この記事の対象:特定技能外国人の健康診断やストレスチェックの結果を管理する企業の人事・安全衛生担当者、登録支援機関の担当者

法律の定めと指針:必要な範囲で集め、目的の範囲で使い、適正に管理する

労働者の健康情報の取扱いは、労働安全衛生法第104条が基本のルールを置き、「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」(平成30年9月7日公示、令和4年3月31日改正)が事業者の具体的な措置を示しています。

第104条第1項は、事業者が労働者の心身の状態に関する情報を収集し、保管し、使用するときは、労働者の健康の確保に必要な範囲内で収集し、その収集の目的の範囲内で保管・使用するよう定めています。本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合は、この限りではありません。

第2項は、事業者に、これらの情報を適正に管理するために必要な措置を講じる義務を置いています。第3項は、この措置を適切に実施するための指針を厚生労働大臣が公表すると定めており、その指針が「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」です。

指針は平成30年9月7日に公示され、令和4年3月31日に改正されています。指針は、健康診断などで得た心身の状態の情報は、そのほとんどが個人情報保護法の「要配慮個人情報」に当たる機微な情報だと位置づけています。

別に、第105条は、健康診断、面接指導、ストレスチェックの実施の事務に従事した人に、その実施に関して知り得た労働者の秘密を漏らしてはならないと定めています。

情報は3つに分かれ、同意の要否と扱い方が違う

指針は、心身の状態の情報を、法令上の根拠と本人同意の要否で3つに分類しています。

1つ目は、労働安全衛生法令に基づき、事業者が直接取り扱うこととされている情報です。健康診断を受けたかどうか、長時間労働者が面接指導を申し出たかどうか、健康診断の事後措置について医師から聴いた意見などが例に挙がっています。指針は、取扱いの目的の達成に必要な範囲で、事業者等が取り扱う必要があるとしています。

2つ目は、法令に基づき、本人の同意がなくても収集できるが、事業場ごとの取扱規程で社内の取扱いを定めて運用することが適当な情報です。法定項目の健康診断の結果、面接指導の結果などが当たります。取扱いの目的や方法を労働者が十分に認識できるよう、丁寧な説明をして納得性を高める措置を講じたうえで運用する必要があるとされています。

3つ目は、法令に規定がないため、あらかじめ本人の同意を得ることが必要な情報です。法定外項目の健康診断の結果、保健指導の結果、健康相談の結果、がん検診の結果、通院状況などの情報が例に挙がっています。個人情報保護法に基づく適切な取扱いを確保するため、取扱規程に沿った対応が必要です。

心身の状態の情報の3分類(指針の整理)
分類例取扱いの原則
1 法令に基づき事業者が必ず取り扱う情報健康診断の受診・未受診、面接指導の申出の有無、医師から聴取した意見取扱いの目的の達成に必要な範囲で、事業者等が取り扱う
2 法令に基づき同意なしで収集できる情報法定項目の健康診断の結果、面接指導の結果必要な範囲で取り扱う。取扱者の制限や加工など社内の取扱いを取扱規程に定め、労働者に丁寧に説明する
3 法令に規定がなく、事前の本人同意が必要な情報法定外項目の健康診断の結果、保健指導・健康相談・がん検診の結果、通院状況個人情報保護法に基づき、取扱規程に沿って対応する

取扱規程:定める9項目と、衛生委員会などでの決め方

指針は、事業場ごとに取扱規程を定めて、労働者と共有するよう求めています。

取扱規程に定める事項として、指針は9つを挙げています。取り扱う目的と方法、取り扱う人とその権限・情報の範囲、目的の通知方法と本人同意の取得方法、適正管理の方法、開示・訂正・使用停止の方法、第三者提供の方法、事業承継や組織変更に伴う引継ぎ、苦情の処理、規程の周知方法です。

策定にあたっては、衛生委員会または安全衛生委員会を活用して労使の関与のもとで検討し、策定したものを労働者と共有します。共有の方法は、就業規則その他の社内規程等で定め、作業場の見やすい場所への掲示や備え付け、イントラネットへの掲載などが考えられるとされています。

衛生委員会等を設置する義務がない常時50人未満の労働者を使用する事業場では、必要に応じて労働安全衛生規則第23条の2に定める関係労働者の意見を聴く機会を活用するなどして、労働者の意見を聴いたうえで策定します。検討・策定の単位は、事業場単位ではなく企業単位とすることも考えられます。

策定したあとは、情報を取り扱う人に教育し、運用状況を確認して見直します。運用が適切に行われていないことが明らかになったときは、労働者にその旨を説明し、再発防止に取り組むこととされています。

不利益な取扱いの禁止:同意しないこと、結果の内容を理由にしない

指針は、健康情報の取扱いを理由とする不利益な取扱いを、原則として行ってはならないとしています。

事業者は、心身の状態の情報の取扱いに労働者が同意しないことを理由として、また、健康確保措置と民事上の安全配慮義務の履行に必要な範囲を超えて、不利益な取扱いを行ってはならないとされています。

一般的に合理的とはいえない例として、指針は3つを挙げています。健康診断後に医師の意見を聴くなど法令上求められる手順に従わない措置、聴取した医師の意見と著しく異なるなど必要と認められる範囲を超える就業上の措置、そして、同意しないことや情報の内容を理由とした解雇、有期雇用の契約の不更新、退職勧奨、不当な動機・目的による配置転換や職位の変更などです。

指針は、不利益な取扱いの理由がこれらに挙げられたもの以外であっても、実質的に該当する場合は行ってはならないとも述べています。ストレスチェックや健康診断の結果を人事の判断材料にする前に、この点を確認します。

  • 健康診断・面接指導・ストレスチェックの結果を、どの分類の情報として扱うか整理したか
  • 取扱規程を、衛生委員会等(50人未満の事業場は労働者の意見を聴く機会)で検討して定めたか
  • 取り扱う人と範囲を限定し、本人への説明と周知の方法を決めたか
  • 法定外項目の結果や通院状況は、事前の本人同意を取ってから集めているか
  • 結果や同意の有無を理由に、解雇・不更新・退職勧奨・配置転換を行っていないか

よくある質問

健康診断の結果は、本人の同意がないと会社は受け取れませんか?

法定項目の健康診断の結果は、指針の分類では、法令に基づき本人の同意を得ずに収集できる情報(分類2)にあたります。ただし、取扱いの目的や方法は労働者に周知し、取扱規程に沿って取り扱います。法定外項目の結果は、あらかじめ本人の同意が必要な分類3にあたります。

取扱規程は、必ず作らなければなりませんか?

法第104条第1項・第2項は、必要な範囲での収集と目的の範囲での保管・使用、適正管理の措置を事業者に求めています。取扱規程の策定は、第3項に基づく指針が事業者に求めている措置です。指針に示す内容とは異なる取扱いを行うことも可能ですが、その場合は、取扱い方法と採用する理由を労働者に説明する必要があるとされています。

従業員が50人未満でも、取扱規程は必要ですか?

指針は、衛生委員会等を設置する義務がない常時50人未満の事業場でも、労働安全衛生規則第23条の2に定める関係労働者の意見を聴く機会を活用するなどして労働者の意見を聴き、取扱規程を策定して共有することが必要だとしています。

個別の取扱いの可否は、このページで判断できますか?

このページは、法律と厚生労働省の指針の整理です。個別の事案の判断や、労務上の助言はしていません。実際の取扱いは、産業医や関係機関、所轄の労働基準監督署などにご確認ください。

参照した公的一次資料

試算に使う一次資料の一覧と確認状況を見る

次に確認すること

この記事の条件を引き継いで、未確認費目を整理する