この記事の対象:従業員から労働条件や職場環境の相談・申出を受けた特定技能所属機関の事業主・人事担当者、労働局のあっせんの通知を受け取った担当者、相談窓口を案内する登録支援機関の担当者

3つのサービスは無料で、労働者・事業主のどちらからも使える

都道府県労働局は、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律に基づいて、3つの紛争解決援助サービスを用意しています。

厚生労働省の案内によると、3つは、総合労働相談コーナーでの情報提供・相談、都道府県労働局長による助言・指導、紛争調整委員会によるあっせんです。利用は無料で、労働者と事業主のどちらからでも申し込めます。制度の問合せと申込みは、総合労働相談コーナーが受け付けています。

労働者が助言・指導の申出やあっせんの申請をしたことを理由に、事業主が解雇その他の不利益な取扱いをすることは、法律で禁止されています。社内で申出があったときの対応でも、この点が前提になります。

事業主側の相談・苦情への対応は通報を理由とする不利益取扱いの禁止のガイドでも確認できます。

個別労働紛争解決制度の3つのサービス(厚生労働省の案内より)
サービス担当内容費用
総合労働相談総合労働相談コーナー(労働局、労働基準監督署、駅近隣の建物など378か所。令和8年4月1日現在)労働問題に関する情報提供と個別相談。法令・裁判例の情報提供、助言・指導とあっせんの説明、他機関との連携無料
助言・指導都道府県労働局長紛争の問題点を指摘し、解決の方向を示して、当事者の自主的な解決を促す無料
あっせん紛争調整委員会のあっせん委員公平・中立な第三者として間に入り、双方の主張の要点を確かめて話し合いを促す無料

対象は民事上の個別労働紛争:法違反は監督署へ

対象は、労働条件その他労働関係に関する事項についての、個々の労働者と事業主の間の紛争です。

案内が挙げる対象の例は、解雇・雇止め・労働条件の不利益変更などの労働条件の紛争、いじめ・嫌がらせなどの職場環境の紛争、退職に伴う研修費用の返還や営業車など会社所有物の破損についての損害賠償をめぐる紛争、会社分割による労働契約の承継や同業他社への就業禁止などの労働契約の紛争です。募集・採用に関する紛争は、助言・指導の対象ですが、あっせんの対象にはなりません。

パンフレットは、助言・指導を、法違反の是正を図る行政指導とは異なり、話し合いによる解決を促すもので、何らかの措置を強制するものではないと説明しています。労働基準法等の法違反のおそれがある場合は、労働基準監督署等の指導権限を持つ機関に取り次ぐとされています。施行状況の注記も、この制度の「民事上の個別労働関係紛争」から労働基準法等の違反に関するものを除いています。

法違反の申告と監督は労働基準監督署の監督と申告のガイドで確認できます。

助言・指導とあっせんの対象になる紛争・ならない紛争(厚生労働省の案内とパンフレットより)
紛争の内容助言・指導あっせん
解雇、雇止め、労働条件の不利益変更対象対象
いじめ・嫌がらせ(職場環境)対象対象
退職に伴う研修費用の返還、会社所有物の破損の損害賠償対象対象
募集・採用対象対象外
労働組合と事業主の間の紛争、労働者どうしの紛争対象外対象外
裁判で係争中、または確定判決が出ている紛争対象外対象外
他の法律で紛争解決援助制度が設けられている紛争対象外対象外
労働組合と事業主が自主的な解決を図って話し合っている紛争対象外対象外

助言・指導:申出から解決または別の手続への移行まで

助言・指導は、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)か最寄りの総合労働相談コーナーへの申出から始まります。

案内によると、申出のあとに制度の説明があり、都道府県労働局長による助言・指導が実施されます。解決すれば終了です。解決しなかった場合は、希望に応じて、あっせんへの移行、または他の紛争解決機関の説明・紹介が行われます。

パンフレットは、「紛争」を、一方の主張に相手方が同意せず、双方の主張が一致していない状態と説明しています。相手方に自分の主張を伝えないまま不満を持っているだけの状態は、紛争に当たりません。助言・指導を受けても解決しないときにあっせんを申請できますが、あっせんの前に助言・指導を経ることは必須ではないとされています。

