この記事の対象:特定技能外国人に退職を勧める、または退職の申出を受けた企業の人事・労務担当者、登録支援機関の担当者
合意退職・辞職・解雇の違い
厚生労働省の資料は、労働契約の終了を、合意退職、辞職、解雇などに分けています。退職勧奨は、このうち合意退職に至る過程で行われるものです。
厚生労働省の「スタートアップ労働条件」のQ&Aによると、解雇は使用者からの一方的な意思表示で労働契約を終わらせるものです。辞職は労働者からの一方的な意思表示で、合意退職は労働者と使用者が合意して契約を終わらせるものです。
合意退職には、使用者が申し込んで労働者が承諾する場合と、労働者が申し込んで使用者が承諾する場合があります。同Q&Aは、合意退職には解雇のような制限はないと説明しています。
解雇は労働契約法第16条により、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は無効です。使用者が解雇を避けて退職を勧めても、勧奨に応じるかどうかは労働者が決めます。
解雇の予告と手当は解雇予告と予告手当のガイドで確認できます。
| 種類 | だれの意思表示か | 主な決まり |
|---|---|---|
| 合意退職 | 労働者と使用者の合意 | 解雇のような制限はないが、勧奨の方法には限界がある |
| 辞職 | 労働者の一方的な意思表示 | 期間の定めのない契約は、申入れから2週間で終了する(民法第627条第1項) |
| 解雇 | 使用者の一方的な意思表示 | 客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要(労働契約法第16条) |
勧奨は断れる:強要は違法になる
厚生労働省の「確かめよう労働条件」は、退職勧奨を、労働者自身の意思で退職するよう勧めるものと説明しています。勧めに応じて退職することも、断って勤め続けることも、労働者が自由に選べます。
同サイトによると、退職勧奨の手段や方法は社会通念上相当と認められる範囲に限られ、その範囲を超えて退職を強要する行為は違法です。労働者には、その場で承諾せず、転職の可能性や雇用保険の扱いを考えたうえで選ぶことが勧められています。
裁判例の整理では、下関商業高校事件(最高裁昭和55年7月10日判決)が挙げられています。初回から応じないと表明している教諭らに、多数回かつ長期にわたり執拗に勧奨を続けたことが、許容される限界を越えるとして、損害賠償が命じられました。
同じQ&Aは、使用者が勧奨を強力に行いすぎると、労働者の承諾の意思表示が成立していないと判断されたり、退職の意思表示の取消原因になったりするとしています。ここで挙がる事件は、勧奨の方法の限界を示す例です。自社の対応が違法かどうかは、個別の事情で変わります。
企業が使える公的な相談先は受入れ企業の相談窓口のガイドで確認できます。
- 退職は労働者が自由に断れることを、最初に伝えている
- 同じ内容を多数回、長期にわたって繰り返していない
- 断られたあとも「辞めるまで続ける」といった圧力をかけていない
退職願の撤回と、辞職の2週間
「確かめよう労働条件」によると、労働者の申出が合意退職の申込みか辞職の申入れかで、撤回できるかどうかが変わります。
合意退職の申込みなら、使用者が承諾するまでは撤回できます。辞職の申入れと認められる場合は、意思表示が会社に届いた時点で動き出します。会社が承諾すればその時点で、承諾しなければ2週間後に効力が生じ、承諾後は労働者が一方的に撤回することはできません。
民法第627条第1項は、期間の定めのない雇用では、各当事者がいつでも解約を申し入れることができ、申入れから2週間で雇用が終了すると定めています。厚生労働省のQ&Aは、これより長い予告期間を就業規則で定めても、無効とする裁判例が多いとしています。
ここまでは期間の定めのない契約の話です。有期の特定技能雇用契約は期間の途中の扱いが異なるため、別のガイドで確認してください。文書の題名が「退職願」か「退職届」かだけでなく、記載内容や当事者の言動で判断されるとも、同サイトは説明しています。
有期契約の途中の退職は有期の雇用契約の期間のガイドで確認できます。
