この記事の対象:特定技能外国人から給料の前払いを求められた受入れ企業の人事・経理担当者、登録支援機関の担当者
第25条の定め:支払期日前に、働いた分の賃金を支払う義務
労働基準法第25条は、労働者が非常の場合の費用に充てるために請求したときは、支払期日前でも、既往の労働に対する賃金を支払わなければならないと定めています。
条文の言葉でいう「既往の労働」は、請求の時点までにすでに働いた分のことです。まだ働いていない先の期間の賃金を前もって渡す規定ではありません。
この義務は、労働者からの請求があって初めて生じます。請求の理由が条文の「非常の場合」に当たるかどうかが、支払う義務の有無を分けます。
第25条の違反には、第120条第1号により30万円以下の罰金が定められています。条文には国籍による区別がなく、特定技能外国人にも日本人と同じく適用されます。
賃金の支払方法のうち、デジタル払いの労使協定・同意・残高上限は、賃金のデジタル払いのガイドで確認できます。
「非常の場合」は施行規則第9条の3つ
第25条の非常の場合は、労働基準法施行規則第9条が3つの場合を挙げています。
第25条の本文は、労働者本人が出産、疾病、災害にあった場合の費用を挙げています。施行規則第9条は、これに加えて、「労働者の収入によって生計を維持する者」、つまり本人の収入で暮らしている家族の出産、疾病、災害や、結婚、死亡を挙げています。
三つ目は、本人または生計を維持している家族が、やむを得ない事由により1週間以上にわたって帰郷する場合です。特定技能外国人の一時帰国の費用が、この場合に当たるかどうかが問題になります。
条文には、家族が日本に住んでいる場合に限るという書き方はありません。ただし、個別の事情がこの3つに当たるかどうかは、所轄の労働基準監督署に確認してください。当サイトは個別の事案を判定しません。
一時帰国中の休暇の扱いは、一時帰国のガイドで確認できます。
| 場合 | 対象の人 | 事由 |
|---|---|---|
| 第1号 | 労働者の収入によって生計を維持する者(本人の出産・疾病・災害は第25条本文に列挙) | 出産し、疾病にかかり、または災害をうけた |
| 第2号 | 労働者本人、またはその収入によって生計を維持する者 | 結婚し、または死亡した |
| 第3号 | 労働者本人、またはその収入によって生計を維持する者 | やむを得ない事由により1週間以上にわたって帰郷する |
賃金とは別に、受入れの初年度にかかる費用の合計を確かめたいときは、初年度費用シミュレーターで合計を概算できます。
前借金・退職時の支払いとは別の規定
給料に関する規定は、支払いのきっかけと範囲がそれぞれ別の条文で決まっています。
第24条は、賃金を通貨で、直接労働者に、その全額を、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払う原則を定めています。第25条は、この原則の例外として、非常の場合に限って支払期日を早める規定です。
第17条は、前借金その他労働することを条件とする前貸しの債権と賃金を相殺してはならないと定めています。第25条の支払いは、すでに働いた分の賃金を早く渡すものなので、お金を貸す前借金とは仕組みが異なります。
退職や死亡の場合は第23条があり、権利者から請求があれば、7日以内に賃金を支払い、積立金や保証金などの労働者の権利に属する金品を返還しなければなりません。
退職時の賃金や金品の返還は、賃金支払いの原則のガイドと合わせて確認してください。
| 条文 | 場面 | 支払い・返還の定め |
|---|---|---|
| 第24条 | 通常の給料日 | 毎月1回以上、一定の期日を定めて、通貨で直接その全額を支払う |
| 第25条 | 非常の場合の請求 | 支払期日前でも、既往の労働に対する賃金を支払う |
| 第23条 | 退職・死亡の場合の請求 | 請求から7日以内に賃金を支払い、労働者の権利に属する金品を返還する |
| 第17条 | 前借金 | 前借金その他労働を条件とする前貸しの債権と賃金を相殺してはならない |
請求を受けたときの確認事項
請求を受けたら、理由が第9条のどれに当たるか、働いた分の賃金がいくらかを確認して、支払いを判断します。
請求の理由が条文の3つに当たるかどうかは、本人から事情を聞き、必要に応じて書類で確認します。判断に迷う場合は、所轄の労働基準監督署に相談できます。
支払う額は、請求の時点までに働いた分の賃金が上限になります。賃金から控除する項目がある場合は、第24条のとおり、法令に定めがあるか、労働者の過半数を代表する者などとの書面による協定がある範囲に限られます。
- 請求の理由が、施行規則第9条の3つのどれに当たるか聞き取ったか
- 請求の時点までに働いた分の賃金の額を計算したか
- 前借金の貸付けと、賃金の前払いを書類上で分けたか
- 控除する項目が、書面による協定の範囲内か確認したか
- 判断に迷う事情を労働基準監督署に確認したか
よくある質問
給料日の前に、全額を前払いする義務はありますか?
ありません。第25条で支払う義務があるのは、非常の場合の費用に充てるための請求があったときの、既往の労働に対する賃金、つまり請求の時点までに働いた分です。
一時帰国の航空券代のために前払いを求められたら、断れませんか?
施行規則第9条第3号は、やむを得ない事由により1週間以上にわたって帰郷する場合を非常の場合に挙げています。個別の事情が当たるかどうかは、労働基準監督署に確認してください。
非常時払に応じないと罰則がありますか?
第25条の違反は、第120条第1号により30万円以下の罰金が定められています。
前借金とは何が違いますか?
第25条の支払いは、すでに働いた分の賃金を支払期日前に払うものです。前借金は労働することを条件とする前貸しで、第17条により賃金との相殺が禁止されています。
参照した公的一次資料
- e-Gov法令検索「労働基準法」(昭和22年法律第49号)(確認日:2026年10月8日、次回確認:2027年1月8日)
- e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」第9条(法第25条に規定する非常の場合)(確認日:2026年10月18日、次回確認:2027年2月10日)
- 厚生労働省Q&A「賃金の支払方法に関する法律上の定めについて教えて下さい。」(確認日:2026年10月13日、次回確認:2027年4月13日)
- 神奈川労働局・相模原労働基準監督署「賃金控除に関する労使協定を締結していますか? 賃金の支払は全額払が原則です」(確認日:2026年10月13日、次回確認:2027年4月13日)