  1. 申出

    雇用環境・均等部(室)か最寄りの総合労働相談コーナーに、助言・指導を申し出ます。

  2. 制度の説明

    総合労働相談コーナーで、関連する法令・裁判例の情報提供と制度の説明があります。

  3. 助言・指導の実施

    都道府県労働局長が、問題点の指摘と解決の方向の提示をします。強制ではありません。

  4. 解決または移行

    解決すれば終了です。解決しない場合は、あっせんへの移行か、他の紛争解決機関の紹介を希望できます。

あっせん:申請書の提出から合意または打切りまで

あっせんは、弁護士、大学教授、社会保険労務士などの労働問題の専門家であるあっせん委員が、双方の話し合いを促す手続です。

あっせん委員は、双方の主張の要点を確かめ、双方が求めた場合には、事案に応じた具体的なあっせん案を示します。あっせん案を受け入れるかどうかは強制されません。手続は非公開で、当事者のプライバシーは保護されます。

申請書は、紛争の当事者である労働者が使用されていた事業場の所在地を管轄する都道府県労働局雇用環境・均等部(室)か、同じ都道府県内の総合労働相談コーナーに出します。申請書の様式には、労働者と事業主の氏名・住所、事業場の名称と所在地、あっせんを求める事項とその理由、紛争の経過、その他参考となる事項を書く欄があります。

様式の裏面は、原則として本人が来局して出すことが望ましいとしつつ、遠隔地からの申請などでは郵送等も可能としています。電子申請もできます。

申請のあと、労働局長が必要に応じて申請人から事情を聞き、あっせんを紛争調整委員会へ委任するかを決めます。開始の通知を受けた相手方が参加しない意思を示すと、あっせんは実施されず打切りになります。参加する場合の期日は、原則として双方が別室で待ち、あっせん委員が意見を個別に調整するため、双方が直接顔を合わせることはありません。

合意が成立すると、あっせん委員が合意文書を作ります。この合意は、民法上の和解契約の効力を持ちます。あっせんが打切りになった場合、あっせんを申請した人が、打切りの通知を受けた日から30日以内に、あっせんの目的になった請求について訴えを起こすと、時効の完成猶予については、あっせんの申請の時に訴えを起こしたものとみなされます。

賃金債権の時効の長さは賃金請求権の時効のガイドで確認できます。

  1. あっせん申請書の提出

    労働者が使用されていた事業場を管轄する労働局の雇用環境・均等部(室)か、その都道府県内の総合労働相談コーナーに出します。

  2. 委任の判断

    労働局長が、必要に応じて申請人から事情を聞いたうえで、紛争調整委員会に委任するかを決めます。

  3. 開始の通知と参加の確認

    相手方に参加する意思があるかを確認します。参加しない意思が示されると打切りです。

  4. あっせん期日

    あっせん委員が、双方の主張を確かめ、調整し、求めがあればあっせん案を示します。

  5. 合意または打切り

    合意すれば合意文書が作られます。合意しなければ打切りになり、他の紛争解決機関の説明・紹介があります。

あっせん・労働審判・民事訴訟の違い

パンフレットには、あっせんと、裁判所の労働審判、民事訴訟を比べた表が載っています。

あっせんは、相手方の参加が任意で、費用がかからず、弁護士を選ぶ必要もありません。一方、合意は民事上の和解契約の効力にとどまり、強制執行はできません。労働審判と民事訴訟は、費用がかかり、強制執行ができる点があっせんと異なります。

どの手続が合うかは、紛争の内容で変わります。迷うときは、総合労働相談コーナーで他の紛争解決機関の説明・紹介を受けられます。

個別の事案の見通しは、弁護士や社会保険労務士などの専門家に確認してください。当サイトは労務の個別助言をしません。

あっせん・労働審判・民事訴訟の比較(厚生労働省のパンフレットより)
項目あっせん労働審判民事訴訟
実施体制あっせん委員(弁護士等)1人労働審判官(裁判官)1名と労働審判員(労使)2名裁判官
手続話し合いによる合意話し合いによる合意(不調の場合は労働審判委員会の審判)裁判所による判決(話し合いによる解決も可)
相手方の手続参加任意(不参加の場合は手続終了)正当な理由なく出頭しない場合は過料主張書面を出さずに出頭しない場合、原告の主張を認めたものとみなされる可能性がある
合意・裁判の効力民事上の和解契約(強制執行はできない)裁判上の和解と同じ効力(強制執行ができる)和解・判決(強制執行ができる)
費用無料有料有料
公開非公開非公開公開
代理人弁護士の選任は必要ない弁護士を選ぶことが多い(費用がかかる)弁護士を選ぶことが多い(費用がかかる)
提出する書面申請書(必要に応じて証拠書類)主張書面、証拠書類訴状等の主張書面、証拠書類
処理期間原則1回で、2か月以内が76.5%(令和6年度)原則3回以内で終了(平均3.2か月。令和6年速報値)平均16.1か月(地方裁判所。令和6年速報値)

