この記事の対象:特定技能外国人を雇用している、または副業・兼業の申出を受けた企業の人事・労務担当者
通算の対象になる副業・兼業
労働基準法第38条第1項は、労働時間は事業場を異にする場合でも、労働時間に関する規定の適用については通算すると定めています。
厚生労働省の解説資料は、ここでいう「事業場を異にする場合」に、事業主を異にする場合も含まれるとしています(昭和23年基発第769号)。自社と副業先が別の会社でも、労働者が両方に雇用されていれば通算の対象です。
通算の対象になるのは、事業主を異にする複数の事業場で、労基法の労働時間規制が適用される労働者に当たる場合です。フリーランス、独立、起業、共同経営、アドバイザー、コンサルタント、顧問、理事、監事など、労基法が適用されない形の副業は通算されません。
労基法は適用されても、労働時間規制が適用されない場合も通算の対象外です。資料は例として、農業・畜産業・養蚕業・水産業、管理監督者・機密事務取扱者、監視・断続的労働者、高度プロフェッショナル制度を挙げています。いずれの場合も、就業時間が長くならないよう配慮することが望ましいとされています。
副業の申出を受けたときは、副業先の事業内容と業務内容に加え、通算の対象になるかを確認します。対象のときは、副業先との労働契約の締結日と期間、所定労働日・所定労働時間・始業終業時刻、所定外労働の有無と見込み時間数・最大時間数、実労働時間の報告の手続、確認の頻度を確かめることが望ましいとされています。
原則的な方法:契約の先後で所定労働時間、発生順で所定外
原則的な方法では、まず労働契約を結んだ先後の順に所定労働時間を通算し、次に所定外労働を発生した順に通算します。
所定労働時間を通算した結果、自社の労働時間制度の法定労働時間を超える部分は時間外労働になります。その部分は、時間的に後から労働契約を結んだ企業が、自社の36協定の定めに従って行わせます。
解説資料の例では、企業Aが先に契約し所定労働時間が1日5時間、企業Bが後に契約し所定労働時間が1日4時間のとき、5時間と4時間の合計から8時間を引いた1時間が、企業Bの法定時間外労働になります。
所定外労働の通算には、所定労働日の所定外労働と、所定休日の労働時間の両方が含まれます。割増賃金は、それぞれの法定外労働時間を発生させた使用者が、法定労働時間を超えた時間のうち自ら労働させた時間について支払うとされています(厚生労働省Q&A問1-1)。
| 手順 | 内容 | 時間外労働を行わせる企業 |
|---|---|---|
| 1 所定労働時間の通算 | 労働契約を結んだ先後の順に合計する | 法定労働時間を超える部分は後に契約した企業 |
| 2 所定外労働の通算 | 所定外労働が発生した順に加える | その法定外労働時間を発生させた企業 |
| 3 割増賃金 | 自ら労働させた法定外の時間について計算する | それぞれの使用者が支払う |
簡便な方法:管理モデルの上限設定と責任
管理モデルは、通算の手間を減らすために、各事業場の労働時間の上限をあらかじめ決めておく簡便な方法です。
先に契約した企業Aの法定外労働時間と、後に契約した企業Bの労働時間(所定と所定外)を合計して、単月100時間未満、複数月平均80時間以内になる範囲で、各事業場の上限を設定します。この数字は労基法第36条第6項第2号・第3号が定める、時間外労働と休日労働の合計の上限に対応しています。
導入は、使用者Aと労働者、使用者Bと労働者の間でそれぞれ合意すれば足り、三者連名の合意までは求められていません(厚生労働省の解説資料)。どちらの方法にするかは、副業・兼業を行う労働者ごとに、自社で取り入れやすい方を採用します。
割増賃金は、企業Aが自社の法定外労働時間の分、企業Bが自社の労働時間の全部の分を払います。設定した上限を逸脱して労働させた使用者は、労働時間通算に関する法違反を問われ得るとされています。
健康管理と保険の扱い
健康診断や面接指導は副業の有無にかかわらず行いますが、保険は制度ごとに副業先との合算の扱いが違います。
安全衛生法に基づく健康診断、長時間労働者への面接指導、ストレスチェックは、副業・兼業をしているかにかかわらず実施します。対象者を選ぶときに、副業先の労働時間を通算することはされていません。ただし、使用者の指示で副業を始めた場合は、通算した労働時間に基づく実施が適当とされています。
労災保険は、非災害発生事業場の賃金額も合算して給付を算定します。業務上の負荷は総合的に評価して労災認定し、事業場間の移動中の災害は通勤災害の対象です。
雇用保険は、複数の事業主に雇用されている場合、主たる賃金を受ける雇用関係についてだけ被保険者になります。いずれも週20時間未満の副業(資料の例は15時間と10時間)では適用されません。社会保険は事業所ごとに適用を判断し、各事業所で要件を満たすときに報酬を合算して標準報酬月額を算定します。
- 副業の申出を受けたら、副業先の事業内容・業務内容・通算の対象かを確認している
- 対象のとき、副業先の契約日、所定労働時間、所定外労働の見込みを書面で確認している
- 原則的な方法か管理モデルかを、労働者ごとに決めている
- 管理モデルのときは、各事業場の上限を単月100時間未満・複数月平均80時間以内で設定している
- 割増賃金を、自ら労働させた法定外労働時間の分について計算している
よくある質問
副業先がフリーランスの仕事でも通算しますか?
労基法が適用されない形の副業(フリーランス、独立、起業、顧問など)は、通算の対象になりません。ただし厚生労働省の資料は、就業時間が長くならないよう配慮することが望ましいとしています。
副業先の割増賃金は誰が払いますか?
それぞれの法定外労働時間を発生させた使用者が、自ら労働させた時間について支払います。原則的な方法では、時間的に後から契約した企業に法定時間外が生じやすくなります。
管理モデルの上限はいくつですか?
先に契約した企業の法定外労働時間と、後に契約した企業の労働時間を合計して、単月100時間未満、複数月平均80時間以内になる範囲で、各事業場の上限を設定します。
特定技能外国人の副業は認められますか?
在留資格で認められる活動の範囲は、別のガイドで整理しています。このガイドは、副業が認められる場合に生じる労働時間の通算だけを扱います。個別の判断は出入国在留管理局と労働基準監督署に確認してください。
参照した公的一次資料
- e-Gov法令検索「労働基準法」(昭和22年法律第49号)(確認日:2026年10月8日、次回確認:2027年1月8日)
- 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン わかりやすい解説(2025.3)」(確認日:2026年10月19日、次回確認:2027年1月19日)
- 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン Q&A」(確認日:2026年10月19日、次回確認:2027年1月19日)
- 厚生労働省「副業・兼業」(確認日:2026年10月19日、次回確認:2027年1月19日)