保てないためです。

使い捨てのマスクはどのくらいで交換しますか?

通達は、表示された使用限度時間に達する前でも、息苦しさを感じるときや著しい型くずれがあるときは廃棄して交換するとしています。時間そのものの目安は、製品の表示と製造者の情報を確認してください。

参照した公的一次資料

試算に使う一次資料の一覧と確認状況を見る

次に確認すること

この記事の条件を引き継いで、未確認費目を整理する