この記事の対象:溶接や有機溶剤を使う製造・建設などの現場で特定技能外国人を雇う企業の安全衛生担当者、測定を外部に委託する総務担当者
何が変わったか:個人ばく露測定が作業環境測定に位置づけられた
令和8年10月1日から、労働者が有害な物質にさらされる程度を調べる個人ばく露測定は、作業環境測定の一部として法律に位置づけられました。
個人ばく露測定とは、労働者の身体に試料採取機器を付けて、その人が吸い込む物質の量を調べる測定です。厚生労働省の通達(基発0730第2号)は、改正前の個人ばく露測定を、作業環境測定ではなく労働安全衛生法第22条や第57条の3に基づく措置として扱っていたと説明しています。リスクアセスメントのための個人ばく露測定は、方法も測定する人の要件も決まっておらず、精度を確かめにくいという課題がありました。
令和7年法律第33号は、労働安全衛生法第65条の3を新設し、個人ばく露測定を作業環境測定に含めました。e-Govの現行条文では、第65条の3第4項が、これらの測定は作業環境測定基準に従って行うと定めています。厚生労働省のリーフレットは、有資格者が作業環境測定基準に従って行うことが義務になったと説明しています。
施行は令和8年10月1日です。通達によれば、整備省令の一部の規定は令和8年8月1日または9月1日から施行されました。2026年10月時点で、新しい制度はすでに動いています。
| 用語 | 通達の説明 |
|---|---|
| 作業環境測定 | 作業環境の実態(労働者の有害な因子へのばく露の程度を含む)を把握するため、空気環境その他の作業環境について行うデザイン、サンプリング及び分析 |
| 個人ばく露測定 | 作業環境測定のうち、作業環境における労働者の有害な因子へのばく露の程度を把握するために行うもの |
測定が必要になる場合:第65条の3の3つの項
第65条の3は、測定を義務とする場合と、必要に応じて行う場合を分けています。
第1項は、第22条の健康障害防止措置を講ずる場合で、厚生労働省令で定めるときに、作業環境測定を行わなければならないという義務です。第2項は、第65条の2第1項の改善措置を講ずる場合で、省令で定めるときの義務です。第3項は、第57条の3第1項のリスクアセスメントの調査に当たり、必要に応じて作業環境測定を行うものとしています。
第1項の義務に当たる場面は、労働安全衛生規則第42条の5が定めています。通達は、次の3つを挙げています。第三管理区分で改善が難しい作業場で、身体に装着する試料採取機器を使って測定するとき。
その測定の後に、6か月以内ごとに1回、定期に同じ測定をするとき。金属アーク溶接等作業を継続的に行う屋内作業場で、新たな作業の方法を採用しようとするときなどです。第2項の場面は、改善措置の評価のための測定です。
通達は、第1項の測定には労働安全衛生法第119条第1号の罰則が適用されると説明しています。リスクアセスメントのための第3項の測定は「必要に応じて」行うもので、第1項とは位置づけが違います。
溶接ヒュームの濃度測定そのものは、溶接ヒューム対策のガイドで確認できます。
| 項 | 場面 | 性格 |
|---|---|---|
| 第1項 | 第22条の健康障害防止措置のうち省令で定めるとき(第三管理区分作業場の測定、溶接ヒュームの測定など) | 行わなければならない(罰則の適用あり) |
| 第2項 | 第65条の2第1項の改善措置の評価のための測定 | 行わなければならない |
| 第3項 | 第57条の3第1項のリスクアセスメントの調査 | 必要に応じて行うものとする |
測定を頼める人:デザイン・サンプリングと分析で違う
通達は、改善が難しい第三管理区分作業場の有機溶剤の測定を例に、実施者の要件を工程ごとに定めています。鉛中毒予防規則、特定化学物質障害予防規則、粉じん障害防止規則も、これに準じて改正されています。
デザインとサンプリングは、個人ばく露測定に係るデザインとサンプリングについて登録を受けている作業環境測定士または作業環境測定機関、あるいは同じ工程について指定を受けている指定測定機関が実施します。分析は、作業場の種類について登録を受けた第一種作業環境測定士または作業環境測定機関、または指定を受けている指定測定機関が実施します。
補助者を使える場合もあります。サンプリングは、登録を受けた機関のサンプリング補助者講習を修了した人に補助させることができます。分析は、一級化学分析技能士が所属する事業場で採取した試料に限り、一級化学分析技能士に補助させることができます。
