この記事の対象:建設・製造・自動車整備・林業などで振動工具を使う作業に特定技能外国人を配置する企業の安全衛生担当者、現場の責任者

指針の対象は、打撃・研削・締付けなどの8種類の振動工具を使う業務

厚生労働省の「チェーンソー以外の振動工具の取扱い業務に係る振動障害予防対策指針」(平成21年7月10日、基発0710第2号)は、手腕に振動が伝わる工具を使う業務を8種類に分けて対象にしています。

対象は、ピストンによる打撃機構を持つ工具(さく岩機、チッピングハンマー、コンクリートブレーカーなど)、可搬式のエンジンカッターなど内燃機関を内蔵する工具、携帯用の皮はぎ機やサンダーなどの回転工具、携帯用のタイタンパーなど振動体内蔵工具です。

このほか、直径150mmを超えるといしの研削盤(携帯用は金属・石材の研削と切断、卓上用・床上用は鋳物のばりとりと溶接部のはつり)、締付工具(インパクトレンチ)、往復動工具(バイブレーションシャー、ジグソー)も入ります。具体的な工具は指針の別紙1にまとまっています。

チェーンソーはこの指針の対象外で、同日付の基発0710第3号が、チェーンソーを含む振動工具の振動値の測定と表示を、製造者などに求めています。チェーンソーを使う伐木には、労働安全衛生規則第36条第8号の特別教育も必要です。

1日の限界時間:5.0m/s²と200/a²の計算

指針は、工具の振動の強さと1日の使用時間から日振動ばく露量A(8)を求め、日振動ばく露限界値5.0m/s²を超えないようにすることを求めています。

振動の強さは「周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値」a(m/s²)で表します。工具への表示、取扱説明書、製造者のホームページなどで調べます。A(8)は、a×√(T/8)で計算します(Tは1日の振動ばく露時間、単位は時間)。

A(8)が5.0m/s²を超えない場合でも、日振動ばく露対策値2.5m/s²を超えるときは、使用時間の抑制や低振動の工具の選定に努めます。5.0m/s²に対応する1日の限界時間は、200/a²(時間)で求めます。

この限界時間が2時間を超えるときは、当面、1日の振動ばく露時間を2時間以下にします。点検・整備の前後を含めて個々の工具のaを測定・算出している場合は例外ですが、その場合も4時間以下が望ましいとされています。aが分からない工具は、類似の工具のaを参考に限界時間を算出し、2時間を超えるなら、できる限り短い時間にします。

限界時間の計算例(指針の式 200/a² から計算した例。実際の工具のaは表示や取扱説明書で確認する)
aの値(m/s²)限界時間(時間)指針の2時間の扱い
2.5322時間超のため、当面1日2時間以下
582時間超のため、当面1日2時間以下
1022時間ちょうどのため、限界時間どおり
15約0.89(約53分)2時間以下のため、限界時間どおり
200.5(30分)2時間以下のため、限界時間どおり
  • 使う振動工具ごとに、aの値を表示・取扱説明書・製造者のページで調べた
  • 工具ごとに、限界時間200/a²を計算した
  • 限界時間が2時間を超える工具は、当面1日2時間以下にした
  • aが分からない工具は、類似の工具の値で計算し、できる限り短時間にした

書面の作業計画と、連続作業10分・30分の目安

事業者は、作業を始める前に1日の振動ばく露時間を定め、具体的な工具を使う作業の計画を書面などで労働者に示します。

1人が1日に複数の振動工具(チェーンソーを含む)を使うときは、工具ごとのaとばく露時間から、指針の式で合算してA(8)を求めます。振動業務とそれ以外の業務を組み合わせて、振動業務に就かない日を設けるようにも求められています。

同じ作業者が同じ現場で連続して作業する必要があり、日振動ばく露量が5.0m/s²を超える場合に限り、1週間の作業計画を作り、1日8時間・週5日(週40時間)の前提でA(8)を5.0m/s²以下にする1日の許容時間にすることも、やむを得ないとされています。

一連続の振動ばく露時間の最大は、金属や岩石のはつり・かしめ・切断・鋲打・削孔(ピストン式の打撃工具の業務)でおおむね10分以内、そのほかの工具の業務でおおむね30分以内です。どちらも、連続作業のあとに5分以上の休止時間を設けます。ハンドルを強く握る、工具を強く押さえる作業では、連続時間を短くし、休止時間を延ばします。