令和7年度の件数:総合労働相談は119万8,010件

厚生労働省は2026年7月7日に、令和7年度の個別労働紛争解決制度の施行状況を公表しました。

総合労働相談の件数は119万8,010件で、18年連続で100万件を超えています。助言・指導の申出件数とあっせんの申請件数は、前年度より増えました。

民事上の個別労働関係紛争の相談では、「いじめ・嫌がらせ」が5万5,614件(前年度比1.1%増)で14年連続の最多です。助言・指導の申出では「労働条件の引き下げ」、あっせんの申請では「解雇」が最多でした。この「いじめ・嫌がらせ」の件数には、職場のパワーハラスメントに関する相談のうち、改正労働施策総合推進法に基づいて対応されるものは含まれません。

令和7年度の個別労働紛争解決制度の施行状況(厚生労働省の報道発表より。総合労働相談の行は全体の件数、ほかの3行は最多の内容の件数)
区分最多の内容件数・前年度比
総合労働相談(全体)-119万8,010件(18年連続で100万件超)
民事上の個別労働関係紛争の相談いじめ・嫌がらせ5万5,614件(1.1%増。14年連続の最多)
助言・指導の申出労働条件の引き下げ1,220件(10.6%増)。この内容だけの件数
あっせんの申請解雇892件(12.6%増)。この内容だけの件数

事業主の立場:あっせんの開始通知を受け取ったとき

あっせんは、労働者からだけでなく事業主からも申請でき、通知を受けた側は参加するかどうかを選べます。

開始の通知を受けた当事者は、あっせんに参加するかどうかの意思を確認されます。参加しない意思を示すと、あっせんは実施されず打切りになり、他の紛争解決機関の説明・紹介に進みます。参加しても、あっせん案の受諾は強制されません。

通知を受けたあとの進め方や、合意する内容の判断は、個別の事案で変わります。総合労働相談コーナーで制度の説明を受けるほか、弁護士や社会保険労務士などの専門家に確認します。

  • 開始の通知で、参加するかどうかの意思を確認される
  • 参加しない意思を示すと、あっせんは実施されず打切りになる
  • 参加しても、あっせん案の受諾は強制されない
  • 労働者が申出・申請したことを理由に、解雇その他の不利益な取扱いをしない
  • 個別の事案の判断は、専門家に確認する

よくある質問

特定技能外国人も、この制度を使えますか?

パンフレットは、総合労働相談コーナーでは多様な言語による相談も対象としています。国籍による制限は、確認した資料には書かれていません。利用できるかどうかや対応言語は、都道府県労働局の総合労働相談コーナーに確かめてください。

利用に費用はかかりますか?

総合労働相談、助言・指導、あっせんのいずれも無料です。労働審判と民事訴訟は有料と、パンフレットの比較表に書かれています。

あっせんを申請する前に、助言・指導を受ける必要はありますか?

パンフレットは、助言・指導を経ることは必須ではないとしています。あっせんは、助言・指導で解決しなかった場合の選択肢の一つであり、最初から申請することもできます。

賃金の未払いなど法違反の問題も、あっせんで扱えますか?

この制度の対象は民事上の個別労働紛争で、労働基準法等の違反に関するものは除かれています。法違反のおそれがある場合は、労働基準監督署等に取り次ぐとされています。

相手方があっせんに参加しないとどうなりますか?

あっせんは実施されず、打切りになります。申請人が通知を受けた日から30日以内に、あっせんの目的だった請求について訴えを起こすと、時効の完成猶予についてはあっせんの申請の時に訴えを起こしたものとみなされます。

あっせんで合意した内容を相手が守らないときは?

あっせんの合意は民法上の和解契約の効力を持ちますが、パンフレットの比較表では強制執行はできないとされています。その後の手続は、専門家や総合労働相談コーナーに確かめてください。

参照した公的一次資料

試算に使う一次資料の一覧と確認状況を見る

次に確認すること

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