この記事の対象:特定技能外国人の勤務地や担当を変える予定の受入れ企業の人事・労務担当者、異動の相談を受ける登録支援機関の担当者

命令できる根拠:就業規則の定めがあり、勤務地や職種の限定がないとき

厚生労働省の裁判例の整理は、就業規則に業務上の都合で転勤や配置転換を命じられる旨の定めがあり、雇用契約で勤務地や職種が限定されていない場合、企業は個々の労働者の同意なしに命じることができると説明しています。

整理では、これに加えて、実際に転勤が頻繁に行われていることが前提に挙げられています。定めがなければ、この説明は当てはまりません。

労働基準法施行規則第5条第1号の3は、契約の締結時に明示する労働条件として、就業の場所と従事すべき業務に関する事項を挙げ、その変更の範囲を含むとしています。異動の可能性や範囲は、採用時の書面に書く事項に含まれます。

明示する書面の内容は労働条件通知書のガイドで確認できます。

命令が権利の濫用になる場合:必要性がない、不当な動機、著しい不利益

厚生労働省の裁判例の整理は、業務上の必要性がない場合、不当な動機・目的が認められる場合、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合などは、権利の濫用に当たると考えられると説明しています。

労働契約法第3条第5項は、労働契約に基づく権利の行使に当たって、それを濫用してはならないと定めています。

業務上の必要性は、余人をもっては容易に替え難いといった高度の必要性に限られません。整理が紹介する東亜ペイント事件(最高裁昭和61年7月14日判決)は、企業の合理的運営に寄与する点が認められれば足りるとしています。特に転居を伴う転勤は、労働者の生活に影響を与えるため、無制約に命じることはできないとされています。

権利の濫用に当たると考えられる場合(厚生労働省の裁判例の整理より)
場合内容
業務上の必要性がない異動に、企業の合理的運営に寄与する点がない
不当な動機・目的がある必要性があっても、他の不当な動機・目的でなされた
著しい不利益を負わせる労働者に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる

職種や勤務地を限定する合意があるとき:同意なしに命じられない

厚生労働省の裁判例の整理は、職種や業務内容を特定のものに限定する合意がある場合、使用者は個別の同意なしにその合意に反する配置転換を命じる権限を有しないという最高裁の判断(滋賀県社会福祉協議会事件、令和6年4月26日)を紹介しています。

整理は、職種限定の合意がある職種が廃止される場合に、解雇を回避するためであっても、個別の同意なしに合意に反する他職種への配置転換は命じられないとしています。

合意が成り立っているかどうかは、雇用契約書の記載や採用時の説明など、個別の事実で判断されます。この記事は法令と公的資料の整理です。個別の事案は、労働基準監督署や社会保険労務士などの専門家に確認してください。

育児・介護をしている人の就業場所を変えるとき:状況への配慮が要る

育児・介護休業法第26条は、事業主が就業の場所の変更を伴う配置の変更をしようとする場合に、その変更で子の養育や家族の介護が困難になる労働者がいるときは、その状況に配慮しなければならないと定めています。

厚生労働省の裁判例の整理が紹介するネスレ日本事件(大阪高裁平成18年4月14日判決)では、命じられた労働者の家族介護の状況などを考慮し、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるとして、配置転換命令を無効としています。

条文は、配慮の具体的な中身までは定めていません。個々の事情で異なるため、異動を決める前に、本人の状況を確認します。

特定技能の場合:就業場所を変えたら、変更の届出が14日以内に必要

出入国在留管理庁の運用要領は、特定技能雇用契約の就業場所(事業所)を変更する場合は届出が必要で、具体例として、従前の事業所から他の事業所へ転勤した場合を挙げています。

出入国管理及び難民認定法第19条の18と同法施行規則第19条の17は、契約の変更をした受入れ機関に、事由が生じた日から14日以内の届出を義務づけています。連絡先のみの変更は、就業場所の変更の届出の対象から除かれています。

担当する業務の区分を変える場合は、別の手続になります。同じ分野内なら届出、分野が変わるなら在留資格変更許可申請が要る点は、別のガイドにまとめています。

業務区分を変えるときの手続は業務区分の変更のガイドで確認できます。

  • 異動の前に、就業規則の定めと雇用契約書の記載(就業場所・業務・変更の範囲)を確認した
  • 異動の必要性と、本人の家庭の事情を聞き取った
  • 就業場所が変わる場合、変更日から14日以内に契約変更の届出ができる準備をした
  • 担当業務の区分が変わるかどうかを確認した

よくある質問

就業規則に定めがあれば、特定技能外国人に自由に転勤を命じられますか?

自由ではありません。業務上の必要性がない場合、不当な動機・目的がある場合、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合などは、権利の濫用に当たると厚生労働省の資料は整理しています。

雇用契約で担当の職種を決めている場合、他の職種へ異動させられますか?

職種を限定する合意がある場合、最高裁は、使用者は個別の同意なしにその合意に反する配置転換を命じる権限を有しないと判断しています(令和6年4月26日)。合意の有無は個別の事実で判断されます。

特定技能外国人の勤務する事業所を変えたとき、届出は必要ですか?

出入国在留管理庁の運用要領は、就業場所(事業所)を変更する場合は届出が必要としています。事由が生じた日から14日以内に、地方出入国在留管理局へ書面で提出するか、電子届出システムで届け出ます。

育児や介護をしている人の転勤では、何に気をつけますか?

育児・介護休業法第26条は、就業場所の変更で子の養育や家族の介護が困難になる労働者がいるときは、その状況に配慮しなければならないと定めています。

参照した公的一次資料

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次に確認すること

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