この記事の対象:特定技能外国人の賃金をデジタル払いにできるか検討する企業の人事・労務担当者、登録支援機関の担当者
デジタル払いの位置づけと指定済みの事業者
賃金のデジタル払いは、厚生労働大臣が指定した資金移動業者の口座へ賃金を支払う方法で、令和5年(2023年)4月1日に認められました。
厚生労働省の労働条件分科会の資料によると、根拠は労働基準法施行規則第7条の2第1項第3号で、対象は第二種資金移動業を営む資金移動業者のうち、厚生労働大臣が賃金の支払に使える要件を満たすと指定した事業者です。省令の公布は令和4年11月28日、施行は令和5年4月1日でした。
厚生労働省の資金移動業者の一覧(令和8年7月1日現在)では、指定を受けた事業者は4社です。最初の指定は令和6年8月9日でした。
この一覧は更新されるため、導入を検討するときは最新の一覧で、事業者名とサービス名を確認してください。以下の表は一覧の転記で、特定の事業者をおすすめするものではありません。
| 事業者 | サービス名 | 指定日 | 受入上限額 |
|---|---|---|---|
| PayPay株式会社 | PayPay給与受取 | 令和6年8月9日 | 20万円 |
| 株式会社リクルートMUFGビジネス | COIN+(スタンダード) | 令和6年12月13日 | 30万円 |
| 楽天Edy株式会社 | 楽天ペイ給与受取 | 令和7年3月19日 | 10万円 |
| auフィナンシャルサービス株式会社 | au PAY 給与受取 | 令和7年4月4日 | 10万円 |
企業が先に行うこと:労使協定・説明・個別の同意
デジタル払いを始めるには、労使協定の締結、労働者への説明、労働者ごとの同意が要ります。同意は企業が自分で得る必要があります。
厚生労働省の使用者向けリーフレットによると、労使協定は、労働者の過半数で組織する労働組合があればその組合と、なければ労働者の過半数を代表する者と結びます。記載する事項は、対象となる労働者の範囲、対象となる賃金の範囲とその金額、取扱指定資金移動業者の範囲、実施開始時期の4つです。就業規則や給与規程を改める必要があるかも、あわせて確認するよう案内されています。
労働者への説明では、預貯金口座への振込みなど、ほかの支払方法も併せて示します。説明は指定資金移動業者に限って委託できますが、委託先が説明を怠った場合も、説明が行われたとは認められず、企業が労働基準法令に違反することになります。
同意は、書面でも電磁的記録でも構いませんが、企業が自ら得ます。同意書の様式例も公表されています。
デジタル払いを強制することはできません。厚生労働省のページと労働者向けリーフレットによると、賃金の一部だけをデジタル払いにして残りを銀行口座で受け取ることも、後から銀行口座などの受取に変更することもできます。現金に換えられないポイントや暗号資産での支払は認められません。
- 指定資金移動業者を確認する
厚生労働省の一覧で、事業者名とサービス名を確かめます。
- サービスを比べる
口座残高の上限、1日の払出上限、手数料の負担、契約の要否を事業者ごとに確認します。複数の事業者を選ぶこともできます。
- 労使協定を結ぶ
対象の労働者、対象の賃金と金額、取扱事業者、開始時期の4項目を定めます。
- 労働者へ説明する
預貯金口座への振込みなど、ほかの支払方法も併せて示します。
- 労働者ごとに同意を得る
企業が自ら得ます。受取希望額や、上限を超えた分を移す指定代替口座もこのときに聞きます。
労働者を守る仕組み:残高の上限・無料の換金・破綻時の弁済
省令は、指定の要件として、口座の残高を100万円以下にする措置や、換金の無料機会、破綻時の弁済の保証を定めています。
厚生労働省の資料によると、口座の債務の額が100万円を超えないようにする措置などが要件です。実際の受入上限額は事業者ごとに10万円から30万円で、口座残高の上限も1日の払出上限も、企業と指定資金移動業者の個別の調整で引き上げることはできません。
上限を超えた分は、労働者があらかじめ指定した代替口座へ自動的に出金されます。この出金の手数料は、本人の負担になる場合があります。
ATMや預貯金口座への出金は、少なくとも毎月1回は労働者が手数料を負担せずにできる必要があります。2回目以降の手数料は事業者ごとに異なります。事業者が破綻したときに全額を速やかに弁済する保証の仕組みと、不正出金のときに労働者に過失がなければ損失の全額を補償する仕組みも、通達に定められています。
