この記事の対象:農林水産業や食品産業の現場で特定技能外国人を受け入れる企業の、安全衛生を担当する人
作業安全規範の位置づけ:農林水産省の指針で、法令違反を問うものではない
農林水産省の「農林水産業・食品産業の作業安全のための規範」は、現場の事業者が日々心がけて実行する事項を整理した文書で、共通規範と5つの業種の個別規範でできています。
案内ページによると、規範は、各業種に共通する基本事項をまとめた「共通規範」と、農業、林業、木材産業、漁業、食品産業の5つの業種ごとの「個別規範」で構成されます。どちらにも、現場の事業者向けと、事業者団体向けがあります。
共通規範(令和3年2月16日)の注記は、規範の事項に違反したり、実行しなかったりしても、法令違反等に問われるものではないとしています。ただし、別に法令で義務づけられているものは除かれ、補助事業などで規範に基づく要件が付けられている場合は、その要件に従うよう求めています。
共通規範の本文は、人手不足を背景に、高齢者や外国人など現場で活躍する人材が多様化していることにふれ、様々な人材が安全に働けることが経営を続ける大前提だとしています。
共通規範の事業者向け4項目:安全の優先・経営の要・必要な対策・事故への備え
事業者向けの共通規範は4項目で、3番目と4番目がさらに小項目に分かれます。
共通規範の本文は、考え得る限りの対策を講じても、人が作業する限り事故の発生リスクをゼロにはできないとしています。そのため、怪我の程度を抑える備えや、特別加入を含む労災保険への加入など、当事者の経済的な損失への備えが必要だと書いています。
事業者団体向けも4項目で、1が安全の優先、2が産業が成長するための要、3が構成員の作業安全確保に必要な支援、4が構成員の事故発生時に備えた措置です。小規模な事業者は専門知識や時間を確保しにくいため、団体が助言や支援をすることが重要だとされています。
| 項目 | 内容の要点 |
|---|---|
| 1 いのちを守る作業安全は全てに優先する | 経営効率を過度に追うと現場の作業負担が増え、事故の直接または間接の原因になるおそれがある |
| 2 作業安全の確保は経営が継続発展するための要である | 様々な人材が安全に働けることが前提。対策への投資は短期では負担でも、長期では経営の発展につながる |
| 3 作業安全確保のために必要な対策を講じる | (1)人的対応力の向上 (2)作業安全のためのルールや手順の順守 (3)資機材、設備等の安全性の確保 (4)作業環境の整備 (5)事故事例やヒヤリ・ハット事例などの情報の分析と活用 |
| 4 事故発生時に備える | (1)労災保険への加入等、補償措置の確保 (2)事故後の速やかな対応策、再発防止策の検討と実施 (3)事業継続のための備え |
業種別の個別規範:所管・作成日と、業種ごとの記載の例
個別規範は、共通規範の3と4の小項目に対応させて、業種ごとに具体的な取組を書き分けた文書です。
農業と食品産業は農林水産省、林業と木材産業は林野庁、漁業は水産庁が公開しています。農業、林業、木材産業、漁業の案内ページには、取組状況の点検に使えるチェックシートと、規範の説明をした解説資料が載っています。
記載は業種ごとに違います。農業の事業者向けは、法令による義務の例として、トラクターで公道を走るときは作業機を含めた車幅などに応じて大型特殊自動車免許等を持つ者とすること(道路交通法第85条等)と、労働者をフォークリフトの運転に就かせるときは技能講習の修了者とするか特別教育を行うこと(労働安全衛生法第59条第3項等)を挙げています。
食品産業の事業者向けは、作業安全の研修・教育について、外国人従事者を雇用している場合は確実に内容を理解できる方法で行うと書いています。漁業の事業者向けは、ライフジャケットの着用を徹底することを挙げています。農業の事業者向けは、労災保険やその他の補償措置を、経営者や家族従事者を含めて講じるとしています。
| 業種 | 所管 | 事業者向けの作成日 | 確認した記載の例 |
|---|---|---|---|
| 農業 | 農林水産省(生産局) | 令和3年2月26日 | 公道を走るトラクターの免許(道路交通法第85条等)、フォークリフトの技能講習・特別教育(労働安全衛生法第59条第3項等)、経営者・家族従事者を含む労災保険 |
| 食品産業 | 農林水産省(食料産業局) | 令和3年2月19日 | 外国人従事者を雇用している場合は、研修を確実に内容を理解できる方法で行う |
| 漁業 | 水産庁 | 令和3年3月9日 | ライフジャケットの着用を徹底する |
| 林業・木材産業 | 林野庁 | 令和3年2月(木材産業の事業者向けは2月26日) | 個別規範・解説資料・チェックシートを公開 |
木材産業協議会の入会前に必要な、作業安全規範の確認証
