この記事の対象:特定技能外国人を雇う企業の人事・労務担当者、健康診断の項目票や個人票を管理する担当者

改正の概要:令和9年4月1日に施行される4つの変更

令和8年4月28日に公布された改正省令は、令和9年(2027年)4月1日から施行されます。

厚生労働省の通達(令和8年4月28日付け基発0428第9号)は、労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(令和8年厚生労働省令第89号)と、関係告示(令和8年厚生労働省告示第204号)の施行について示したものです。改正の趣旨として、長時間労働と慢性腎臓病の発症リスクなどとの関係、血清クレアチニン検査で既存の項目では分からない腎機能の低下を把握できることが挙げられています。

要点は、血清クレアチニン検査の追加、喀痰検査の廃止、肝機能検査の酵素名の変更、健康診断の報告書や個人票などの様式変更の4つです。この記事は、一般健康診断の項目の変更に絞ります。定期健康診断そのものの義務や記録の保存は、既存のガイドで扱っています。

改正の要点(基発0428第9号)
変更内容施行
血清クレアチニン検査雇入時・定期・特定業務従事者・海外派遣労働者の健康診断に追加令和9年4月1日
喀痰検査定期・特定業務従事者・海外派遣労働者の健康診断から削除令和9年4月1日
肝機能検査の酵素名GOT・GPT・γ-GTPを最新のIFCC勧告の名称(AST・ALT・γ-GT)に変更令和9年4月1日
様式健康診断結果報告・個人票(様式第5号)などに、血清クレアチニン検査の追加と喀痰検査の削除を反映令和9年4月1日

血清クレアチニン検査:追加される健診の種類と、医師の判断による省略

血清クレアチニン検査は、労働安全衛生規則第43条から第45条の2までの4種類の健康診断に加わります。

追加の対象は、雇入時の健康診断(第43条)、定期健康診断(第44条)、特定業務従事者の健康診断(第45条)、海外派遣労働者の健康診断(第45条の2)です。通達は、あわせて、この項目を厚生労働大臣が定める基準に基づき、医師が必要でないと認めるときは省略できると記しています。

省略の基準は告示で定められます。通達の第3は、定期健康診断と特定業務従事者の健康診断の告示について、血清クレアチニン検査の省略の基準を40歳未満の者とすると記しています。

現行の第43条には、雇入時の健康診断の項目を医師の判断で省略する規定がありません(e-Govの条文で確認)。雇入時と海外派遣の健康診断での省略の可否は、改正後の条文と告示で確認してください。

健康診断個人票(様式第5号)に書くeGFRの計算方法は、様式の備考欄に記載されています。労働基準監督署長への報告で使う血清クレアチニン検査の有所見者数は、eGFRの値を用いて判断します。

喀痰検査の廃止:胸部エックス線で結核が疑われる人への受診勧奨

喀痰検査は、定期・特定業務従事者・海外派遣労働者の健康診断の必須項目から外れます。

現行の第44条第1項第4号は「胸部エックス線検査及び喀痰検査」を定期健康診断の項目にしています(e-Govの条文で確認)。改正後は喀痰検査が削除されます。雇入時の第43条の項目は、現行も胸部エックス線検査のみです。

通達は、廃止の理由を、胸部エックス線検査の結果から結核感染が疑われる人は、健診機関での喀痰検査を待たず、速やかに医療機関への受診を勧めるのが適当とした検討会報告書を踏まえたものと説明しています。健診機関や事業者は、胸部エックス線検査の結果を踏まえて、結核感染が疑われる人に速やかな受診勧奨を行うよう求められています。

喀痰検査の結果は、個人情報保護法上の要配慮個人情報にあたります。施行後は法令に基づく健診項目ではなくなるため、事業者が本人の同意なしに集められる情報ではなくなり、結果を取得するときは、あらかじめ本人の同意などが必要になると通達は注意しています。

