この記事の対象:建設・造船・製造などの現場で特定技能外国人を雇い、一人親方などの個人事業者と同じ場所で作業させる企業の安全衛生担当者・現場責任者
改正の趣旨と、個人事業者等が保護の対象に加わる意味
令和7年5月14日に公布された令和7年法律第33号は、労働者と同じ場所で働く個人事業者等を、労働安全衛生法の保護の対象であり義務の主体としても位置づけました。
厚生労働省は、この改正を「注文者等や個人事業者等自身が講ずべき各種措置を定めたもの」と説明しています。条文では、個人事業者を「事業を行う者で、労働者を使用しないもの」と定めています。
一人親方がこれに当たります。概要は、中小事業者の代表者又は役員も対象に含めています。
背景には、令和3年5月の建設アスベスト訴訟の最高裁判決があります。判決は、労働安全衛生法第22条が労働者だけでなく同じ場所で働く労働者でない者も保護する趣旨だと判断しました。
これを受けて、個人事業者に作業を請け負わせる事業者への保護措置の義務付けは、先に省令改正で済んでいます。今回の法律改正は、その残りの注文者側の措置と、個人事業者自身の義務を扱います。
特定技能外国人は雇用契約で働く労働者です。この記事が扱うのは、個人事業者等に関する規定だけで、労働者である外国人への雇用主の義務は対象外です。同じ現場に一人親方などが入っているときに、元請や現場を管理する側として何を求められるかを整理します。
| 柱 | 内容 | 主に関わる企業 |
|---|---|---|
| 注文者等の配慮 | 注文時の施工方法や工期への配慮規定が、建設工事以外の注文者にも広く適用されると明確化 | 仕事を発注する企業 |
| 混在作業の統括管理 | 元方事業者などの連絡調整の対象に、個人事業者等を含む作業従事者を追加 | 建設・造船・製造の元請 |
| 作業場所管理事業者の措置 | 業種を問わず、現場を管理する事業者に、危険有害な作業間の連絡調整を義務付け | 現場を管理する事業者 |
| 業務上災害の報告 | 個人事業者等の死亡・休業災害を労働基準監督署に報告する仕組み | 注文者・現場の管理者 |
| 個人事業者等自身の義務 | 構造規格を満たさない機械の使用禁止、定期自主検査、特別教育の受講 | 一人親方など |
施行日別の整理:公布日・令和8年4月・令和9年1月・令和9年4月
個人事業者等に関する規定は、4つの日に分かれて施行されます。2026年10月現在、令和8年4月1日の分はすでに施行されています。
改正法の附則第1条は、原則の施行日を令和8年4月1日とし、例外として公布の日、令和8年1月1日、令和8年10月1日、令和9年1月1日、令和9年4月1日などを定めています。令和8年10月1日は個人ばく露測定など化学物質の規定で、個人事業者等の規定には当たりません。
厚生労働省のリーフレットは、個人事業者等に関する規定の施行日を次のように示しています。表の令和9年の2つは、2026年10月時点でまだ施行されていません。
| 施行日 | 規定 | 2026年10月時点 |
|---|---|---|
| 令和7年5月14日(公布日) | 注文者等の配慮(法第3条第3項)の適用が建設工事以外の注文者にも広いと明確化 | 施行済み |
| 令和8年4月1日 | 混在作業場所での元方事業者等の措置の対象を、個人事業者等を含む作業従事者に拡大。機械等・建築物の貸与者の措置も個人事業者等への貸与に拡大 | 施行済み |
| 令和9年1月1日 | 個人事業者等の業務上災害の報告制度 | 未施行 |
| 令和9年4月1日 | 個人事業者等自身への義務付け、作業場所管理事業者への連絡調整措置の義務付け | 未施行 |
- 自社の現場に、一人親方など労働者を使用しない個人事業者が入っているかを確認した
- 令和8年4月1日にすでに施行された混在作業の連絡調整を、個人事業者にも及ぼす運用にした
- 令和9年1月1日の災害報告と、同年4月1日の作業場所管理事業者の措置に向けた社内の担当を決めた
元方事業者と作業場所管理事業者の連絡調整
混在作業の連絡調整は、令和8年4月1日からすでに個人事業者等を含む作業従事者が対象です。令和9年4月1日からは、業種を問わず現場の管理者にも同様の義務が及びます。
概要によれば、建設業、造船業、製造業の注文者は、その労働者と関係請負人の労働者の作業が同一の場所で行われる場合に、混在作業による労働災害を防ぐため、作業間の連絡調整などの措置を講じる義務があります。今回の改正は、この統括管理の対象に、個人事業者等を含む作業従事者を追加しました。条文では、第30条と第30条の2などの「労働者」を「作業従事者」に改め、労働者以外の作業従事者も統括管理の対象に加えています。
令和9年4月1日に施行される新設の第30条の4は、仕事を自ら行う事業者で、その仕事の場所を管理するものを「作業場所管理事業者」と呼びます。一の場所で、自らの作業従事者と請負人の作業従事者が作業を行い、そのいずれかが厚生労働省令で定める業務を行うとき、作業間の連絡及び調整その他の必要な措置を講じる義務です。
令和8年5月26日付けの通達(基発0526第1号)は、この省令で定める業務を6つ示しています。概要は例として、卸売業者の倉庫で店員と運送業者のフォークリフトが混在する場面を挙げています。
特別教育が必要な業務の号は、特別教育が必要な業務の一覧(規則第36条)で確認できます。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 就業制限業務 | 労働安全衛生法施行令第20条各号の業務 |
