この記事の対象:マンホール・タンク・ピットなどの酸素欠乏危険場所で特定技能外国人を作業させる企業の安全衛生担当者
酸素欠乏と硫化水素中毒:規則が定める数値と作業の区分
酸素欠乏症等防止規則は、空気中の酸素の濃度が18パーセント未満の状態を「酸素欠乏」と定義しています。
硫化水素の濃度が100万分の10を超える状態も加えて、「酸素欠乏等」と呼びます。酸素欠乏の空気を吸うことで生じる症状が酸素欠乏症、硫化水素を吸うことで生じる症状が硫化水素中毒です(規則第2条)。厚生労働省の外国人労働者向け教材も、酸素濃度18パーセント未満を酸素欠乏とし、1回吸い込んだだけで死亡することもあると説明しています。
規則の対象は、労働安全衛生法施行令の別表第六に掲げる酸素欠乏危険場所での作業です。作業は2つに分かれます。
別表第六の第3号の3、第9号、第12号の場所(一部は厚生労働大臣が定める場所に限る)での作業が第二種酸素欠乏危険作業で、それ以外が第一種酸素欠乏危険作業です。第二種は硫化水素中毒のおそれも対象になるため、測定や講習の内容が一部異なります。
別表第六の場所に当たるかどうかは、自社の作業場所ごとに別表の原文で確認してください。
| 用語 | 規則での意味 |
|---|---|
| 酸素欠乏 | 空気中の酸素の濃度が18パーセント未満の状態 |
| 酸素欠乏等 | 酸素欠乏、または空気中の硫化水素の濃度が100万分の10を超える状態 |
| 第一種酸素欠乏危険作業 | 酸素欠乏危険作業のうち、第二種以外の作業 |
| 第二種酸素欠乏危険作業 | 別表第六の第3号の3・第9号・第12号の場所(一部は厚生労働大臣が定める場所に限る)での作業 |
作業の前:濃度の測定、換気、空気呼吸器等
事業者は、その日の作業を開始する前に、作業場の空気中の酸素の濃度を測定します。
第二種酸素欠乏危険作業の作業場では、酸素に加えて硫化水素の濃度も測定します(規則第3条第1項、施行令第21条第9号)。測定のたびに、測定日時、測定方法、測定箇所、測定条件、測定結果、測定を実施した者の氏名を記録し、3年間保存します。測定結果に基づいて酸素欠乏症等の防止措置を講じたときは、その措置の概要も記録して保存します(同条第2項)。
作業を行う場所は、酸素の濃度を18パーセント以上に保つように換気します。第二種は、酸素18パーセント以上、かつ硫化水素100万分の10以下です。換気に純酸素を使ってはいけません(規則第5条第1項・第3項)。
爆発や酸化を防ぐために換気できない場合や、作業の性質上換気が著しく困難な場合は、同時に就業する労働者の人数と同数以上の空気呼吸器等(空気呼吸器、酸素呼吸器、送気マスク)を備えて使わせます(規則第5条の2)。空気呼吸器等は、その日の作業を始める前に点検します(規則第7条)。
人の管理:作業主任者の選任と特別教育
酸素欠乏危険作業には、技能講習を修了した作業主任者を選任します。
作業主任者を選任する作業は、労働安全衛生法第14条と施行令第6条第21号が定めています。規則第11条は、第一種では酸素欠乏危険作業主任者技能講習または酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習の修了者、第二種では酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習の修了者から選任するとしています。
作業主任者は、作業の方法を決めて労働者を指揮し、その日の作業開始前などに酸素(第二種は硫化水素も)の濃度を測定し、測定器具や換気装置、空気呼吸器等を点検し、空気呼吸器等の使用状況を監視します(規則第11条第2項・第3項)。
酸素欠乏危険作業の業務に労働者を就かせるときは、特別の教育を行います(労働安全衛生法第59条第3項、規則第12条)。科目は、酸素欠乏(第二種は酸素欠乏等)の発生の原因、症状、空気呼吸器等の使用の方法、事故の場合の退避と救急そ生の方法などです。厚生労働省は、外国人労働者向けの安全衛生教育教材として、酸素欠乏の防止を扱う資料を公開しています。
作業中と異常時:点検、立入禁止、監視、退避、報告
作業中の措置と異常時の対応も、規則に条文ごとに定められています。
酸素欠乏等のおそれが生じたときは、直ちに作業を中止して作業者を退避させます。酸素欠乏症等にかかった人を救出する作業では、救出する労働者に空気呼吸器等を使わせます(規則第14条、第16条)。倒れた人を保護具なしで助けに行くと、救助者も酸素欠乏症になるおそれがあります。
労働者が酸素欠乏症等にかかったときは、遅滞なく、作業場所を管轄する労働基準監督署長に報告します(規則第29条)。
| 措置 | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 人員の点検 | 第8条 | 入場と退場のときに人員を点検する |
| 立入禁止 | 第9条 | 作業従事者以外の立入りを、見やすい箇所への表示などで禁止する |
| 監視人等 | 第13条 | 常時作業の状況を監視し、異常を直ちに通報する者を置くなどの措置をとる |
| 退避 | 第14条 | 酸素欠乏等のおそれが生じたら直ちに作業を中止して退避させる。おそれがないと確認するまで、指名した者以外の立入りも禁止する |
| 避難用具等 | 第15条 | 空気呼吸器等、はしご、繊維ロープ等を備える |
| 救出時の保護具 | 第16条 | 救出作業の労働者に空気呼吸器等を使わせる |
| 報告 | 第29条 | 酸素欠乏症等にかかったときは労働基準監督署長に報告する |
よくある質問
酸素欠乏とは、酸素の濃度がどれくらいの状態ですか?
酸素欠乏症等防止規則第2条は、空気中の酸素の濃度が18パーセント未満の状態を酸素欠乏と定めています。硫化水素の濃度が100万分の10を超える状態も、酸素欠乏等に含めています。
作業の前にすることは何ですか?
その日の作業を開始する前に、空気中の酸素(第二種は硫化水素も)の濃度を測定し、結果を記録して3年間保存します。作業を行う場所は、酸素18パーセント以上に保つよう換気します。
作業主任者と特別教育は両方必要ですか?
規則上は別の義務です。作業主任者は技能講習の修了者から選任し、酸素欠乏危険作業に就かせる労働者には特別の教育を行います。
参照した公的一次資料
- e-Gov法令検索「酸素欠乏症等防止規則」(確認日:2026年10月19日、次回確認:2027年1月19日)
- e-Gov法令検索「労働安全衛生法」(確認日:2026年10月3日、次回確認:2026年12月3日)
- e-Gov法令検索「労働安全衛生法施行令」第6条(作業主任者を選任すべき作業)・第20条(就業制限に係る業務)(確認日:2026年10月18日、次回確認:2027年2月9日)
- 厚生労働省「外国人労働者に対する安全衛生教育教材(建設業・電気通信業務)酸素欠乏・一酸化炭素中毒の防止」(確認日:2026年10月19日、次回確認:2027年1月19日)