この記事の対象:労働委員会からあっせんの通知や救済申立ての連絡を受けた特定技能所属機関の事業主・人事担当者、従業員の相談先を案内する登録支援機関の担当者
労働委員会の2つの手続:あっせんと救済申立て
労働委員会は、個別労働紛争のあっせんと、労働組合法に基づく不当労働行為の救済を扱う機関です。
中央労働委員会の案内によると、賃金、解雇、配置転換など労働条件に関するトラブルを当事者で解決できないときは、労働委員会で、労働問題の専門家である委員が労働者と使用者の間に入って解決を手伝うとされています。これが個別労働紛争のあっせんです。名称、制度の内容、処理の方法は、都道府県労働委員会ごとに異なると注記されています。
もう一つの不当労働行為の救済は、憲法で保障された団結権等の実効性を確保するために、労働組合法に定められた制度です。労働組合や労働者が、使用者から不当労働行為を受けたときに、労働委員会へ救済を申し立てます。都道府県労働局の個別労働紛争解決制度とは別の機関の手続です。
都道府県労働局の制度は労働局の助言・指導とあっせんのガイドで確認できます。
| 項目 | 個別労働紛争のあっせん | 不当労働行為の救済 |
|---|---|---|
| 根拠 | 個別労働紛争解決促進法(第20条) | 労働組合法(第7条) |
| 申請・申立てをする人 | 紛争が起きている事業所で働く(または働いていた)個々の労働者と、その事業主 | 労働組合や労働者 |
| 内容 | 委員が間に入り、双方の話し合いと解決を促す | 労働委員会が審査し、不当労働行為が認められれば救済命令を出す |
| 最初に扱う機関 | 事業所が所在する都道府県の労働委員会 | 都道府県労働委員会(不服は中央労働委員会や裁判所で争える) |
個別労働紛争のあっせん:三者構成のあっせん員と、解決・打切り・取下げ
あっせんは、事業所が所在する都道府県労働委員会事務局へ申請書を出すことから始まります。
案内によると、あっせんが申請できるのは、紛争が現に起きている事業所で働く(または働いていた)個々の労働者とその事業主です。あっせん員は、候補者の中から、通常3名(公益側、労働者側、使用者側が各1名)が指名されます。公益側は学識経験者等、労働者側は労働組合役員等、使用者側は会社経営者等の三者構成です。
あっせんの前に、事務局職員が申請書に基づいて、労働者と事業主の双方から紛争の経過と主張の要点を聞きます。調べる際に必要な資料の提出を求められた場合は、双方に協力してほしいとされています。
あっせんは、双方の都合が良い日を選んで行われます。あっせん員は双方から個別に事情を聞き、協議し、説得、意向の打診、解決案(あっせん案)の提示などで解決を促します。
あっせんの終わり方は3つです。双方があっせん案を受け入れたり、合意書等を結んだりすれば解決です。
被申請者が応じないとき、または双方に歩み寄りが見られず解決の見込みがないとあっせん員が判断したときは、打切りです。双方が事前に自主的に解決して申請者が取下書を出した場合は、取下げになります。
- あっせん申請
申請書を、事業所が所在する都道府県労働委員会事務局に出します。
- あっせん員の指名
候補者の中から、通常、公益側・労働者側・使用者側の3名が指名されます。
- 事前調査
事務局職員が、双方から紛争の経過と主張の要点を聞きます。
- あっせんによる調整
双方の都合が良い日に、あっせん員が個別に事情を聞き、必要に応じてあっせん案を示します。
- 終結
解決、打切り、取下げのいずれかで終わります。
参加の強制力と合意の効力:応じなければ打切り、合意は和解契約
労働委員会のあっせんには、相手方に参加を強制する力はありません。
Q&Aによると、相手方(被申請者)への参加の強制力はありませんが、労働委員会の事務局職員または委員が、理解してもらえるよう調整に努めます。応じなかった場合は、あっせんは「打切り(または不開始等)」になります。
使用者も、あっせんを申請できます。非正規社員(パートタイマー、アルバイトなど)も利用でき、労働組合に加入していても、個人的な内容であれば利用できます。
費用は一切かかりません。ただし、資料を郵送する際の切手代などがかかる労働委員会があります。申請書を受理した後は、申請者の氏名と申請内容が相手方に伝わりますが、関係者以外には秘密が守られるとされています。
あっせん案に合意すると、争いをやめることを約束する契約(民法695条の和解)が結ばれたことになり、当事者はその契約に従う義務が生じます。ただし、あっせんの成立だけでは、強制執行はできません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 相手方の参加 | 強制力はない。応じなければ打切り(または不開始等) |
| 使用者の申請 | できる |
| 費用 | 一切かからない(切手代等がかかる労働委員会がある) |
| 秘密 | 申請者の氏名・申請内容は相手方に伝わる。関係者以外には守られる |
| 合意の効力 | 民法695条の和解契約。成立だけでは強制執行はできない |
労働局のあっせんが進行中のときは、労働委員会のあっせんは始まらない
個別労働紛争を扱う機関は複数あり、同じ問題を並行して申請することはできない扱いがあります。
Q&Aによると、労働局でのあっせん手続が進行している場合は、同じ問題について労働委員会へあっせんを申請しても、あっせんは開始しません。労働局長による助言・指導が行われている場合や、裁判所の民事調停が進行している場合も同様です。ただし、都道府県労働委員会によって取扱いが異なるため、詳しくは事業所が所在する都道府県の労働委員会に確かめるよう案内されています。
