この記事の対象:特定技能外国人を雇う受入れ企業の人事・労務担当者、労災で休業する従業員の雇用継続を判断する担当者、登録支援機関の担当者

業務上の傷病で休業する期間と、その後30日間は解雇できない

労働基準法第19条第1項は、労働者が業務上負傷し、または疾病にかかり、療養のために休業する期間と、その後30日間は、解雇してはならないと定めています。

対象は、条文が「業務上」と限定する、仕事中のけがや業務が原因の病気です。産前産後の女性が休業する期間とその後30日間も同じ条文で解雇が制限されます。条文は国籍で扱いを分けていないため、特定技能外国人にも同じ決まりが及びます。

厚生労働省のスタートアップ労働条件の解説は、この期間を「解雇制限期間」と呼び、期間中に解雇しても解雇は無効になると説明しています。違反した使用者には、6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の定めがあります(第119条第1号)。

解雇の予告そのものの決まりは別です。30日前の予告や解雇予告手当は、解雇制限期間が終わったあとに解雇する場合でも必要になります。

30日前の予告や解雇予告手当の詳細は解雇予告の決まりで確認できます。

第19条の解雇制限の概要
項目内容根拠
解雇できない期間業務上の傷病の療養のため休業する期間と、その後30日間労働基準法第19条第1項
期間中の解雇無効(厚生労働省の解説)同条・スタートアップ労働条件
違反した場合6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金労働基準法第119条第1号

例外は打切補償:療養開始後3年・平均賃金の1200日分

第19条第1項のただし書は、使用者が第81条の打切補償を支払う場合には、解雇制限を適用しないと定めています。

第81条は、第75条の療養補償を受ける労働者が、療養開始後3年を経過しても負傷や疾病がなおらない場合に、使用者は平均賃金の1200日分の打切補償を行い、その後は労働基準法の補償を行わなくてもよいと定めています。

3年を経過していること、1200日分を支払うことの2つがそろって初めて使えます。平均賃金の算定は第12条に定めがあり、算定の考え方は別のガイドで整理しています。

打切補償は、解雇制限を外すための条件です。解雇が有効かどうかは、解雇予告や、解雇に客観的で合理的な理由があるかなど、別の決まりでも判断されます。

平均賃金の数え方は平均賃金の計算で確認できます。

労災保険の給付中:最高裁判決と傷病補償年金

実際の療養は、使用者が直接補償するより、労災保険の給付で行われることが多くなります。この場合の扱いが2つの経路で整理されています。

1つ目は最高裁判決です。最高裁第二小法廷は平成27年6月8日に判決を出しました。

労災保険の療養補償給付を受ける労働者が、療養開始後3年を経過しても治らない場合でも、使用者は第81条の打切補償を支払えば、第19条第1項ただし書の適用を受けられるという判断です。厚生労働省はこの判決を受け、翌日付の通達(基発0609第4号、平成27年6月9日)で、今後の解釈運用をこの判断で行うとしています。

2つ目は労災保険法第19条のみなし規定です。療養開始後3年を経過した日に傷病補償年金を受けている場合、またはその日の後に傷病補償年金を受けることとなった場合は、その日に、使用者が打切補償を支払ったものとみなされます。この場合は、実際に1200日分を支払わなくても、解雇制限が外れます。

どちらの経路にあたるかは、労災保険の給付の種類と、療養開始からの経過で決まります。個別の事案は、所轄の労働基準監督署に確認してください。

休業補償給付などの内容は労災保険の給付の種類で確認できます。

療養開始後3年を経過した後の整理
状況解雇制限の扱い根拠
使用者が直接補償し、打切補償を支払った解雇制限は適用されない労働基準法第19条第1項ただし書・第81条
労災保険の療養補償給付を受け、使用者が打切補償を支払った解雇制限は適用されない最高裁平成27年6月8日判決・基発0609第4号
3年経過日に傷病補償年金を受けている(または後に受けることになった)打切補償を支払ったものとみなされる労働者災害補償保険法第19条

天災事変の例外:労働基準監督署長の認定

第19条第1項のただし書は、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合も、解雇制限の例外にしています。

この場合は、第19条第2項により、その事由について行政官庁の認定を受けなければなりません。労働基準法施行規則第7条は、この認定を所轄の労働基準監督署長から様式第2号で受けるものと定めています。

打切補償と違い、認定を受けるための手続が必要です。申請の書き方や認定の基準は、解雇予告の除外認定のガイドで整理しています。

認定の手続は解雇予告の除外認定で確認できます。

  • 休業の原因が業務上の傷病かを、労災の認定の状況で確認した
  • 療養開始日から3年を経過しているかを確認した
  • 労災保険の給付の種類(療養補償給付・傷病補償年金)を確認した
  • 解雇する場合は、制限期間の終了後30日の経過と、解雇予告の要否を確認した

よくある質問

労災で休業している特定技能外国人を解雇できますか?

業務上の傷病で療養のため休業する期間とその後30日間は、原則として解雇できません(労働基準法第19条第1項)。打切補償を支払う場合などの例外があります。

打切補償はいくら支払いますか?

第81条は、療養開始後3年を経過しても治らない場合に、平均賃金の1200日分の打切補償を行うと定めています。

労災保険の給付を受けている場合も打切補償で解雇制限が外れますか?

最高裁第二小法廷の平成27年6月8日の判決は、療養補償給付を受ける場合も、3年経過後に打切補償を支払えば第19条第1項ただし書の適用を受けられるとしています。厚生労働省も同判決の解釈で運用する通達を出しています。

傷病補償年金を受けている場合はどうなりますか?

労災保険法第19条は、療養開始後3年を経過した日に傷病補償年金を受けている場合などに、使用者が打切補償を支払ったものとみなすと定めています。

参照した公的一次資料

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