この記事の対象:特定技能外国人の賃金の未払いや受入れ機関の経営悪化に対応する人事・総務担当者、登録支援機関の担当者、賃金が払われないまま退職した外国人を支援する人
企業が倒産したとき、国が未払賃金の一部を立て替える
未払賃金立替払制度は、企業倒産で賃金が払われないまま退職した労働者に、国が未払賃金の一部を立て替えて払う制度です。
厚生労働省のQ&Aは、この制度を「賃金の支払の確保等に関する法律」に基づく制度と説明しています。国(独立行政法人労働者健康安全機構)が事業主に代わって払い、払った分は機構が労働者の賃金債権を引き継いで、本来の支払責任者である事業主に求償します。
対象は、労働者として雇用されて倒産に伴い退職し、未払賃金が残っている人です。厚生労働省は、国籍やパートタイム・アルバイトなどの別を問わず対象になると案内しています。法人登記簿に登記された役員で役員報酬を受けていた人など、労働者でない人は対象外です。
賃金の支払いの基本ルールは賃金支払の5原則で整理しています。
事業主と労働者、それぞれに要件がある
立替払を受けるには、事業主側の要件と労働者側の要件の両方を満たす必要があります。
事業主側は、労災保険の適用事業の事業主で、1年以上事業を実施していて、倒産していることが要件です。倒産には、破産手続開始の決定などの法律上の倒産と、事業活動が停止して再開の見込みがなく賃金支払能力がないとして労働基準監督署長が認定する事実上の倒産があります。事実上の倒産は中小企業事業主だけが対象です。
労働者側は、破産手続開始等の申立て(事実上の倒産では認定申請)の6か月前の日から2年の間に退職していることが要件です。例えば、申立てが9月1日なら、その年の3月1日から2年間に退職した人が対象になります。未払賃金額は、法律上の倒産では破産管財人等の証明、事実上の倒産では労働基準監督署長の確認を受けます。
| 区分 | 要件 |
|---|---|
| 事業主 | 労災保険の適用事業で、1年以上事業を実施していること |
| 倒産の種類 | 法律上の倒産、または労働基準監督署長が認定する事実上の倒産(中小企業事業主のみ) |
| 退職の時期 | 申立て(認定申請)の6か月前の日から2年の間に退職 |
| 未払賃金の証明 | 法律上の倒産は破産管財人等の証明、事実上の倒産は労働基準監督署長の確認 |
立替払の額は未払賃金の8割、年齢ごとに上限がある
立替払される額は、未払賃金総額の8割です。総額には、退職日の年齢で決まる限度額があります。
対象になる賃金は、退職日の6か月前の日から立替払請求日の前日までに支払期日が来ている定期賃金と退職金です。ボーナス(賞与)は含まれません。税や社会保険料を引く前の額で計算し、未払賃金の総額が2万円未満のときは対象外です。
未払賃金総額が限度額を超えるときは、限度額の8割が立替払の額になります。厚生労働省の例では、退職日に35歳で未払賃金が200万円なら160万円、300万円なら限度額220万円の8割にあたる176万円です。
| 退職日の年齢 | 未払賃金総額の限度額 | 立替払の上限額 |
|---|---|---|
| 30歳未満 | 110万円 | 88万円 |
| 30歳以上45歳未満 | 220万円 | 176万円 |
| 45歳以上 | 370万円 | 296万円 |
法律上の倒産と事実上の倒産で、証明を受ける先が違う
請求の手続は、倒産の種類によって、最初に証明や確認を受ける先が変わります。
法律上の倒産では、基本的に破産管財人等から未払賃金額などを記載した証明書の交付を受けます。その証明書をもとに、立替払請求書を労働者健康安全機構へ提出します。事実上の倒産では、労働基準監督署長の認定を受けたうえで、未払賃金額について労働基準監督署長の確認を受け、そのあとで機構へ請求します。
事実上の倒産の認定申請は、退職日の翌日から6か月以内に行います。退職者のうち1人が申請すれば足ります。機構への請求ができる期間は、倒産の決定日(事実上の倒産では認定日)の翌日から2年以内です。
審査の後、指定の銀行口座に立替払金が振り込まれます。電子請求のサイトもあります。
| 倒産の種類 | 最初の手続 | 請求先と期限 |
|---|---|---|
| 法律上の倒産 | 破産管財人等から証明書の交付を受ける | 労働者健康安全機構へ。決定日の翌日から2年以内 |
| 事実上の倒産 | 労働基準監督署長へ認定申請(退職日の翌日から6か月以内)、確認申請 | 労働者健康安全機構へ。認定日の翌日から2年以内 |
相談先と、受入れ側が知っておくこと
制度の相談は、最寄りの労働基準監督署と、労働者健康安全機構の未払賃金立替払相談コーナーで受け付けています。
厚生労働省は、まず最寄りの労働基準監督署に相談するよう案内しています。この制度は全国の労働基準監督署と労働者健康安全機構で実施されます。要件の当てはまりは個別の事情で変わるため、本ページの内容だけで判断せず、窓口で確認してください。
受入れ機関の側では、賃金の支払遅れが続く場合に、外国人労働者へ制度と相談先を伝えられるようにしておくことが現実的です。立替払は未払賃金の全額ではなく、上限もあるため、倒産前の段階では賃金を期日どおりに払うことが先決です。退職後の失業給付など、ほかの制度は別に確認します。
離職後の雇用保険は失業給付(基本手当)で確認できます。
- 未払いの賃金の期間と金額を、給与明細や賃金台帳で整理した
- 退職日と本人の退職日時点の年齢を確認した
- 倒産の種類(法律上か事実上か)を確認した
- 最寄りの労働基準監督署と機構の相談コーナーを伝えた
よくある質問
外国人労働者や特定技能外国人も、未払賃金立替払制度を使えますか?
厚生労働省のQ&Aでは、労働者として雇用されて倒産に伴い退職し、未払賃金が残っている人であれば、国籍やパート・アルバイトなどの別を問わず対象になるとされています。役員など労働者でない人は対象外です。
未払賃金は全額が立て替えられますか?
全額ではありません。立替払の額は未払賃金総額の8割で、退職日の年齢に応じて、総額の限度額(110万円・220万円・370万円)が決まっています。ボーナスは対象外で、総額が2万円未満のときも対象になりません。
請求はいつまでにすればよいですか?
労働者健康安全機構への請求は、法律上の倒産では決定日の翌日から、事実上の倒産では労働基準監督署長の認定日の翌日から、それぞれ2年以内です。事実上の倒産の認定申請は、退職日の翌日から6か月以内に行います。
どこに相談すればよいですか?
厚生労働省は、最寄りの労働基準監督署に相談するよう案内しています。労働者健康安全機構にも未払賃金立替払相談コーナーがあります。
参照した公的一次資料
- 厚生労働省「未払賃金の立替払制度に関するQ&A」(確認日:2026年10月14日、次回確認:2027年1月14日)
- 厚生労働省「未払賃金の立替払制度の概要」(確認日:2026年10月14日、次回確認:2027年1月14日)
- 厚生労働省「未払賃金立替払制度の概要と実績」(確認日:2026年10月14日、次回確認:2027年1月14日)
- 独立行政法人労働者健康安全機構「未払賃金の立替払制度」(確認日:2026年10月14日、次回確認:2027年1月14日)