この記事の対象:育成就労実施者の人事・総務担当者、監理支援機関の担当者、育成就労外国人の受入れを検討している企業の経営者
第6章の4つの禁止と1つの申告制度:誰に何が禁じられているか
運用要領の第6章(育成就労外国人の保護)は、禁止行為の3条(法第46条〜第48条)と、本人の申告を定める法第49条で構成されています。
法第46条の強制の禁止と法第47条の違約金・貯蓄金管理の禁止は、監理支援者等が対象です。監理支援者等には、監理支援機関、監理支援機関から業務委託を受けて監理支援を行う者、許可を受けずに監理支援を行う者が含まれます。
法第48条の旅券・在留カードの保管と私生活の自由の制限の禁止は、育成就労実施者、育成就労を行わせようとする者、監理支援者と、それらの役員・職員が対象です。法第46条と法第47条は育成就労実施者を対象としていませんが、使用者である実施者には労働基準法の同じ趣旨の禁止(強制労働の禁止、賠償予定の禁止、強制貯金の禁止)が別にかかります。
条文が保護の対象とするのは「育成就労外国人等」で、育成就労の対象となろうとする外国人も含まれます。
認定が取り消される場合は、認定の取消事由のガイドで整理しています。
| 条 | 内容 | 主な対象 | 運用要領が示す罰則 |
|---|---|---|---|
| 法第46条 | 暴行、脅迫、監禁などで、意思に反して育成就労を強制する | 監理支援者等 | 1年以上10年以下の拘禁刑または20万円以上300万円以下の罰金(法第108条) |
| 法第47条 | 育成就労の契約不履行の違約金・損害賠償額の予定、貯蓄の契約、貯蓄金の管理契約 | 監理支援者等 | 6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(法第111条第4号) |
| 法第48条第1項 | 育成就労外国人等の旅券・在留カードの保管 | 実施者、監理支援者、その役員・職員 | 意思に反して保管した場合、6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(法第111条第5号) |
| 法第48条第2項 | 外出その他の私生活の自由の不当な制限 | 実施者、監理支援者、その役員・職員 | 不利益や制裁金を示して通信・面談・外出の禁止を告知した場合、同じ罰則(法第111条第6号) |
| 法第49条 | 外国人本人の申告と、申告を理由とする不利益取扱いの禁止 | 実施者、監理支援機関、その役員・職員 | 不利益取扱いは同じ罰則(法第111条第7号) |
違約金・保証金・貯蓄金管理:送出機関への違約金の設定も認められない
法第47条は、育成就労の契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額を予定したりする契約を禁じています。貯蓄の契約をさせることと、貯蓄金を管理する契約も禁止です。
相手は、育成就労外国人等本人に限りません。配偶者、直系または同居の親族、その他社会生活で密接な関係を持つ人との契約も含まれます。運用要領は、違約金を取り決めると業務への従事の強制につながり、自由意思に反した人権侵害を引き起こすおそれがあるため、と理由を説明しています。
運用要領は、保証金の徴収は、この禁止する契約に当たるとしています。保証金の徴収その他、名目のいかんを問わず、外国人やその親族の金銭などの財産を管理してはならないとも書いています。
監理支援機関が、外国人が契約を守らなかった場合を想定して、外国の送出機関に違約金を設定することも、あってはならないとしています。違約金を払う立場の送出機関が、外国人から保証金や高額な手数料を取るおそれがあるためです。
運用要領は、規則第13条第2項第6号ハ(1)にも違反すると説明し、技能実習制度では、この内容の契約を結んだことで監理団体の許可の取消しの対象になった事例があると書いています。送出機関と契約するときは、内容を十分に確認するよう求めています。
実施者は法第47条の対象ではありませんが、労働基準法第16条(賠償予定の禁止)と第18条(強制貯金)が適用されます。これに違反した場合の罰則は、育成就労法と同じ量刑です。
送出機関に払う費用の上限は、送出機関の手数料上限のガイドで確認できます。
旅券・在留カードの保管と私生活の制限:同意があっても禁止
法第48条は、育成就労外国人等の旅券と在留カードを保管することを禁じています。外出その他の私生活の自由を不当に制限することも禁じています。
在留カードには、在留カードとして使用するマイナンバーカードも含まれます。運用要領は、保管の禁止は、外国人の同意の有無や理由によらないと書いています。とくに本人の意思に反して保管した場合に罰則の対象になります。
