この記事の対象:タクシー・バス事業で特定技能外国人のドライバー採用を検討し、新任運転者研修の中身と準備を知りたい事業者の運行管理・人事の担当者
運用方針が定める新任運転者研修とは何か
新任運転者研修は、特定技能の分野別運用方針で、旅客の運送を行う2つの業態に求められている要件です。
出入国在留管理庁の分野別運用方針は、タクシー運送業とバス運送業では、技能試験などの合格に加えて、新任運転者研修を修了した者を特定技能1号で受け入れる外国人とすると定めています。トラック運送業の記載には、この研修は出てきません。
同じ運用方針は、研修を実施するのは特定技能所属機関だと書いています。研修の中身は、旅客自動車運送事業運輸規則が定める事項(第38条第1項・第2項・第5項と第39条)についての指導、監督、特別な指導を受けることです。これに加えて、適性診断を受診します。
| 構成 | 対応する規定 | 内容 |
|---|---|---|
| 指導・監督 | 運輸規則第38条第1項、第39条 | 営業区域の状態、運転技術、法令に定める運転に関する事項など(第39条は営業区域内の地理と応接) |
| 特別な指導 | 運輸規則第38条第2項 | 新たに雇い入れた運転者などへの、運行の安全を確保するための遵守事項の指導 |
| 適性診断の受診 | 運輸規則第38条第2項 | 国土交通大臣の認定を受けた適性診断 |
| 非常用器具の取扱い指導 | 運輸規則第38条第5項 | 非常信号用具、非常口、消火器を備える自動車の乗務員への指導 |
運輸規則第38条・第39条が求める指導監督と記録の保存
指導監督の内容は、運輸規則の条文と、国土交通省が示す指導監督の指針で確認できます。
運輸規則第38条第1項は、旅客自動車運送事業者に、運転者への適切な指導監督を求めています。内容は、主として運行する路線または営業区域の状態、これに対処できる運転技術、法令に定める自動車の運転に関する事項です。実施の日時、場所、内容、指導した人、受けた人を記録し、営業所で3年間保存します。
第39条は、一般乗用旅客自動車運送事業者(タクシー)に、営業区域内の地理と、旅客や公衆への応接について必要な事項の指導監督を求めています。条文の主語は一般乗用旅客自動車運送事業者です。運用方針は第39条を研修の定義に含めていますが、バスの事業区分でどう扱うかは、国土交通省か運輸支局に確認してください。
国土交通省の資料では、初任運転者への指導として、安全運転の実技、危険の予測と回避の技能、安全装置を備える自動車の運転方法に加え、旅客の運送では、安全な運転の基本事項、構造上の特性と日常点検の方法、旅客の安全を確保するために留意すべき事項が挙げられています。
初任診断:運転者に選任する前に受診させる
適性診断のうち、新たに採用した運転者が受けるのが初任診断です。
運輸規則第38条第2項は、運転者として新たに雇い入れた者に、特別な指導を行い、国土交通大臣の認定を受けた適性診断を受けさせることを求めています。国土交通省の資料は、初任診断の旅客の受診時期を、その旅客自動車運送事業者で事業用自動車の運転者として選任する前としています。
初任診断の診断時間は約2時間20分で、結果をもとに、プロドライバーとしての自覚、事故の未然防止のための運転行動、安全運転の留意点について助言・指導を行うと説明されています。診断を受けられる機関は、国土交通省のページに認定機関の一覧があります。
診断の費用は機関ごとに異なります。この記事では金額を示さないため、受診予定の機関の案内で確認してください。
採用の工程に研修を組み込むときの確認点
研修は、技能試験や運転免許と別に、事業者が自社で準備する工程です。
運用方針は、研修を実施する主体を特定技能所属機関としています。運転免許の取得や特定技能への変更と並べて、研修と初任診断を、乗務を始める前の工程に入れておく必要があります。
国土交通省は、運転者の安全教育のマニュアルをタクシー・バスなど業態別に公開しており、令和6年3月29日に改訂されています。自社の研修の計画を作る際の参考にできます。外国人向けに研修で使う言語や教材をどうするかは、運用方針の日本語能力の要件とあわせて検討してください。
運転免許の取得や準備期間の特定活動は、自動車運送業の特定技能のガイドで確認できます。
- 運用方針の定義にある指導・監督・特別な指導・適性診断の4つを、研修計画に入れた
- 指導監督の日時・場所・内容・実施者・受講者を記録し、営業所で3年間保存する運用にした
- 初任診断を、運転者に選任する前の日程に組み込んだ
- 受診する適性診断の機関と費用を、機関の案内で確認した
よくある質問
新任運転者研修は、トラック運送業でも必要ですか?
運用方針で新任運転者研修が挙げられているのは、タクシー運送業とバス運送業です。トラック運送業の受入れ要件については、出入国在留管理庁の分野別の案内で確認してください。
研修は誰が実施しますか?
受入れ側の事業者(特定技能所属機関)です。運用方針は、タクシー運送業・バス運送業の特定技能所属機関が、受け入れる予定の外国人に研修を実施すると書いています。
指導監督の記録は、どのくらいの期間保存しますか?
運輸規則第38条第1項は、日時、場所、内容、指導した人と受けた人を記録し、営業所で3年間保存すると定めています。
初任診断はいつ受けますか?
国土交通省の資料では、旅客は、その事業者で事業用自動車の運転者として選任する前に受診します。診断時間は約2時間20分と説明されています。
参照した公的一次資料
- 「自動車運送業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」(閣議決定、別紙10)(確認日:2026年9月26日、次回確認:2026年12月26日)
- 出入国在留管理庁「自動車運送業分野」(確認日:2026年8月11日、次回確認:2026年11月11日)
- e-Gov法令検索「旅客自動車運送事業運輸規則」(第38条 従業員に対する指導監督・第39条)(確認日:2026年10月24日、次回確認:2027年1月27日)
- 国土交通省「運転者に対する指導監督の概要」(指導監督指針の内容・適性診断の受診)(確認日:2026年10月24日、次回確認:2027年1月27日)