口座の払出しは、特段の事情がない限り、最後の資金移動の日から少なくとも10年間は履行できる措置が必要です。入金も受取も1円単位でできることが求められます。
- 受入上限額を超えた分の出金先(指定代替口座)を、本人が決めているか
- 毎月の無料の換金回数と、2回目以降の手数料を、本人に伝えたか
- 1日の払出上限が設定されていないか、事業者ごとに確認したか
特定技能外国人に伝えるとき:多言語の資料と支払日の扱い
厚生労働省は、デジタル払いの概要リーフレットを、英語、中国語、ベトナム語、インドネシア語、ネパール語など13言語で公表しています。
厚生労働省のページには、このほか韓国語、スペイン語、ポルトガル語、タガログ語、タイ語、ミャンマー語、モンゴル語、クメール語の版があります。労働者向けの手続きのリーフレットにも英語版などがあります。本人が選ぶ方法の違いを説明するときの手がかりになります。
デジタル払いでも、支払日に賃金の全額を払い出せる状態にする必要があります。通達によると、支払日の午前10時頃までには、為替取引として利用できる状態にします。賃金の支払に関する計算書も交付します。
指定の取消しや辞退、破産手続の申立てなどがあった場合、企業は労働者に速やかに別の支払方法を確認し、送金指図を済ませているなどの特段の事情がない限り、以降の賃金を別の方法で支払います。ほかの支払方法を選べるようにしておくことが、この場面でも役に立ちます。
当サイトは、個別の労使協定の内容や同意書の作成について助言しません。管轄の労働基準監督署で確認してください。
よくある質問
デジタル払いは、いつから認められていますか?
令和5年(2023年)4月1日です。労働基準法施行規則第7条の2第1項第3号の改正が施行されました。厚生労働大臣が指定した資金移動業者の口座に限られます。
本人が希望しても、企業は必ず応じなければなりませんか?
企業に導入を強制するものではありません。デジタル払いは、労使協定を結び、労働者ごとの同意を得て初めて使えます。企業が導入するかどうかは、労使協定を結べるかも含めて決めます。導入した場合も、強制はできず、銀行口座などの選択肢を併せて示す必要があります。
賃金の一部だけをデジタル払いにできますか?
できます。厚生労働省のページと労働者向けリーフレットによると、一部をデジタル払いの口座で受け取り、残りを銀行口座などで受け取れます。後から銀行口座などに変更することもできます。
デジタル払いの口座に、いくらまで入りますか?
省令は100万円以下にする措置を求めていますが、実際の受入上限額は事業者ごとに10万円から30万円です。超えた分は、本人が指定した代替口座に自動で出金されます。
どの事業者を選べばよいですか?
当サイトは特定の事業者をおすすめしません。厚生労働省の一覧(令和8年7月1日現在)では4社が指定されています。上限額や手数料は事業者ごとに異なるため、最新の一覧と各社の案内で確認してください。
参照した公的一次資料
- 厚生労働省「賃金のデジタル払いに関するQ&A・指定資金移動業者の一覧」(確認日:2026年10月18日、次回確認:2027年2月20日)
- 厚生労働省「賃金のデジタル払いの導入手続き(使用者向けリーフレット)」(確認日:2026年10月18日、次回確認:2027年2月21日)
- 厚生労働省「賃金のデジタル払いを受け取るための手続き(労働者向けリーフレット)」(確認日:2026年10月18日、次回確認:2027年1月23日)
- 厚生労働省 基発1128第4号「賃金の口座振込み等について」(賃金のデジタル払いの取扱い)(確認日:2026年10月18日、次回確認:2027年1月24日)
- 厚生労働省 労働条件分科会資料「賃金のデジタル払い」(省令の要件の抜粋)(確認日:2026年10月18日、次回確認:2027年1月18日)
- 厚生労働省「賃金のデジタル払いが可能になります!」多言語版リーフレット(確認日:2026年10月18日、次回確認:2027年1月18日)
- e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」第5条(労働条件の明示)・第7条の2(賃金の口座振込み等)・第12条の3(フレックスタイム制の協定事項と届出)・第19条(割増賃金の基礎となる1時間あたりの賃金)(確認日:2026年10月13日、次回確認:2027年1月13日)