| 危険又は有害な業務 | 労働安全衛生規則第36条各号の業務 |
| 作業主任者を選任する作業 | 労働安全衛生法施行令第6条各号の作業 |
| 作業指揮者を選任する作業 | 法令により作業を指揮する者を定める必要がある作業 |
| 貨物自動車による荷の搬入・搬出 | 労働安全衛生規則第151条の2第7号の貨物自動車を用いた業務 |
| 定期の検査等・補修等 | 法令により定期に実施する検査等及び補修等の業務 |
業務上災害の報告(令和9年1月1日):特定注文者と災害発生場所管理事業者
個人事業者の死亡災害と4日以上の休業災害は、令和9年1月1日から、注文者や現場の管理者が労働基準監督署に報告する仕組みになります。
基発0624第5号は、個人事業者に仕事を請け負わせた注文者のうち、その個人事業者と同一の場所で自ら仕事を行うものを「特定注文者」としています。特定注文者は、個人事業者が労働者と同一の場所で作業を行い、業務に起因する負傷や疾病で死亡または休業(4日以上)したと把握したとき、遅滞なく電子情報処理組織で、所轄の労働基準監督署長に報告します。
特定注文者がいない場合は、作業を行う場所を管理する事業者(災害発生場所管理事業者等)が報告します。こちらは、自社の労働者などがその場所で作業する場合に限られます。
通達は、原因の特定が難しく個人情報の保護の観点もあるとして、脳・心臓疾患や精神障害による死亡・休業をこの報告の対象にしていません。このほか、法第100条の2は、厚生労働大臣が作業従事者の災害の発生状況を調査し、そのために事業を行う者や作業従事者に報告を求められると定めています。
報告の対象は個人事業者の災害です。自社が元請や現場の管理者として一人親方を現場に入れるときは、災害を把握する連絡の経路と、報告する担当者を決めておくと、施行日に慌てずに済みます。
雇用主としての安全配慮の義務は、安全配慮義務のガイドで確認できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 報告の対象 | 個人事業者が労働者と同一の場所で作業し、業務に起因する負傷・疾病で死亡または4日以上休業したとき |
| 報告する人 | 特定注文者。いないときは災害発生場所管理事業者等 |
| 報告先と方法 | 所轄の労働基準監督署長へ、遅滞なく電子情報処理組織で |
| 報告する内容 | 報告者等に関する事項、被災者に関する事項、災害発生状況に関する事項 |
よくある質問
一人親方は、労働安全衛生法でいう個人事業者ですか?
改正法の条文は、個人事業者を「事業を行う者で、労働者を使用しないもの」と定めています。労働者を使用しない一人親方は、これに当たります。概要は、中小事業者の代表者又は役員も対象に含めると説明しています。
特定技能外国人を雇う企業の義務は、この改正で変わりますか?
この記事で整理した規定は、個人事業者等に関するものです。労働者である特定技能外国人への雇用主の義務を定めるものではありません。関わるのは、同じ現場で個人事業者等が作業するときの、元方事業者や現場の管理者としての連絡調整や災害報告です。
令和8年4月1日の施行分は、もう守る必要がありますか?
混在作業場所での元方事業者等の措置の対象拡大は、令和8年4月1日にすでに施行されています。2026年10月時点で、対象に個人事業者等を含む作業従事者が入っています。
令和9年4月1日までに何を準備すればよいですか?
作業場所管理事業者の措置と個人事業者等自身への義務付けが令和9年4月1日に施行されます。自社が現場を管理する立場かを確認し、通達が示す6つの業務のどれが現場にあるかを洗い出します。
業務上災害の報告は、いつから義務になりますか?
個人事業者等の業務上災害の報告は、令和9年1月1日の施行です。死亡または4日以上の休業が対象で、特定注文者などが所轄の労働基準監督署長に報告します。
参照した公的一次資料
- 厚生労働省「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)」(改正法令・施行期日政令・施行通達の一覧)(確認日:2026年10月24日、次回確認:2027年1月27日)
- 厚生労働省「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)の概要」(確認日:2026年10月24日、次回確認:2027年1月27日)
- 厚生労働省「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」条文(令和7年法律第33号。附則第1条に施行期日)(確認日:2026年10月24日、次回確認:2027年1月27日)
- 厚生労働省「労働安全衛生法及び作業環境測定法 改正の主なポイントについて」(事業主・労働災害防止団体向けリーフレット)(確認日:2026年10月24日、次回確認:2027年1月27日)
- 厚生労働省 基発0526第1号(令和8年5月26日)個人事業者等の安全衛生対策の推進に係る規定関係の施行通達(作業場所管理事業者の措置ほか)(確認日:2026年10月24日、次回確認:2027年1月27日)
- 厚生労働省 基発0624第5号(令和8年6月24日)個人事業者等の業務上災害の報告に係る規定関係の施行通達(確認日:2026年10月24日、次回確認:2027年1月27日)