この記事の対象:特定技能外国人の賃金・教育訓練・福利厚生を点検する受入れ企業の担当者、登録支援機関の担当者
差別の禁止は、労働基準法と基準省令の2か所にある
国籍や外国人であることを理由とする待遇の差別は、労働基準法第3条と、特定技能雇用契約の基準を定めた省令の第1条第1項第4号の、2つの規定が禁じています。
2つの規定は、守る対象と違反したときの扱いが異なります。労働基準法第3条には罰則があり、基準省令の規定は、特定技能雇用契約が満たすべき基準の一つです。
下の表は、e-Gov法令検索の条文から、2つの規定を並べたものです。
| 項目 | 労働基準法第3条 | 基準省令第1条第1項第4号 |
|---|---|---|
| 理由とされる事柄 | 国籍、信条または社会的身分 | 外国人であること |
| 対象になる事項 | 賃金、労働時間その他の労働条件 | 報酬の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇 |
| 禁じられる行為 | 差別的取扱いをすること | 差別的な取扱いをしていないこと(基準として求められる) |
| 違反したときの定め | 第119条第1号により、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 | 特定技能雇用契約の基準に適合しているかが、法務省令の基準として問われる |
労働基準法第3条:国籍を理由とする労働条件の差別
第3条は、使用者が、労働者の国籍、信条または社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならないと定めています。
条文が理由に挙げているのは、国籍、信条、社会的身分の3つです。特定技能外国人の場合は、国籍が関わります。
対象は、賃金、労働時間、その他の労働条件です。条文は、この3つの外に何を含めるかまでは書いていません。個別の取扱いが当たるかどうかは、労働基準監督署などに確認してください。
違反した場合の罰則は、第119条第1号により、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。
基準省令第1条第1項第4号:報酬・教育訓練・福利厚生の差別
基準省令の第4号は、外国人であることを理由として、報酬の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的な取扱いをしていないことを求めています。
省令の第1条は、特定技能雇用契約の基準のうち雇用関係に関する事項を、労働基準法その他の労働に関する法令の規定に適合していることのほか、次のとおりとすると定めています。第4号は、その「次のとおり」の一つです。
労働基準法第3条が賃金、労働時間その他の労働条件を挙げているのに対し、第4号は、教育訓練の実施と福利厚生施設の利用を、条文の文言として挙げています。
同じ第1条の第3号は、外国人に対する報酬の額が日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であることを求めています。報酬の比較の方法は、別のガイドで扱っています。
日本人と同等以上の報酬の比べ方は、特定技能の報酬は日本人と同等以上で確認できます。
派遣と、違反した契約の部分に関わる規定
差別の禁止に関連する規定は、ほかに3つあります。派遣中の労働者への適用を定める労働者派遣法第44条、基準に達しない労働条件を無効とする労働基準法第13条、外国人の雇用管理の改善に努めることを求める労働施策総合推進法第7条です。
労働者派遣法第44条第1項は、労働基準法の第3条を、派遣先の事業にも適用すると定めています。派遣形態の特定技能外国人については、派遣元だけでなく派遣先も、国籍による差別の禁止を守る必要があります。
労働基準法第13条は、この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とし、無効になった部分は、この法律で定める基準によると定めています。
労働施策総合推進法の第7条は、事業主に、雇用する外国人がその有する能力を有効に発揮できるよう、職業に適応することを容易にするための措置の実施その他の雇用管理の改善に努めることを求めています。努力義務で、第3条や基準省令とは別の規定です。
派遣での責任分担は、労働者派遣での労働基準法の責任分担(派遣法第44条)で確認できます。
受入れ企業が点検する項目
条文に挙がっている事項ごとに、日本人の従業員の取扱いと外国人の従業員の取扱いに、国籍だけを理由にした違いがないかを確かめます。
点検は、条文の事項を確認するための自己点検です。個別の取扱いが違反に当たるかどうかの判断や、是正の方法は、労働基準監督署や社会保険労務士などの専門家に確認してください。
違いがある場合も、業務内容や経験、資格などによる区別と、国籍による区別は別の問題です。違いの理由を書面に残しておくと、確認がしやすくなります。
- 賃金の決定方法と金額に、国籍を理由とした違いがないか
- 労働時間、休憩、休日の取扱いに、国籍による違いがないか
- 社内の教育訓練を、外国人の従業員にも日本人の従業員と同じように実施しているか
- 食堂、休憩室など福利厚生施設の利用に、外国人であることを理由とした制限がないか
- 日本人の従業員と取扱いが異なる項目の理由を、業務内容など国籍以外の事情で説明できるか
よくある質問
労働基準法第3条は、どのような差別を禁じていますか?
使用者が、労働者の国籍、信条または社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をすることです。違反には、第119条第1号により6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が定められています。
基準省令の差別の禁止は、労働基準法第3条と何が違いますか?
基準省令の第1条第1項第4号は、外国人であることを理由として、報酬の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的な取扱いをしていないことを求めています。教育訓練と福利厚生施設の利用が、条文の文言として挙がっている点が異なります。
派遣先で働く特定技能外国人にも、第3条は適用されますか?
労働者派遣法第44条第1項により、労働基準法の第3条は派遣先の事業にも適用されます。派遣先は、雇用主でなくても、国籍による差別の禁止を守る必要があります。
日本人と違う取扱いは、すべて違反ですか?
条文が禁じているのは、国籍や外国人であることを理由にした差別的取扱いです。個別の取扱いが当たるかどうかは事実関係で決まるため、労働基準監督署や専門家に確認してください。
参照した公的一次資料
- e-Gov法令検索「労働基準法」(昭和22年法律第49号)(確認日:2026年10月8日、次回確認:2027年1月8日)
- e-Gov法令検索「特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令」(確認日:2026年10月6日、次回確認:2026年12月6日)
- e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(第31条・第33条・第34条・第36条)(確認日:2026年10月13日、次回確認:2027年4月13日)
- e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(確認日:2026年10月21日、次回確認:2027年1月21日)