| 申出の性質 | 効力が生じる時 | 撤回 |
|---|---|---|
| 合意退職の申込み | 使用者が承諾したとき | 承諾するまでは撤回できる |
| 辞職の申入れ | 会社が承諾したとき、承諾しなければ2週間後 | 会社が承諾すると、一方的には撤回できない |
特定技能で追加して確認する2点
特定技能の運用要領は、受入れ機関の基準のなかで、非自発的に離職させたかどうかを確認します。退職の経緯によっては、入管庁への届出も必要になります。
運用要領によると、非自発的離職の例には、人員整理のための希望退職の募集または退職勧奨が挙げられています。天候不順や自然災害、感染症の影響で、経営上の努力を尽くしても雇用の維持が困難な場合は除かれます。1人でも発生させていれば基準に適合しません。
この基準が見るのは、勧奨を受ける特定技能外国人本人ではなく、外国人が従事する業務と同種の業務に就いていた、フルタイムの日本人労働者、中長期在留者、特別永住者の離職です。運用要領は、労働条件や就業環境の重大な問題があったと労働者が判断したものなども、非自発的離職の例に挙げています。非自発的離職者を出した場合は、受入れ困難に係る届出が必要で、該当するかどうかは、まず地方出入国在留管理局に相談するよう運用要領は求めています。
また、特定技能外国人との雇用契約を終了したときは、入管庁の手続案内により、事由が生じた日から14日以内に契約の終了に係る届出を行います。合意退職でも辞職でも解雇でも、契約が終わる点は同じです。
届出の期限と様式は受入れ困難に係る届出のガイドで確認できます。
| 確認する点 | 内容 | 期限・相談先 |
|---|---|---|
| 非自発的離職の有無 | 同種業務のフルタイムの日本人従業員らに、希望退職の募集や退職勧奨を行っていないか | 該当するかは地方出入国在留管理局に相談 |
| 受入れ困難に係る届出 | 非自発的離職者を発生させた場合に必要 | 運用要領第7章第4節 |
| 特定技能雇用契約の終了に係る届出 | 契約を終了したときの届出 | 事由が生じた日から14日以内 |
よくある質問
退職勧奨を断ったら、解雇されますか?
「確かめよう労働条件」は、退職勧奨に応じるかどうかは労働者が自由に決められるとしています。勧奨を断っても、それだけで契約は終わらず、解雇には労働契約法第16条の制限があります。
どのような退職勧奨が退職強要になりますか?
裁判例の整理では、応じないと表明している人に、多数回かつ長期にわたり執拗に勧奨を続けた事例が、許容される限界を越えるとされました。個別の判断は、都道府県労働局の総合労働相談コーナーなどに相談してください。
退職願を出したあとで撤回できますか?
合意退職の申込みなら、会社が承諾するまでは撤回できます。辞職の申入れと認められる場合は、会社が承諾すると一方的に撤回できなくなります。
退職勧奨をすると、特定技能の受入れに影響しますか?
運用要領は、人員整理のための希望退職の募集や退職勧奨を、非自発的に離職させた例に挙げています。対象や例外は運用要領に書かれており、該当するかどうかは地方出入国在留管理局に相談します。
参照した公的一次資料
- 厚生労働省「確かめよう労働条件」退職、解雇、雇止めなど(確認日:2026年10月17日、次回確認:2027年1月17日)
- 厚生労働省「確かめよう労働条件」裁判例 退職勧奨(確認日:2026年10月17日、次回確認:2027年1月17日)
- 厚生労働省「スタートアップ労働条件」解雇と合意退職・辞職の違い(確認日:2026年10月17日、次回確認:2027年1月17日)
- e-Gov法令検索「民法」(明治29年法律第89号)(確認日:2026年10月17日、次回確認:2027年1月31日)
- e-Gov法令検索「労働契約法」(確認日:2026年10月13日、次回確認:2027年4月13日)
- 出入国在留管理庁「特定技能外国人受入れに関する運用要領」(確認日:2026年8月11日、次回確認:2026年11月11日)
- 出入国在留管理庁「特定技能所属機関による特定技能雇用契約に係る届出」(確認日:2026年10月17日、次回確認:2027年1月17日)