この記事の対象:特定技能外国人など外国人従業員に退職金や功労金を支払う企業の経理・給与担当者
退職手当等には功労金も含まれ、源泉徴収して翌月10日までに納める
退職金を支払う企業は、支払うときに所得税などを源泉徴収する義務があります。
国税庁のタックスアンサーによると、役員または使用人に退職手当等を支払うときは、所得税および復興特別所得税を源泉徴収し、原則として翌月の10日までに納めます。退職手当等には、退職したことに基因して支払われるすべての給与が含まれ、本来の退職手当のほかに功労金などを支給した場合も含めて扱います。
死亡退職により支払う退職手当等で、相続税の課税の対象となるものは、所得税の課税の対象にならないため、源泉徴収は必要ないとされています。
「退職所得の受給に関する申告書」があるかで、税額の計算が変わる
源泉徴収する税額は、退職する人から申告書の提出を受けているかどうかで決まります。
所得税法第203条は、国内で退職手当等の支払を受ける居住者は、支払を受ける時までに、退職所得の受給に関する申告書を支払者経由で税務署長に提出すると定めています。申告書が支払者に受理されたときは、税務署長に提出されたものとみなされます。
国税庁は、申告書の提出を受けていない場合は、退職手当等の支給額に20.42%の税率を乗じた額を源泉徴収し、受給者本人が確定申告で精算するとしています。支払者が所定の要件を満たせば、申告書は電磁的方法で提供を受けることもできます。
| 申告書 | 源泉徴収の方法 |
|---|---|
| 提出を受けている | 勤続年数から退職所得控除額を出し、課税退職所得金額に速算表の税率をかけて計算する |
| 提出を受けていない | 退職手当等の支給額×20.42%(1円未満切り捨て)。本人が確定申告で精算する |
勤続年数は1年未満を切り上げ、退職所得控除額を引いて2分の1にする
申告書がある場合の計算は、勤続年数、退職所得控除額、課税退職所得金額の順に進みます。
勤続年数は、退職の日まで引き続き勤務した期間の年数で、1年に満たない端数は1年に切り上げます。退職所得控除額は、勤続20年以下なら40万円×勤続年数です。計算した額が80万円に満たないときは、80万円になります。
一般の退職手当等の課税退職所得金額は、(収入金額−退職所得控除額)×1/2で、1,000円未満は切り捨てます。国税庁の例では、退職金800万円・勤続期間10年2か月の場合、勤続年数は11年、控除額は440万円、課税退職所得金額は180万円で、源泉徴収税額は91,890円です。
| 手順 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 勤続年数 | 10年2か月の端数を1年に切り上げ | 11年 |
| 退職所得控除額 | 40万円×11年 | 440万円 |
| 課税退職所得金額 | (800万円−440万円)×1/2 | 180万円 |
| 源泉徴収税額 | 180万円×5%×102.1% | 91,890円 |
勤続5年以下の退職金は、300万円超の部分が2分の1にならない
勤続が短い人の退職金は、2分の1の計算が一部の金額までに限られます。
国税庁は、役員等以外の者として勤務した期間で計算した勤続年数が5年以下のものに対応する退職手当等を、短期退職手当等としています。勤続期間の端数は1年に切り上げるため、4年7か月の勤務も勤続年数は5年として扱われます。
短期退職手当等で、収入金額から退職所得控除額を引いた額が300万円以下なら、その額の1/2が課税退職所得金額です。300万円を超えるときは、150万円に、300万円と退職所得控除額の合計を超える部分を加えた額になります。この扱いは令和4年1月1日以後に支払うべき退職手当等に適用されます。
特定技能1号の通算在留期間の上限は5年上限と例外のガイドで確認できます。
退職手当等の源泉徴収票は、退職の日以後1か月以内に本人へ交付する
退職金を支払った企業は、税務署に出す源泉徴収票とは別に、受給者本人にも1通を渡します。
所得税法第226条第2項は、居住者に退職手当等を支払う者は、受給者ごとに源泉徴収票を2通作成し、退職の日以後1月以内に、1通を税務署長に提出し、他の1通を受給者に交付すると定めています。
同条第4項は、受給者の承諾を得れば、交付に代えて記載事項を電磁的方法で提供できるとしています。受給者から請求があるときは、源泉徴収票を交付しなければなりません。
退職時に渡す書類の全体は退職証明書のガイドで確認できます。
- 退職金や功労金を支払う前に、退職所得の受給に関する申告書を受け取ったか確認している
- 源泉徴収した税額を、支払った月の翌月10日までに納める予定を立てている
- 退職の日以後1月以内に、源泉徴収票を2通作って1通を税務署へ出し、1通を本人に渡す段取りにしている
帰国後に払う退職金は、居住者か非居住者かで源泉徴収の扱いが分かれる
退職金を払う時点で本人が日本にいるかどうかは、源泉徴収の扱いに関わります。
国税庁の案内では、所得税法上の居住者は、国内に住所を有するか、現在まで引き続き1年以上居所を有する個人で、それ以外は非居住者です。住所は生活の本拠をいい、客観的事実で判定されます。
非居住者に国内源泉所得を支払うときは、原則として支払の際に源泉徴収が必要で、給与その他人的役務の提供に対する報酬、退職手当等の税率は20.42%と一覧に載っています。国外で支払う場合も、支払者が国内に住所や事務所等を有するときは、国内で支払ったものとみなして源泉徴収します。個別の本人が居住者か非居住者かは、所轄の税務署または税理士に確認します。
帰国時の住民税の手続きは出国時の住民税のガイドで確認できます。
よくある質問
外国人従業員の退職金にも、源泉徴収は必要ですか?
国税庁によると、使用人に退職手当等を支払うときは所得税および復興特別所得税を源泉徴収し、原則として翌月の10日までに納めます。功労金なども退職手当等に含めて扱います。
退職所得の受給に関する申告書をもらっていないと、どうなりますか?
国税庁の案内では、支給額に20.42%の税率を乗じた額を源泉徴収します。受給者本人が確定申告をして、申告書がある場合と同じ計算で精算します。
源泉徴収票は、いつまでに誰に渡しますか?
所得税法第226条第2項は、退職の日以後1月以内に、1通を税務署長に提出し、他の1通を退職金を受け取る本人に交付すると定めています。承諾を得れば電磁的方法での提供もできます。
帰国した従業員に退職金を振り込むときの税額は、このガイドで決まりますか?
決まりません。居住者か非居住者かで扱いが分かれ、非居住者への退職手当等は税率20.42%の一覧に載っています。個別の判定は、所轄の税務署または税理士に確認してください。
参照した公的一次資料
- 国税庁タックスアンサー No.2732 退職手当等に対する源泉徴収(確認日:2026年10月23日、次回確認:2027年1月26日)
- e-Gov法令検索「所得税法」(確認日:2026年10月23日、次回確認:2027年1月26日)
- 国税庁タックスアンサー No.2875 居住者と非居住者の区分(確認日:2026年10月14日、次回確認:2027年1月14日)
- 国税庁タックスアンサー No.2884 非居住者等に対する源泉徴収・源泉徴収の税率(確認日:2026年10月23日、次回確認:2027年1月26日)