規範が実際の手続に出てくる場面として、木材産業特定技能・育成就労協議会への入会があります。
林野庁の案内によると、入会までの流れは3段階です。まず、個別規範(木材産業)事業者向けの取組状況について、一般社団法人全国木材組合連合会の確認を受け、確認証の交付を受けます。次に、入会申請書を添付書類とともに事務局へメールで送ります。
事務局が内容を確認し、構成員資格証明書を交付します。この証明書は、在留資格の申請に必要です。
提出書類は、入会申請書、定款の写しまたはこれに代わる書面、特定技能外国人を勤務させる事業所の機械設備一覧表、確認証の4つです。案内は、規範の取組状況と申請内容の確認には相当程度の時間がかかると見込まれるため、在留諸申請までに十分な時間の余裕をもって申請するよう求めています。
協議会の加入の手順は、木材産業分野のガイドでも確認できます。
| 順番 | やること | 受け取る・出すもの |
|---|---|---|
| 1 | 個別規範(木材産業)の取組状況について、全国木材組合連合会の確認を受ける | 確認証を受け取る |
| 2 | 事務局へメールで申請する | 入会申請書、定款の写し等、機械設備一覧表、確認証を出す |
| 3 | 事務局が内容を確認する | 構成員資格証明書を受け取る(在留資格の申請に必要) |
受入れ企業が規範を使う場面:自社の取組を点検する物差し
規範は法令ではないため、自社の安全対策を点検する物差しとして使います。
共通規範は、事業者が必要に応じて行政や資機材メーカーなどの協力を得ながら、現場の状況に応じた取組を実行し、実行状況を自分で点検して、十分でなければ改善に努めるよう求めています。個別規範のチェックシートは、この点検に使う様式です。
外国人を受け入れる事業所では、雇入れ時の安全衛生教育など、法令で決められた義務を、規範とは別に守る必要があります。教育の義務と項目は、別のガイドで確認できます。
雇入れ時の安全衛生教育の義務は、雇入れ時の安全衛生教育のガイドで確認できます。
- 自社の業種の個別規範(事業者向け)を入手した
- チェックシートで取組状況を点検した
- 安全対策の責任者や担当者を決めている
- 外国人従事者への研修は、内容を確実に理解できる方法で行う計画にした(食品産業の個別規範の記載)
- 経営者や家族従事者を含め、労災保険などの補償措置を確認した(農業の個別規範の記載)
- 木材産業は、協議会への入会前に確認証の交付を受けた
よくある質問
作業安全規範は、法律上の義務ですか?
共通規範の注記は、規範の事項に違反したり実行しなかったりしても、法令違反等に問われるものではないとしています。ただし、別に法令で義務づけられているものは除かれ、補助事業などで規範に基づく要件が付けられている場合は、その要件に従います。
個別規範があるのは、どの業種ですか?
農業、林業、木材産業、漁業、食品産業の5つです。農業と食品産業は農林水産省、林業と木材産業は林野庁、漁業は水産庁のページで公開されています。
木材産業の協議会に入会するのに、規範は必要ですか?
林野庁の案内では、入会前に、個別規範(木材産業)事業者向けの取組状況について全国木材組合連合会の確認を受け、確認証の交付を受けます。確認証は、入会申請書の添付書類の1つです。
作業安全規範は、外国人労働者向けの内容ですか?
外国人専用の規範ではありません。共通規範は外国人を含む人材の多様化にふれており、食品産業の個別規範は、外国人従事者を雇用している場合の研修を、確実に内容を理解できる方法で行うとしています。
参照した公的一次資料
- 農林水産省「農林水産業・食品産業の作業安全のための規範」(確認日:2026年10月25日、次回確認:2027年1月25日)
- 農林水産省「農林水産業・食品産業の作業安全のための規範(共通規範)」(令和3年2月16日)(確認日:2026年10月25日、次回確認:2027年1月25日)
- 農林水産省「作業安全のための規範(個別規範:農業)事業者向け」(令和3年2月26日)(確認日:2026年10月25日、次回確認:2027年1月25日)
- 農林水産省「作業安全のための規範(個別規範:食品産業)事業者向け」(令和3年2月19日)(確認日:2026年10月25日、次回確認:2027年1月25日)
- 水産庁「作業安全のための規範(個別規範:漁業)事業者向け」(令和3年3月9日)(確認日:2026年10月25日、次回確認:2027年1月25日)
- 林野庁「農林水産業・食品産業の作業安全のための規範(林業・木材産業)」(確認日:2026年10月25日、次回確認:2027年1月25日)
- 林野庁「木材産業特定技能・育成就労協議会について」(確認日:2026年9月11日、次回確認:2026年12月11日)