私生活の自由の制限として、運用要領は次のような行為を挙げています。私物の携帯電話などの取り上げ、外出の一律の禁止(宿泊施設に合理的な理由なく一律の門限を設けることを含む)、男女交際の禁止、妊娠しないことなどの誓約、健康保険証として使うマイナンバーカード(資格確認書を含む)を取り上げるなど医療機関の受診を妨げる行為、居室などのプライベートな空間に理由なくカメラを設置する行為です。防犯目的で、プライベートな空間が写らないように設置する場合は除かれます。
不利益や制裁金を示して、育成就労の時間以外の通信、面談、外出の全部または一部を禁止すると告知した場合は、罰則の対象です。社内の寮規則や誓約書を見直すときは、この例示に当たる内容が入っていないかが確認点になります。
特定技能での同じ趣旨の決まりは、在留カード・旅券の保管禁止のガイドで確認できます。
- 旅券・在留カード・マイナンバーカードを、会社や監理支援機関が預かっていない
- 寮に、合理的な理由のない一律の門限や外出の禁止を設けていない
- 私物の携帯電話を取り上げたり、男女交際や妊娠を禁じる誓約を求めたりしていない
- 居室などのプライベートな空間にカメラを設置していない(防犯目的で空間が写らないものを除く)
- 保証金や貯蓄金の管理をしていない
本人の申告と不利益取扱いの禁止
育成就労実施者や監理支援機関、その役員・職員が育成就労法令に違反する事実があるとき、育成就労外国人は、出入国在留管理庁長官と厚生労働大臣に申告できます(法第49条第1項)。
申告は、外国人育成就労機構(機構)が実施する母国語の相談窓口を通じて行うこともできます。運用要領は、申告の制度と方法を、入国後講習で法的保護に必要な情報として外国人に確実に周知するよう求めています。申告の制度は、入国時に外国人へ配付される育成就労外国人手帳にも記載されています。
申告は、本人だけでなく、本人から委任を受けた代理人も行えます。代理人が行うときは、本人の意思による申告であることを明らかにするため、本人の委任状をあわせて提出します。
実施者や監理支援機関、その役員・職員が、申告したことを理由に育成就労の中止その他の不利益な取扱いをすることは禁止されています(法第49条第2項)。違反すると、6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です。
育成就労外国人には日本人と同じく労働基準法関係法令が適用されます。この法令の違反は、労働基準監督機関に申告することもできます。
監理支援機関の許可に対する処分は、監理支援機関の改善命令・許可取消しのガイドで整理しています。
よくある質問
本人が預かってほしいと言った場合も、パスポートを保管してはいけませんか?
運用要領は、旅券や在留カードの保管は、外国人の同意の有無や理由によらず禁止されていると書いています。とくに本人の意思に反して保管した場合は罰則の対象です。
保証金を取らず、送出機関との契約に違約金の条項があるだけならよいですか?
運用要領は、監理支援機関が外国の送出機関に違約金などを設定することも、あってはならないとしています。送出機関が外国人から保証金や高額な手数料を取るおそれがあるためです。送出機関と契約するときは、内容を十分に確認するよう求めています。
寮に門限を設けることはできませんか?
運用要領は、宿泊施設に合理的な理由なく一律の門限を設けることを、私生活の自由の不当な制限の例に挙げています。個別の寮規則の判断は、所管の機関に確認してください。
外国人が申告したことを理由に配置や契約を変えてもよいですか?
法第49条第2項は、申告を理由として、育成就労の中止その他の不利益な取扱いをすることを禁じています。違反した場合は、6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です。
参照した公的一次資料
- 出入国在留管理庁・厚生労働省「育成就労制度 運用要領 ~関係者の皆さまへ~」(令和8年8月版)(確認日:2026年10月3日、次回確認:2027年1月3日)
- 出入国在留管理庁「育成就労制度運用要領のポイント」(確認日:2026年9月7日、次回確認:2026年12月7日)
- 出入国在留管理庁・厚生労働省「育成就労制度 運用要領 第4章(育成就労計画の認定)」(確認日:2026年10月10日、次回確認:2027年2月10日)
- 厚生労働省法令等データベースサービス「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律施行規則」(確認日:2026年9月25日、次回確認:2026年12月25日)
次に確認すること
試算ツールは特定技能1号の費用が対象です。育成就労から特定技能1号へ移った後の支援費は「1号特定技能外国人支援の体制」欄に、見積が手元にある費目は「費目別の確認状況」欄に入力します。育成就労の監理支援費や送出し関連の費用は入力欄がありません。