この記事の対象:特定技能外国人を雇う中小企業で、労働保険(労災保険・雇用保険)の手続きを担当する人
労働保険事務組合とは:事業主団体が手続きを引き受ける制度
労働保険事務組合は、事業主の委託を受けて労働保険の事務を処理する、厚生労働大臣の認可を受けた事業主の団体です。
労働保険の保険料の徴収等に関する法律(徴収法)第33条は、事業協同組合などの事業主の団体が、構成員などの事業主の委託を受けて、労働保険料の納付その他の労働保険に関する事項を処理できると定めています。この事項を「労働保険事務」と呼びます。団体がこの業務を行うには、厚生労働大臣の認可が必要です(同条第2項)。
厚生労働省のページも、労働保険事務組合を、事業主に代わって労働保険の事務を処理することについて認可を受けた中小事業主等の団体と説明しています。特定技能外国人は労働者として労災保険・雇用保険の対象になるため、雇用する企業の労働保険の手続きが、委託の対象になる事務の中心です。
委託できる事業主の規模と、委託できる事務の範囲
委託できるのは、常時使用する労働者数が業種ごとの上限以下の事業主です。
徴収法施行規則第62条第2項は、常時300人(金融業・保険業・不動産業・小売業は50人、卸売業・サービス業は100人)を超える労働者を使用する事業主を、委託できない事業主としています。厚生労働省のページは、これを上限以下の事業主として示しています。
委託する事業主は、団体の構成員である事業主に限りません。構成員以外でも、委託することが必要と認められる事業主は含まれます(同条第1項)。
委託できる事務は、概算保険料・確定保険料の申告と納付、保険関係成立届や雇用保険の事業所設置届の提出、労災保険の特別加入の申請、雇用保険の被保険者に関する届出などです。印紙保険料に関する事務と、労災保険・雇用保険の保険給付の請求などの事務は、除かれています。
| 主たる事業 | 委託できる労働者数 |
|---|---|
| 金融業・保険業・不動産業・小売業 | 50人以下 |
| 卸売業・サービス業 | 100人以下 |
| 上記以外の事業 | 300人以下 |
委託したときの違い:3回分割納付、通知、特別加入
委託すると、保険料の納付方法、国からの通知の宛先、労災保険の特別加入の可否に違いが出ます。
概算保険料は、通常は額が40万円(労災保険または雇用保険のみの事業は20万円)以上のときに3回に分けて納付できます。事務組合に事務を委託している事業は、この額にかかわらず分割できます(施行規則第27条第1項。保険年度の10月1日以降に保険関係が成立した事業を除く)。分割の申請は、申告書の提出の際に行います。
委託に係る概算保険料の第2期・第3期の納期限は、委託していない事業より遅い日です。国は、委託した事業主への納入の告知などの通知を事務組合にでき、事務組合にした通知は事業主にしたものとみなされます(徴収法第34条)。
労災保険の特別加入のうち、中小事業主とその家族従事者などの加入は、事務組合への委託が前提です(労災保険法第33条第1号・第2号)。対象の事業主は、施行規則第46条の16で、委託できる規模と同じ労働者数の区分の事業主とされています。申請書には、委託した日を記載し、事務組合の証明を受けます(同規則第46条の19第1項・第2項)。
| 期 | 委託していない事業 | 委託に係る概算保険料 |
|---|---|---|
| 第1期(4月〜7月) | 6月1日から40日以内(4月〜9月に保険関係が成立した事業は成立日の翌日から50日以内) | 同左 |
| 第2期(8月〜11月) | 10月31日 | 11月14日 |
| 第3期(12月〜翌3月) | 翌年1月31日 | 翌年2月14日 |
事務組合側の義務と、委託前に確認すること
事務組合には、納付の責任、帳簿の備付け、書類の保存が法令で定められています。
事業主が保険料の納付のために事務組合へ金銭を交付したときは、その金額の限度で、事務組合が国に対する納付の責めを負います(徴収法第35条第1項)。事務組合は、委託事業主ごとの名簿、保険料の徴収・納付簿、雇用保険の被保険者関係届出事務等処理簿を備えます(徴収法第36条、施行規則第68条)。書類の保存は完結の日から3年間で、被保険者関係届出事務等処理簿は4年間です(施行規則第72条)。
委託の手続きは、まず「労働保険事務委託書」を委託しようとする事務組合に出します。団体への入会金や委託手数料が必要な場合があるため、厚生労働省のページは事前の確認を求めています。
費用の額や条件は組合ごとに異なります。委託するかどうかは、最寄りの都道府県労働局・労働基準監督署・公共職業安定所に確認してください。
- 自社の主たる事業と常時使用する労働者数が、委託できる区分に収まっている
- 委託先の事務組合の入会金・委託手数料の有無と額を確認した
- 特別加入を希望する場合は、委託が前提であることを確認した
- 委託して分割納付を申請すると、第2期・第3期の納期限が上の表の日程になることを経理担当と共有した
よくある質問
労働保険事務組合に委託すると何が変わりますか?
保険料の申告・納付などの事務を事務組合が処理し、概算保険料は、申請により額にかかわらず3回に分けて納付できます。中小事業主等の労災保険の特別加入も、委託が前提になります。
どの規模の会社まで委託できますか?
常時使用する労働者が、金融・保険・不動産・小売業は50人以下、卸売・サービス業は100人以下、その他の事業は300人以下の事業主です。
雇用保険の給付の請求も事務組合に任せられますか?
任せられません。印紙保険料に関する事務と、労災保険・雇用保険の保険給付の請求などの事務は、事務組合が行える事務から除かれています。
参照した公的一次資料
- e-Gov法令検索「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」(確認日:2026年10月13日、次回確認:2027年1月13日)
- e-Gov法令検索「労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則」(確認日:2026年10月19日、次回確認:2027年1月19日)
- 厚生労働省「労働保険事務組合制度」(確認日:2026年10月19日、次回確認:2027年1月19日)
- e-Gov法令検索「労働者災害補償保険法」(確認日:2026年10月13日、次回確認:2027年1月13日)
- e-Gov法令検索「労働者災害補償保険法施行規則」(確認日:2026年10月13日、次回確認:2027年1月13日)