この記事の対象:特定技能外国人の賃金・残業代の支払いを管理する受入れ企業の人事・経理担当者、帰国前の賃金の精算を案内する登録支援機関の担当者
賃金請求権の時効:支払期日から5年、当分の間は3年
労働基準法第115条は賃金請求権の時効を5年と定め、同法の附則第143条により、当分の間はその期間が3年とされています。
厚生労働省のQ&Aによると、2020年4月1日から施行された改正で、賃金請求権の消滅時効は、賃金の支払期日から5年(それまでは2年)に延びました。ただし当分の間は3年とされています。対象になるのは、2020年4月1日以降に支払期日が来る賃金です。
この期間は、全ての労働者に同じです。労働基準法第3条は、使用者が労働者の国籍を理由に、賃金や労働時間などの労働条件で差別的な取扱いをしてはならないと定めており、第115条の期間は国籍を問わず全ての労働者に適用されます。この記事は法令と公的な資料の整理で、個別の請求や労務の判断は、労働基準監督署や社会保険労務士などの専門家に確認してください。
| 労働基準法の条文 | 内容 |
|---|---|
| 第23条 | 金品の返還(賃金の請求に限る) |
| 第24条 | 賃金の支払 |
| 第25条 | 非常時払 |
| 第26条 | 休業手当 |
| 第27条 | 出来高払制の保障給 |
| 第37条 | 時間外・休日労働などに対する割増賃金 |
| 第39条第9項 | 年次有給休暇中の賃金 |
| 第59条 | 未成年者の賃金 |
付加金・記録の保存・年休権・退職金は、期間がそれぞれ違う
付加金の請求期間と記録の保存期間は賃金請求権と同じく5年(当分の間3年)ですが、年次有給休暇権は2年、退職金は5年のままです。
付加金とは、裁判所が労働者の請求により、使用者に未払賃金に加えて同じ額の支払いを命じることができる制度です。解雇予告手当、休業手当、割増賃金、年次有給休暇中の賃金の違反が対象で、請求できる期間は違反のあった時から5年以内(当分の間は3年)です。
年次有給休暇の権利そのものの時効は2年のままで、労働基準法上は前年度の年休権だけが繰り越されます。ただし、年休を取ったときの賃金の請求権と付加金は、当分の間3年に延びています。退職金の請求権は従来から5年で、変更はありません。
| 項目 | 法律上の期間 | 当分の間 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 賃金請求権の消滅時効 | 5年(改正前は2年) | 3年 | 第115条・附則第143条 |
| 賃金台帳などの記録の保存 | 5年(改正前は3年) | 3年 | 第109条・附則第143条 |
| 付加金の請求期間 | 5年(改正前は2年) | 3年 | 第114条・附則第143条 |
| 年次有給休暇権の消滅時効 | 2年 | 2年のまま | 第115条 |
| 退職金の請求権 | 5年 | 5年のまま | 第115条 |
割増賃金の算定ミスを直すときは、3年分をさかのぼる場合がある
割増賃金の計算に入れるべき手当が入っていなかったとき、労働基準監督署の是正勧告は、以前の2年分でなく3年分になる場合があります。
厚生労働省のQ&Aは、割増賃金の算定の基礎に入れるべき手当が入っていなかったために、不足分をさかのぼって是正するよう労働基準監督署から勧告を受けた場合、従来は2年分だったものが3年分になり、金額が大きくなることもあると注意を促しています。
特定技能外国人の残業代にも、日本人と同じ労働基準法が適用されます。割増賃金の計算に含める手当の範囲は、割増賃金のガイドで整理しています。
割増賃金の率と計算に入れる手当は割増賃金のガイドで確認できます。
賃金台帳などの保存期間は、賃金の支払期日から数える場合がある
厚生労働省のリーフレットは、賃金の支払いに関する記録で、賃金の支払期日が記録の完結の日などより遅いときは、その支払期日が保存期間の起算日になると明確化しています。
労働基準法第109条は、使用者に、労働者名簿、賃金台帳、雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を保存する義務を定めています。条文は5年ですが、厚生労働省は、当分の間は3年としています。
厚生労働省のリーフレットは、賃金に関する書類などで、賃金の支払期日が記録の完結の日より遅い場合は、その支払期日が保存期間の起算日になると明確化しています。たとえば4月分の賃金を5月15日に払う場合、4月30日に完結するタイムカードの保存期間は、5月15日から数えます。
この起算日の明確化は、賃金台帳、賃金に関する書類、出勤簿やタイムカードなどの重要書類のうち、賃金の支払いに関するものに限られます。雇入れや解雇、災害補償に関する書類は保存期間の対象ですが、この明確化の対象ではありません。記載事項や保存の方法は、別のガイドで整理しています。
労働者名簿と賃金台帳の記載事項は労働者名簿・賃金台帳のガイドで確認できます。
- 賃金台帳・出勤簿・タイムカードを、賃金の支払期日から少なくとも3年は保存する
- 雇入れ・解雇・災害補償に関する書類も、保存期間の対象であることを確認する
- 割増賃金の対象になる手当の範囲を確認し、算定の誤りがないか点検する
よくある質問
未払いの賃金は、いつまで請求できますか?
厚生労働省の資料では、賃金請求権の消滅時効は賃金の支払期日から5年、当分の間は3年です。2020年4月1日以降に支払期日が来る賃金が対象です。個別の事案は労働基準監督署などに確認してください。
外国人の従業員でも、時効の期間は日本人と同じですか?
賃金請求権の時効は、全ての労働者に適用される労働基準法の決まりです。労働基準法第3条は、国籍を理由に賃金などの労働条件で差別的な取扱いをしてはならないと定めています。
年次有給休暇の権利も3年で消えますか?
年休権そのものの時効は2年のままです。年休を取ったときの賃金の請求権と付加金は、当分の間3年です。
退職金の請求権の時効は3年ですか?
厚生労働省のQ&Aは、退職金請求権の消滅時効は従来から5年で、変更はないとしています。
参照した公的一次資料
- e-Gov法令検索「労働基準法」(昭和22年法律第49号)(確認日:2026年10月8日、次回確認:2027年1月8日)
- 厚生労働省リーフレット「未払賃金が請求できる期間などが延長されています」(確認日:2026年10月17日、次回確認:2027年1月17日)
- 厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A「賃金請求権の消滅時効は、どのように変更されたのでしょうか?」(確認日:2026年10月17日、次回確認:2027年1月17日)
- 厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A「年次有給休暇権の時効は?」(確認日:2026年10月17日、次回確認:2027年1月17日)