この記事の対象:特定技能外国人の貯蓄や送金の相談を受ける受入れ企業の人事・労務担当者、生活面の相談を受ける登録支援機関の担当者
強制は禁止:貯蓄を雇用の条件にしてはならない
労働基準法第18条第1項は、使用者が労働契約に附随して貯蓄の契約をさせ、または貯蓄金を管理する契約をしてはならないと定めています。
厚生労働省のQ&Aは、貯蓄をしなければ雇用しない、社内預金をやめるなら解雇するといって預貯金を強制することや、会社の取引銀行に口座を開設させて預金を強要することは、労働基準法に違反するとしています。労働者には、自己の意思に反して社内預金を行う義務はありません。
特定技能の基準でも、保証金の徴収その他名目のいかんを問わず金銭その他の財産を管理されないことが求められます(運用要領の上陸基準省令の項)。運用要領は、登録支援機関の登録拒否事由の説明でも、外国人の意に反して預金通帳を取り上げていた場合を人権侵害の例に挙げています。本人の意思に基づかない管理は行わないのが前提です。
保証金や違約金の禁止は保証金・違約金の禁止のガイドで確認できます。
預かるときの条件:労使協定と労働基準監督署への届出、規程の周知
労働者が任意に貯蓄金の管理を委託する場合に限り、使用者は管理できます。労働基準法第18条第2項は、過半数組合、なければ労働者の過半数を代表する者との書面による協定を結び、行政官庁に届け出ることを求めています。
同条第3項は、貯蓄金の管理に関する規程を定め、労働者に周知させるため作業場に備え付けるなどの措置をとることを求めています。厚生労働省のQ&Aによると、使用者が通帳を保管できるのも、この労使協定と保全措置などの条件を満たした場合に限られます。
給与から積立金を天引きするには、貯蓄金の協定とは別に、賃金控除に関する労使協定(労働基準法第24条)も必要です。
| 事項 | 内容 |
|---|---|
| 預金者の範囲 | 労働基準法上の労働者に限られ、取締役・退職者・家族などは含まれない(Q&A) |
| 預金者1人当たりの限度額 | 事業場の賃金水準や目的を考慮して具体的に決める(Q&A) |
| 預金の利率と利子の計算方法 | 法定の下限以上の利率にする |
| 預金の受入れと払いもどしの手続 | 通帳など受入額・払戻額・残高を書いた書面の交付と、預金元帳の備付けを定める(Q&A) |
| 預金の保全の方法 | 賃金の支払の確保等に関する法律に基づく保全措置のどれによるかを定める |
利率と保全:下限は年0.5%、受入預金の全額に保全措置が要る
労働基準法第18条第4項は、管理が預金の受入れであるときは利子をつけなければならないと定めています。厚生労働省のQ&Aによると、下限利率は省令で年0.5%(年5厘)で、協定でこれより低く定めても下限の利率がつくものとみなされます。
下限利率は、毎年、定期預金の平均利率との差で見直されます。Q&Aは、令和8年2月5日付の通知で、令和8年4月から適用される下限利率が引き続き年0.5%とされたと説明しています。利率の上限は示されていません。
保全措置は、毎年3月31日現在の受入預金額の全額について、その後1年間を通じて講じる必要があります。方法は、金融機関による保証契約、信託契約、質権または抵当権の設定、預金保全委員会の設置などで、協定でどの方法によるかを定めます。
返還の請求:本人が求めたら遅滞なく返す
労働基準法第18条第5項は、労働者が貯蓄金の返還を請求したときは、遅滞なくこれを返還しなければならないと定めています。
返還が守られず、管理を続けることが労働者の利益を著しく害すると認められるときは、行政官庁が管理の中止を命じることができ、命じられた使用者は遅滞なく貯蓄金を返還しなければなりません(同条第6項・第7項)。
貯蓄金の管理に関する規程は、同条第3項により作業場への備え付けなどで周知します。返還の請求を受けたときの手順も、規程の内容として確認しておきます。
口座開設の支援は銀行口座・携帯電話契約の支援のガイドで確認できます。
- 預けるかどうかを本人の自由な意思に任せ、雇用の条件にしていない
- 貯蓄金管理の労使協定を結び、労働基準監督署へ届け出た
- 管理規程を作業場に備え付けるなどして周知した
- 協定の利率が年0.5%以上で、保全措置の方法を決めた
- 給与から天引きするため、賃金控除の労使協定も結んでいる
- 本人から返還の請求があれば遅滞なく返す手順を決めた
よくある質問
特定技能外国人に社内預金をさせることはできますか?
本人が任意に管理を委託する場合に限られます。労働基準法第18条は、労働契約に附随して貯蓄の契約をさせることを禁じています。預かる場合は、労使協定の締結と労働基準監督署への届出などが必要です。
会社が通帳を預かってもよいですか?
厚生労働省のQ&Aは、労働者が任意に管理を委託し、貯蓄金管理の労使協定と保全措置などの条件を満たした場合に限り認められるとしています。本人の意に反して取り上げることは認められません。
社内預金の利率に決まりはありますか?
下限があります。省令で年0.5%とされ、協定でこれより低く定めても下限の利率がつくとみなされます。令和8年4月から適用される下限も年0.5%です。
本人が預金の返還を求めたらどうしますか?
労働基準法第18条第5項により、遅滞なく返還しなければなりません。この記事は法令と公的資料の整理です。個別の事案は、労働基準監督署や社会保険労務士などの専門家に確認してください。
参照した公的一次資料
- e-Gov法令検索「労働基準法」(昭和22年法律第49号)(確認日:2026年10月8日、次回確認:2027年1月8日)
- e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」第5条(労働条件の明示)・第7条の2(賃金の口座振込み等)・第12条の3(フレックスタイム制の協定事項と届出)・第19条(割増賃金の基礎となる1時間あたりの賃金)(確認日:2026年10月13日、次回確認:2027年1月13日)
- 厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A 社内預金の天引きは許されるか(確認日:2026年10月17日、次回確認:2027年1月17日)
- 厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A 社内預金の利率の下限(確認日:2026年10月17日、次回確認:2027年1月17日)
- 出入国在留管理庁「特定技能外国人受入れに関する運用要領」(確認日:2026年8月11日、次回確認:2026年11月11日)