この記事の対象:特定技能外国人に作業服・安全靴・ヘルメット・制服などを支給する受入れ企業の人事・総務担当者、雇用条件書の費用欄を説明する登録支援機関の担当者

費用を3つに分けて考える

作業服や保護具の費用は、法令が事業者に備えることを求めるもの、会社と本人の契約で決まるもの、給与から差し引くには手続が要るものの3つに分けると整理できます。

作業着、安全靴、ヘルメット、手袋、耳栓、制服などは、ひとまとめに「作業用品」と呼ばれがちです。しかし、法令の根拠は品目と作業内容によって変わります。

この記事は、法令の条文を一次資料として、どの費用にどの決まりが関わるかを整理するものです。個々の会社で本人に負担させてよいかどうかや、労務の個別の助言は扱いません。判断が必要なときは、労働基準監督署や社会保険労務士などの専門家に確認してください。

費用の3つの分け方と、関わる法令
区分例関わる決まり
事業者が備えることを求められるもの有害な業務での保護衣・保護眼鏡・呼吸用保護具、強い騒音の場所の耳栓労働安全衛生規則の保護具の条文(備える義務)
会社と本人の契約・就業規則で決まるもの通常の作業服、制服、安全靴の貸与と買取雇用契約・就業規則(負担させる定めは就業規則に書く)
給与から差し引くには手続が要るもの作業服代・制服代の毎月の控除労働基準法の賃金全額払いの例外(書面の労使協定)

労働安全衛生規則:保護具を備える義務がある業務

労働安全衛生規則は、有害な業務などで、事業者が労働者に使わせるための保護具を備えなければならないと定めています。

暑さ・寒さが著しい場所、有害な物を扱う業務、有害な光線を受ける業務、粉じんが出る場所、病原体による汚染のおそれが著しい業務などでは、事業者は、労働者に使用させるために、保護衣・保護眼鏡・呼吸用保護具などの適切な保護具を備えなければなりません。皮膚や眼に障害を与える物を扱う業務では、不浸透性の保護衣、保護手袋、履物、保護眼鏡などが挙げられています。

強烈な騒音を発する場所では、耳栓その他の保護具を備える義務があります。保護具は、同時に就業する労働者の人数と同数以上を備え、常時有効かつ清潔に保つことも求められています。保護具の使用で疾病が感染するおそれがあるときは、各人専用のものを備えるか、感染を予防する措置を講じます。

労働者側にも、事業者から必要な保護具の使用を命じられたときは、その保護具を使う義務があります。これらの決まりは、日本人の労働者も特定技能外国人も同じで、外国人だけに別の扱いをするものではありません。

条文は「備えなければならない」と書いていますが、その費用を最終的に誰が負担するかまでは、これらの条文からは読み取れません。通常の作業服や安全靴がこの条文の対象かどうかも、業務の内容によります。

  • 自社の作業が、暑熱・寒冷・有害物・粉じん・騒音などの業務に当たるかを確かめる
  • 当たる場合は、保護具を就業する人数分、清潔に保って備える
  • 共用すると感染のおそれがある保護具は、各人専用にするか、消毒などの予防措置を決める
  • 保護具の使い方と使う必要性を、本人が分かる言語で伝える

労働基準法:給与から作業服代を差し引く場合

賃金は全額を支払うのが原則で、一部を差し引くには、法令の定めか、労働者の過半数を代表する者などとの書面の協定が必要です。

労働基準法は、賃金を通貨で、直接労働者に、その全額を支払うことを原則としています。賃金の一部を控除して支払えるのは、法令に別段の定めがある場合か、事業場の労働者の過半数で組織する労働組合(無ければ労働者の過半数を代表する者)との書面による協定がある場合です。

このため、作業服代や制服代を毎月の給与から差し引く運用は、労使の書面の協定がなければ、そのままでは行えません。協定は、特定技能外国人本人との合意とは別に、事業場の単位で必要になるものです。

