この記事の対象:建設・造船・製造の現場で、特定技能外国人を雇う下請企業や、下請を使う元請企業の安全衛生担当者・現場責任者
元方事業者:請負人への指導と是正の指示
仕事の一部を請負人に請け負わせている事業者は、請負人側の安全衛生についても責任を負います。
労働安全衛生法第15条第1項は、一の場所で行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせている事業者を、元方事業者としています。数次の請負で契約が二以上あるときは、最も先次の請負契約の注文者です。
第29条第1項は、元方事業者に、関係請負人とその作業従事者が、この法律や命令の規定に違反しないよう必要な指導を行うことを求めています。第2項は、違反していると認めるときに、是正のため必要な指示を行うことを求めています。
第3項は、指示を受けた関係請負人とその作業従事者が、その指示に従うことを定めています。特定技能外国人が下請側の労働者である場合も、条文は国籍で区別していません。
特定元方事業者:建設業と造船業は、協議組織・連絡調整・巡視を行う
元方事業者のうち、建設業その他政令で定める業種の事業を行う者は、特定元方事業者として、さらに具体的な措置を求められます。
第15条第1項は、元方事業者のうち建設業その他政令で定める業種に属する事業(特定事業)を行う者を、特定元方事業者としています。労働安全衛生法施行令第7条第1項は、この政令で定める業種を造船業としています。
第30条第1項は、特定元方事業者に、協議組織の設置と運営、作業間の連絡と調整、作業場所の巡視、関係請負人が行う安全衛生教育への指導と援助、その他の必要な措置を求めています。仕事の場所が仕事ごとに異なることを常態とする業種で厚生労働省令で定めるものには、仕事の工程と機械・設備の配置に関する計画の作成も求められます。
規則では、協議組織に特定元方事業者とすべての関係請負人が参加し、定期的に会議を開くこと(第635条)、作業場所の巡視は毎作業日に少なくとも1回行うこと(第637条)が定められています。関係請負人は、協議組織に参加し、巡視を拒み、妨げ、忌避してはなりません。
| 措置 | 条文 | 規則の内容 |
|---|---|---|
| 協議組織の設置と運営 | 法第30条第1項第1号、規則第635条 | 特定元方事業者とすべての関係請負人が参加し、会議を定期的に開く |
| 作業間の連絡と調整 | 法第30条第1項第2号、規則第636条 | 随時、特定元方事業者と関係請負人の間、関係請負人どうしの間で行う |
| 作業場所の巡視 | 法第30条第1項第3号、規則第637条 | 毎作業日に少なくとも1回 |
| 関係請負人の教育への指導と援助 | 法第30条第1項第4号、規則第638条 | 教育を行う場所や資料の提供等 |
統括安全衛生責任者:同じ場所の作業従事者が常時50人以上のとき選任する
特定元方事業者は、一定の人数以上の作業従事者が同じ場所で働くとき、統括安全衛生責任者を選任します。
第15条第1項は、特定元方事業者に、同一の場所で自社と関係請負人の作業従事者が作業を行うときに、統括安全衛生責任者を選任し、第30条第1項各号の事項を統括管理させることを求めています。作業従事者の数が政令で定める数未満であるときは除かれます。
施行令第7条第2項は、この数を、ずい道等の建設の仕事、一定の橋梁の建設の仕事、圧気工法による作業を行う仕事では常時30人、それ以外の仕事では常時50人としています。第15条第2項は、統括安全衛生責任者を、その場所で事業の実施を統括管理する者に担わせることを求めています。
建設業その他政令で定める業種で統括安全衛生責任者を選任した事業者は、第15条の2により、厚生労働省令で定める資格を有する者から元方安全衛生管理者を選任し、技術的事項を管理させます。
製造業などの元方事業者:作業間の連絡と調整などの措置を講じる
特定事業以外でも、製造業その他政令で定める業種の元方事業者には、連絡調整などの措置が求められます。
第30条の2第1項は、製造業その他政令で定める業種に属する事業(特定事業を除く)の元方事業者に、自社と関係請負人の作業従事者の作業が同じ場所で行われることによる労働災害を防ぐため、作業間の連絡と調整を行うことに関する措置その他必要な措置を講じることを求めています。
規則第643条の2は、作業間の連絡と調整について、第636条を準用しています。随時、元方事業者と関係請負人の間、関係請負人どうしの間で連絡と調整を行います。条文の語は「同一の場所」で、たとえば同じ工場で複数の事業者が作業する場合に関係する規定です。
第30条の2第2項から第4項は、元方事業者以外の発注者が仕事を二以上の請負人に請け負わせる場合に、措置を講ずべき者の指名を定めています。指名がされないときは、労働基準監督署長が指名します。
- 自社が仕事の一部を請け負わせている場合、関係請負人に法令違反をしないよう指導している
- 違反を認めたときに、是正の指示を出す手順がある
- 建設・造船では、協議組織を設け、関係請負人全員が参加して会議を定期的に開いている
- 作業場所の巡視を毎作業日に少なくとも1回行っている
- 製造業で同一の場所に下請が入る場合、作業間の連絡と調整の場がある
よくある質問
下請企業の外国人労働者の違反も、元請が指導する対象ですか?
元方事業者は、関係請負人とその作業従事者が、労働安全衛生法やこれに基づく命令に違反しないよう必要な指導を行うことが求められています(第29条第1項)。条文は国籍で区別していません。
現場の巡視は、どのくらいの頻度で行いますか?
建設業や造船業の特定元方事業者は、毎作業日に少なくとも1回、作業場所を巡視します(労働安全衛生規則第637条第1項)。関係請負人は、この巡視を拒み、妨げ、忌避してはなりません(同条第2項)。
統括安全衛生責任者は、何人から選任しますか?
施行令第7条第2項により、ずい道等の建設の仕事、一定の橋梁の建設の仕事、圧気工法による作業を行う仕事では常時30人以上、それ以外の仕事では常時50人以上です。同じ場所で働く特定元方事業者と関係請負人の作業従事者を合わせた人数が対象です。
参照した公的一次資料
- e-Gov法令検索「労働安全衛生法」第29条(元方事業者の講ずべき措置等)(確認日:2026年10月20日、次回確認:2027年2月21日)
- e-Gov法令検索「労働安全衛生法」第15条(統括安全衛生責任者)・第15条の2(元方安全衛生管理者)・第30条(特定元方事業者等の講ずべき措置)、同法施行令第7条(確認日:2026年10月20日、次回確認:2027年1月28日)
- e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」第635条(協議組織)・第636条(作業間の連絡及び調整)・第637条(作業場所の巡視)・第638条(教育に対する指導及び援助)(確認日:2026年10月20日、次回確認:2027年1月20日)
- e-Gov法令検索「労働安全衛生法」第30条の2(製造業等の元方事業者の講ずべき措置)、同規則第643条の2(確認日:2026年10月20日、次回確認:2027年1月29日)