この記事の対象:農業・漁業分野で派遣形態の特定技能外国人を受け入れる派遣先、派遣元の担当者
労働者派遣法第44条は、労働基準法の適用を派遣元と派遣先で分ける特例
派遣中の労働者の雇用主は派遣元の事業主ですが、実際に指揮命令をするのは派遣先です。労働者派遣法第44条は、労働基準法のどの規定を誰が負うかを、この特例で定めています。
特定技能で派遣形態が認められるのは、出入国在留管理庁の分野別のページに派遣に関する要件が載っている農業分野と漁業分野です。分野ごとの条件は、別のガイドで扱っています。
条文の構成は、第1項が派遣元と派遣先の両方に適用する規定、第2項が派遣先のみに適用する規定、第3項と第4項が派遣元の義務と罰則です。第5項は読み替えなどの特例、第6項は命令への委任で、このガイドでは扱いません。下の表は、第1項から第4項の区分を並べたものです。
派遣が認められる分野と条件は、特定技能は分野によって派遣できる?で確認できます。
| 項 | 内容 | 対象になる労働基準法の規定 |
|---|---|---|
| 第1項 | 派遣先の事業も、派遣中の労働者を使用する事業とみなして適用する(罰則を含む) | 第3条、第5条、第69条 |
| 第2項 | 派遣先の事業のみを、派遣中の労働者を使用する事業とみなして適用する(罰則を含む) | 第7条、第32条、第33条〜第35条、第36条第1項・第6項、第40条、第41条、第60条〜第63条、第64条の2、第64条の3、第66条〜第68条ほか |
| 第3項 | 派遣元の使用者は、派遣先が第2項の規定に抵触することになる労働者派遣をしてはならない | 第32条、第34条、第35条、第36条第6項、第40条、第61条〜第63条ほか |
| 第4項 | 第3項に違反し、かつ派遣先が実際にその規定に抵触することになったときは、派遣元の使用者はその規定に違反したものとみなして罰則を適用する | 第118条、第119条、第121条 |
第1項:第3条・第5条・第69条は派遣先にも適用
第44条第1項は、労働基準法の第3条、第5条、第69条を、派遣先の事業にも適用すると定めています。罰則の規定も含みます。
第3条は国籍、信条または社会的身分を理由とする労働条件の差別的取扱いの禁止、第5条は暴行、脅迫、監禁などの手段による労働の強制の禁止です。第69条は、技能の習得を目的とする者であることを理由として、労働者を酷使してはならないという規定です。
技能の習得を目的とする労働者を、家事その他、技能の習得に関係のない作業に従事させてはならないことも、第69条第2項に書かれています。
これらは派遣元と派遣先の両方が負う規定です。派遣先は、雇用主ではなくても、強制労働や国籍による差別の禁止を自分の責任として守る必要があります。
第5条と第6条の条文と罰則は、強制労働と中間搾取の禁止(労働基準法第5条・第6条)と罰則で確認できます。
第2項:労働時間・休憩・休日などは派遣先のみに適用される
第44条第2項は、労働時間、休憩、休日をはじめとする規定について、派遣先の事業のみを、派遣中の労働者を使用する事業とみなして適用すると定めています。
対象に挙がっているのは、第7条(公民権行使の保障)、第32条(労働時間)、第34条(休憩)、第35条(休日)などです。派遣中の労働者の1日の労働時間や休憩、休日の管理は、派遣先の事業について適用されます。
第36条第1項の時間外労働の協定については、読み替えが置かれています。条文は、「当該事業場に」を「派遣元の使用者が、当該派遣元の事業の事業場に」と読み替えています。
特定技能外国人が派遣中の労働者であっても、条文上の扱いは日本人の派遣中の労働者と同じです。特定技能に限った別の定めは、この条にはありません。
第3項・第4項:派遣元の派遣禁止とみなし罰則
第44条第3項は、派遣先が労働者派遣契約に定める派遣就業の条件どおりに労働させると、労働基準法令の規定に抵触することになるときは、派遣元の使用者は、その労働者派遣をしてはならないと定めています。
対象になる規定は、第32条、第34条、第35条、第36条第6項、第40条、第61条から第63条まで、第64条の2、第64条の3、第141条第3項、およびこれらに基づく命令です。
派遣元の使用者がこれに違反し、派遣先が実際に労働基準法令の規定に抵触することになったときは、第4項により、派遣元の使用者は、その規定に違反したものとみなされます。そのうえで、労働基準法の第118条、第119条、第121条が適用されます。
条文が基準にしているのは、労働者派遣契約に定める派遣就業の条件です。派遣契約の条件が、労働時間、休憩、休日などの規定に収まっているかが、派遣元の使用者の側でも問われます。
賃金・年次有給休暇の条は第1項・第2項の対象外
第44条第1項と第2項に挙がっている労働基準法の条は、上の表のとおりです。労働条件の明示(第15条)、賃金の支払(第24条)、割増賃金(第37条)、年次有給休暇(第39条)は、この2つの項の対象に挙がっていません。
第44条は、挙がっていない条を派遣先に振り分けていません。派遣中の労働者は、派遣先の事業主には雇用されておらず、第1項の冒頭が示すとおり、別の事業主(派遣元)に雇用されています。
派遣形態の特定技能外国人の賃金や休暇の扱いは、個別の派遣契約と就業規則に関わります。このガイドは条文の構成の説明で、個別の判断は含みません。労働基準監督署や社会保険労務士などに確認してください。
- 派遣契約に定める労働時間、休憩、休日が、第32条、第34条、第35条の規定に収まっているか
- 時間外労働の協定を、派遣元の使用者が結んでいるか
- 強制労働や国籍による差別にあたる運用が、派遣先に無いか
- 賃金、年次有給休暇などの担当を、派遣元と派遣先で書面に残しているか(確認項目の例)
よくある質問
派遣先は、労働基準法の責任を負わないのですか?
負います。労働者派遣法第44条により、派遣先の事業も、第3条、第5条、第69条については派遣中の労働者を使用する事業とみなされます。労働時間、休憩、休日などは、派遣先の事業のみが対象です。
派遣中の労働者の時間外労働の協定は、誰が結びますか?
第44条第2項の読み替えにより、第36条第1項の「当該事業場に」は「派遣元の使用者が、当該派遣元の事業の事業場に」とされています。協定は派遣元の事業場について、派遣元の使用者が結ぶ形になります。
派遣元が労働基準法の罰則を受けることはありますか?
第44条第3項に違反した派遣元の使用者は、第4項により、その規定に違反したものとみなされ、労働基準法の第118条、第119条、第121条が適用されます。
特定技能外国人にだけ適用される別の定めはありますか?
第44条には、特定技能外国人に限った別の定めはありません。特定技能で派遣形態が認められる分野は、農業分野と漁業分野で、それぞれ出入国在留管理庁のページに要件が載っています。
参照した公的一次資料
- e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(確認日:2026年10月21日、次回確認:2027年1月21日)
- e-Gov法令検索「労働基準法」(昭和22年法律第49号)(確認日:2026年10月8日、次回確認:2027年1月8日)
- 出入国在留管理庁「農業分野」(確認日:2026年8月4日、次回確認:2026年11月4日)
- 出入国在留管理庁「漁業分野」(確認日:2026年8月4日、次回確認:2026年11月4日)