体制の違いとして、労働委員会のあっせんは公労使の三者構成のあっせん員が担当し、都道府県労働局のあっせんは学識経験者等の紛争調整委員が担当すると、案内の比較表に載っています。どの機関を使うかは、紛争の性質と、どの方法で解決したいかで変わります。
不当労働行為は4種類:労働組合法第7条
労働組合法第7条は、使用者の労働組合や労働者に対する4つの行為を「不当労働行為」として禁止しています。
中央労働委員会の案内が挙げる4つは、組合員であることを理由とする解雇その他の不利益取扱い、正当な理由のない団体交渉の拒否、労働組合の運営等に対する支配介入と経費援助、労働委員会への申立て等を理由とする不利益取扱いです。団体交渉の拒否の例として、案内は、当該企業で働く労働者以外の者が労働組合に加入していることを理由とする拒否と、形式的に団体交渉に応じても実質的に誠実な交渉を行わない不誠実団交を挙げています。
使用者から不当労働行為を受けた労働組合や労働者は、労働委員会に救済を申し立てられます。労働委員会は申立てに基づいて審査し、不当労働行為の事実があると認めれば、使用者に復職、賃金差額の支払い、組合運営への介入の禁止などの救済命令を出します。最初に扱うのは都道府県労働委員会で、不服があれば中央労働委員会や裁判所でさらに争えます。
| 号 | 禁止される行為 | 案内が挙げる例 |
|---|---|---|
| 第1号 | 組合員であることを理由とする解雇その他の不利益取扱い | 労働組合への加入や正当な行為を理由とする解雇・賃金や昇格の差別。労働組合に加入しない、または脱退することを雇用条件にすること |
| 第2号 | 正当な理由のない団体交渉の拒否 | 当該企業で働く労働者以外の者が加入していることを理由とする拒否。実質的に誠実な交渉を行わない不誠実団交 |
| 第3号 | 労働組合の運営等に対する支配介入・経費援助 | 労働組合の結成の阻止・妨害、日常の運営や争議行為への干渉。運営経費に経理上の援助を与えること |
| 第4号 | 労働委員会への申立て等を理由とする不利益取扱い | 調査・審問等で労働者が証拠を提出したり発言したりしたことを理由とする不利益取扱い |
事業主が確認しておくこと:窓口は事業所の所在地の労働委員会
労働委員会から連絡を受けたときの窓口は、事業所が所在する都道府県の労働委員会です。
あっせんの申請書は、紛争が起きている事業所が所在する都道府県労働委員会事務局に出す扱いです。制度の内容や処理方法は都道府県ごとに異なるため、名称、必要書類、郵送費の扱いなどは、その労働委員会に確かめます。
案内の他機関との比較表は、労働委員会が行うあっせんの欄から東京・兵庫・福岡を除いています。この3都府県の事業所は、都道府県の窓口で個別労働紛争の扱いを確かめてください。
個別の事案でどう対応するかは、労働委員会の事務局、弁護士、社会保険労務士などの専門家に確認してください。当サイトは労務の個別助言をしません。
- 事業所が所在する都道府県の労働委員会を確かめた
- あっせんには参加の強制力がなく、応じなければ打切りになる点を把握した
- 労働局のあっせん・助言・指導が進行中の同じ問題は、労働委員会のあっせんが始まらない扱いを把握した
- 労働委員会への申立て等を理由とする不利益取扱いは、不当労働行為に当たる点を把握した
- 個別の事案の判断は、専門家に確認する
よくある質問
労働委員会のあっせんと、労働局のあっせんは何が違いますか?
案内の比較表では、労働委員会のあっせんは公益・労働者・使用者の三者構成のあっせん員が行い、都道府県労働局のあっせんは学識経験者等の紛争調整委員が行うとされています。また、労働局でのあっせんが進行しているときは、同じ問題の労働委員会へのあっせん申請では、あっせんは開始しません。
労働委員会のあっせんに、相手が参加しないとどうなりますか?
参加の強制力はなく、応じなかった場合は「打切り(または不開始等)」になります。労働委員会の職員または委員が、相手方に理解してもらえるよう調整に努めるとされています。
労働組合に入っている従業員も、あっせんを利用できますか?
Q&Aは、労働組合に加入していても、個人的な内容であれば、個別労働紛争のあっせん制度を利用できるとしています。
団体交渉の申入れは、断ってもよいのですか?
案内は、正当な理由のない団体交渉の拒否と、形式的に応じるだけで実質的に誠実な交渉をしない不誠実団交を、不当労働行為として挙げています。個別の申入れへの対応は、専門家や労働委員会に確認してください。
不当労働行為の救済申立てを受けた場合、どこが審査しますか?
最初に扱うのは都道府県労働委員会です。不服があれば、中央労働委員会や裁判所でさらに争えると案内されています。
参照した公的一次資料
- 中央労働委員会「個別労働紛争のあっせん」(確認日:2026年10月22日、次回確認:2027年1月22日)
- 中央労働委員会「個別労働紛争のあっせん Q&A」(確認日:2026年10月22日、次回確認:2027年1月22日)
- 中央労働委員会「不当労働行為救済制度とは」(確認日:2026年10月22日、次回確認:2027年1月22日)
- 中央労働委員会「不当労働行為事件の審査手続」(確認日:2026年10月22日、次回確認:2027年1月22日)