特定技能の入管の基準にも、別の観点の決まりがあります。運用要領は、食費・居住費など「名目のいかんを問わず」本人が定期に負担する費用について、本人が内容を十分に理解して合意していること、額が実費に相当する額などの適正な額であること、費用の明細書などの書面が示されることを求めています。作業服代を毎月の給与から差し引く形にする場合は、この基準との関係も含めて、出入国在留管理庁や専門家に確認してください。

食費・居住費の扱いは、別のガイドで詳しく整理しています。

食費・居住費・水道光熱費の徴収の決まりは食費・居住費の徴収のガイドで確認できます。

  • 給与から差し引く費目と額を、書面の労使協定に入れてあるか確かめる
  • 雇用条件書に、控除する費用の名目と額を書く
  • 本人が理解できる言語で、控除の理由と額を説明する
  • 控除の明細が分かる賃金明細を渡す

就業規則:作業用品を本人に負担させる定め

常時10人以上の労働者を使う会社は就業規則を作り、作業用品などを本人に負担させる定めをするときは、その内容を書かなければなりません。

労働基準法は、常時10人以上の労働者を使う使用者に、就業規則を作成して行政官庁に届け出ることを求めています。就業規則に書く事項の1つに、労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合の、これに関する事項があります。

つまり、作業服や安全靴を本人の負担にする会社は、その旨を就業規則に書いておく必要があります。10人未満の事業場に就業規則の作成義務はありませんが、負担の有無と金額を、雇用条件書や契約書で本人に分かるように示しておくことが、後の行き違いを防ぎます。

支給するだけの場合、貸与して退職時に返してもらう場合、買い取ってもらう場合では、費用の扱いが変わります。どの形にするかを、入社前に書面で決めておくと確認しやすくなります。

  • 作業服・安全靴・制服が、支給・貸与・買取のどれかを決める
  • 本人に負担させる場合は、就業規則(10人以上の事業場)か契約書に、その定めと額を書く
  • 退職時の返却や買取の扱いを、入社前に本人へ伝える

費用の見込みに入れるときの考え方

シミュレーターの試算では、作業服・保護具は、自社が負担する前提かどうかを先に決めてから費用に入れます。

作業服や保護具の代金は、業務や品目によって会社ごとに変わります。この記事では金額を示しません。自社の購入見積りや、既存の従業員に支給している実績の額を、費用の根拠にしてください。

保護具の備え付けが法令で求められる業務がある場合は、人数分の購入と、清潔に保つための維持の費用を、本人負担にできるかどうかとは別に、会社の費用として見込んでおくと、後から不足しません。

受入れ全体の費用の見方は受入れ費用の内訳のガイドで確認できます。

よくある質問

特定技能外国人の作業服代は、会社が必ず負担しなければなりませんか?

通常の作業服について、会社が必ず負担すると定めた条文は、この記事で確認した労働安全衛生規則と労働基準法にはありません。ただし、有害な業務などでは、保護具を備える義務が事業者にあります。本人に負担させる場合は、就業規則(10人以上の事業場)や契約書で定めておく必要があります。

作業服代を毎月の給与から引いてもよいですか?

労働基準法は賃金を全額払うのを原則とし、一部を引くには、法令の定めか、労働者の過半数代表などとの書面の協定が必要と定めています。特定技能の運用要領も、定期に本人が負担する費用には本人の理解と合意、適正な額、明細の書面を求めています。具体的な運用は、専門家や関係機関に確認してください。

保護具は、何人分用意すればよいですか?

労働安全衛生規則は、同時に就業する労働者の人数と同数以上を備え、常時有効かつ清潔に保つことを求めています。対象は、暑熱や有害物などの特定の業務です。

保護具を本人が使わないときはどうなりますか?

労働安全衛生規則は、事業者から必要な保護具の使用を命じられた労働者に、その保護具を使う義務を定めています。使い方や使う必要性は、本人が理解できる言語で伝えてください。

参照した公的一次資料

試算に使う一次資料の一覧と確認状況を見る

次に確認すること

この記事の条件を引き継いで、未確認費目を整理する