個人ばく露測定のデザインとサンプリングについて十分な知識と技能がある人として、厚生労働大臣が告示(OH告示)で定めたのは、日本作業環境測定協会が認定するオキュペイショナルハイジニストなどです。国際オキュペイショナルハイジニスト協会の認証を受けた外国の機関が認定するオキュペイショナルハイジニストやインダストリアルハイジニスト等の資格を持つ人も含まれます。
この告示は、登録を受ける人の資格の要件を定めるものです。資格を持つだけで測定を行えるわけではないため、委託先が登録を受けているかを確認します。
| 工程 | 実施者 | 補助者 |
|---|---|---|
| デザイン・サンプリング | 個人ばく露測定について登録を受けた作業環境測定士・作業環境測定機関、または指定を受けた指定測定機関 | サンプリング補助者講習の修了者(サンプリングのみ) |
| 分析 | 作業場の種類について登録を受けた第一種作業環境測定士・作業環境測定機関、または指定を受けた指定測定機関 | 一級化学分析技能士(その人が所属する事業場で採取した試料に限る) |
旧講習の経過措置と、社内で確認すること
改正前の講習を修了した人や、旧制度で登録した講習機関には、経過措置が置かれています。
令和6年の改正省令は、整備省令により令和8年9月1日に廃止されました。通達は、旧制度で登録を受けた個人ばく露測定講習機関は、登録を受けた日から5年を経過する日までは、従来のデザイン等講習とサンプリング講習を引き続き行えるとしています。ただし、登録の更新はできません。
令和8年9月1日より前に行われた旧デザイン等講習と、同日以降に旧講習機関が行う旧デザイン等講習は、個人ばく露測定の科目とみなされます。旧サンプリング講習は、サンプリング補助者講習とみなされます。測定を委託する先がどの資格で測定するかは、委託先に確認します。
溶接の現場については、特定化学物質障害予防規則第38条の21の第2項または第4項により、金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場で、保護具の選定等のために溶接ヒュームの濃度を測定するときは、身体に装着する試料採取機器を用いる方法で、作業環境測定基準に従って測定する必要があると通達は説明しています。
有機溶剤作業の換気設備や作業主任者は、有機溶剤作業のガイドで確認できます。
- 自社の屋内作業場に、金属アーク溶接等作業や第三管理区分の作業場があるかを確認した
- 個人ばく露測定を委託する先が、登録を受けた作業環境測定士・機関か、指定測定機関かを契約前に確認した
- 委託先が旧制度の講習修了者や旧登録機関の場合は、経過措置の期限を確認した
- 第三管理区分作業場では、測定後6か月以内ごとに1回の定期測定の予定を組んだ
よくある質問
個人ばく露測定の制度は、いつ変わりましたか?
令和7年法律第33号による改正の一部として、令和8年10月1日に施行されました。整備省令の一部の規定は、令和8年8月1日または9月1日から施行されています。
個人ばく露測定は、自社の担当者が自分で行ってよいですか?
通達は、デザインとサンプリングを登録を受けた作業環境測定士や機関など、分析を登録を受けた第一種作業環境測定士や機関などに実施させるとしています。自社の担当者が自分で行えるかは、これらの資格の有無で決まります。補助者として関われる場合の条件も通達に書かれています。
リスクアセスメントのための個人ばく露測定も義務ですか?
第65条の3第3項は、リスクアセスメントの調査に当たり、必要に応じて作業環境測定を行うものとしています。第1項の義務とは位置づけが異なります。
旧制度の講習を修了した人は、そのまま測定できますか?
通達は、令和8年9月1日前に行われた旧デザイン等講習と同日以降に旧登録機関が行うものを個人ばく露測定の科目とみなし、旧サンプリング講習をサンプリング補助者講習とみなすとしています。個別の資格の扱いは、所轄の労働局で確認してください。
参照した公的一次資料
- 厚生労働省 基発0730第2号(令和8年7月30日)労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律等の施行等について(個人ばく露測定等関係)(確認日:2026年10月24日、次回確認:2027年1月27日)
- 厚生労働省「労働安全衛生法及び作業環境測定法 改正の主なポイントについて」(事業主・労働災害防止団体向けリーフレット)(確認日:2026年10月24日、次回確認:2027年1月27日)
- e-Gov法令検索「労働安全衛生法」(確認日:2026年10月3日、次回確認:2026年12月3日)
- e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」(確認日:2026年10月3日、次回確認:2026年12月3日)