肝機能検査の酵素名と様式の変更:結果通知と個人票の見直し

肝機能検査の酵素名は、GOT→AST、GPT→ALT、γ-GTP→γ-GTに変わります。

通達は、肝機能検査の酵素名を最新のIFCC(国際臨床化学連合)勧告の名称へ変えるとしています。読み替えは、GOTがAST、GPTがALT、γ-GTPがγ-GTです。労働安全衛生規則第43条第1項第7号のほか、有機溶剤中毒予防規則と特定化学物質障害予防規則の別表も対象です。

事業者や労働者が旧名称のほうが分かりやすい場合は、健診機関が結果を通知するときに、新名称と旧名称を併記しても差し支えないと通達は記しています。

健康診断結果報告(第52条)、健康診断個人票(様式第5号)、健康管理手帳(様式第8号・第9号)などの様式も改正されます。事業者が使う個人票や社内の項目票は、血清クレアチニン検査の追加、喀痰検査の削除、酵素名の変更に合わせた見直しが必要です。

経過措置と、施行日までに確認すること

通達は、報告の方法、健康管理手帳、旧様式の用紙、罰則について経過措置を示しています。

改正省令の附則の経過措置は次のとおりです。第52条第1項の報告は、当分の間、改正前と同様に、所定の事項を書いた書面での報告に代えられます。施行日前に交付した健康管理手帳は、施行日後も使えます。

施行の際に現にされている報告は、改正後の報告とみなされます。旧様式の用紙は、合理的に必要と認められる範囲で、必要な改訂をして当分の間使えます。施行前の行為への罰則は、従前の例によります。

なお、高度プロフェッショナル制度の「臨時の健康診断」の項目にも、血清クレアチニン検査が加わります(労働基準法施行規則第34条の2)。特定技能外国人の雇用で通常問題になる項目ではありませんが、同じ通達で改正されています。

施行日までの確認事項は、契約する健診機関の項目と結果通知の様式、個人票の様式、省略の判断を誰が行うかの社内の流れです。個別の健診の判断は、産業医や健診機関に確認してください。

現行の定期健康診断の項目と義務は、定期健康診断のガイドで確認できます。

経過措置(改正省令附則第3条〜第6条)
対象扱い
第52条第1項の報告当分の間、書面での報告に代えられる
施行日前に交付した健康管理手帳施行日後も使える
施行の際に現にされている報告改正後の報告とみなす
旧様式の用紙必要な改訂をして当分の間使える
施行前の行為への罰則従前の例による
  • 契約する健診機関の令和9年4月以降の項目表に血清クレアチニン検査が入っているか
  • 血清クレアチニン検査の省略を医師がどう判断するか、健診機関と確認した
  • 個人票・結果通知の様式を新しい項目と酵素名に合わせた
  • 喀痰検査の結果を取得するときは本人の同意をとる運用にした

よくある質問

血清クレアチニン検査はいつから必要ですか?

令和9年(2027年)4月1日に施行される改正省令で、雇入時・定期・特定業務従事者・海外派遣労働者の健康診断の項目に加わります。項目の変更は施行日以後に実施する健康診断から適用されます。

血清クレアチニン検査は省略できますか?

通達は、厚生労働大臣が定める基準に基づき、医師が必要でないと認めるときは省略できるとしています。定期健康診断と特定業務従事者の健康診断の告示では、省略の基準が40歳未満の者とされています。雇入時と海外派遣の扱いは、改正後の条文と告示で確認してください。

喀痰検査をやめた場合、結核の疑いがある人はどうしますか?

通達は、胸部エックス線検査の結果を踏まえ、結核感染が疑われる人に医療機関への速やかな受診勧奨を行うよう、健診機関と事業者に求めています。

GOT・GPTという表記の結果票は使えなくなりますか?

酵素名はAST・ALT・γ-GTに変わりますが、通達は、旧名称のほうが分かりやすい場合に、健診機関が結果の通知で新名称と旧名称を併記しても差し支えないとしています。

施行日の前に旧様式の個人票を用意してしまいました。

通達の経過措置では、施行の際に現に存する旧様式の用紙は、合理的に必要と認められる範囲で、必要な改訂をして当分の間使えます。

参照した公的一次資料

試算に使う一次資料の一覧と確認状況を見る

次に確認すること

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