  1. 工具のaを調べる

    表示や取扱説明書で、工具ごとのaを確かめます。

  2. 限界時間を計算する

    200/a²で限界時間を出し、2時間を超えるなら当面2時間以下にします。

  3. 計画を書面で示す

    作業前に、工具ごとの1日の使用時間を決めて、作業者に示します。

  4. 連続作業を区切る

    打撃工具は約10分、ほかの工具は約30分ごとに、5分以上休みます。

工具の選定・点検・保護具・健康診断・教育も指針に含まれる

指針は13項目で構成され、使用時間の管理のほかに、工具の選定、操作方法、点検、休憩設備、保護具、健康診断、教育までを定めています。

工具は、振動が小さく、ハンドルだけを持って作業でき、軽量で、マフラーが付いたものを選びます。操作ではハンドル以外を持たない、強く握りすぎない、強く押さないことが挙げられています。重量を手で支える工具は、アームや支持台、スプリングバランサーなどで支えます。

振動工具を持つ事業場では「振動工具管理責任者」を選任し、点検・整備の状況を定期的に確認して記録します。保護具として、軟質の厚い防振手袋を支給して使わせます。

騒音が90dB(A)以上の作業では、耳栓または耳覆いも支給して使わせます。作業の前後には、手・腕・肩・腰の体操を行います。

健康診断は、昭和49年基発第45号、昭和50年基発第609号・第610号に基づいて実施し、適切な健康管理を行うとされています。新たに振動業務に就かせるときと、扱う工具の種類を変えたときは、振動が人体に与える影響や、A(8)に基づく限界時間などの教育を行います。

外国人かどうかで区別する記述は指針にありません。言語に合わせた説明の工夫は、雇入れ時の教育のガイドが参考になります。

雇入れ時の教育の進め方は、雇入れ時の安全衛生教育と外国人への実施方法で確認できます。

  • 振動工具管理責任者を選任し、点検・整備を記録している
  • 防振手袋を支給し、使わせている
  • 90dB(A)以上の作業で、耳栓または耳覆いを支給している
  • 新たに振動業務に就く人と、工具の種類が変わる人に教育を行っている
  • 健康診断を、指針が挙げる通達に沿って実施している

刈払機・チェーンソーの教育を定める別の通達

振動工具に関する教育は、工具ごとに別の通達で定められています。厚生労働省の平成21年の事務連絡は、その関係を示しています。

事務連絡は、チェーンソー以外の振動工具の取扱作業者向けの昭和58年基発第258号、造林作業の指揮者向けの昭和60年基発第141号、刈払機の取扱作業者向けの基発第66号などの教育に、平成21年の指針の内容を反映するよう求めています。

刈払機を使う草刈りは、規則第36条の特別教育の一覧にある業務ではなく、基発第66号の教育の対象です。刈払機の教育の時間や科目は、別のガイドで整理しています。

よくある質問

日振動ばく露量A(8)とは何ですか?

1日の振動ばく露を、8時間に換算した振動の強さです。指針は、工具のaと1日の使用時間Tから、a×√(T/8)で求めます。5.0m/s²を超えないようにし、2.5m/s²を超える場合も対策に努めるよう求めています。

1日に何時間まで振動工具を使えますか?

5.0m/s²に対応する限界時間は200/a²(時間)で、これが2時間を超えるときは、当面1日2時間以下にします。たとえばaが10m/s²なら限界時間は2時間、20m/s²なら30分です。

連続して使ってもよい時間はありますか?

金属や岩石のはつり・かしめ・切断・鋲打・削孔の業務は一連続でおおむね10分以内、そのほかの工具の業務はおおむね30分以内とし、そのあとに5分以上休みます。

チェーンソーや刈払機にも同じ指針が使えますか?

この指針の対象はチェーンソー以外の振動工具です。チェーンソーの値の測定と表示は基発0710第3号が定め、伐木には規則第36条第8号の特別教育が必要です。刈払機の教育は基発第66号です。なお、エンジン式のブッシュクリーナーは指針の別紙1に含まれます。

参照した公的一次資料

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次に確認すること

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