この記事の対象:特定技能外国人にフレックスタイム制を適用したい企業の人事・労務担当者、登録支援機関の担当者
導入には、就業規則等の定めと労使協定の2つが要る
フレックスタイム制は、一定の期間にあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、日々の始業・終業時刻を労働者が自分で決める制度です。
労働基準法第32条の3第1項は、就業規則その他これに準ずるものによって、始業と終業の時刻を労働者の決定に委ねることとし、さらに書面による労使協定で所定の事項を定めることを求めています。協定の相手方は、事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があればその労働組合、なければ労働者の過半数を代表する者です。
厚生労働省の手引きによると、フレキシブルタイム(いつ出社・退社してもよい時間帯)とコアタイム(必ず働く時間帯)は、必ず設けなければならないものではありません。コアタイムを設けなければ、働く日も労働者が選べます。
常時10人以上の労働者を使用する使用者が作る就業規則には、始業と終業の時刻が必ず記載する事項に含まれています(第89条第1号)。フレックスタイム制を導入するときは、就業規則の定めも変更の対象になります。
| 事項 | 内容 |
|---|---|
| 対象労働者の範囲 | フレックスタイム制で働かせる労働者の範囲 |
| 清算期間 | 労働時間を平均して考える期間。3か月以内に限る |
| 清算期間の総労働時間 | 清算期間中に働く時間の総枠。法定労働時間の範囲内に収める |
| 標準となる1日の労働時間 | 年次有給休暇を取った日に、何時間働いたものとして扱うかの基準になる時間(施行規則第12条の3第1項第1号) |
| コアタイム・フレキシブルタイム | 定める場合に限り、その開始と終了の時刻(施行規則第12条の3第1項第2号・第3号) |
| 協定の有効期間 | 清算期間が1か月を超える場合に限り、定める(施行規則第12条の3第1項第4号) |
清算期間は3か月まで。1か月を超えると、届出と月ごとの上限が加わる
清算期間の上限は3か月です。1か月以内の期間と、1か月を超える期間では、守る条件が変わります。
厚生労働省の手引きによると、2019年4月の改正で、清算期間の上限は1か月から3か月に延びました。条文は、清算期間を「三箇月以内の期間に限る」としています。
清算期間が1か月を超える場合、清算期間を開始日から1か月ごとに区切った各期間の平均が、1週間あたり50時間を超えないことが条件になります(第32条の3第2項)。
清算期間が1か月を超える協定は、所轄の労働基準監督署長への届出が必要です(第32条の3第4項、施行規則第12条の3第2項)。届出の様式は様式第3号の3です。清算期間が1か月以内の協定は、届出が不要です。
第32条の2第2項を準用する届出の規定に違反した者は、第120条第1号により30万円以下の罰金の対象です。
| 項目 | 1か月以内 | 1か月を超え3か月以内 |
|---|---|---|
| 協定の届出 | 不要 | 必要(様式第3号の3) |
| 協定の有効期間の定め | 協定事項としては求められない | 定める必要がある |
| 月ごとの上限 | なし | 各月を平均して週50時間を超えない |
総労働時間との過不足は、賃金で清算する
フレックスタイム制では、清算期間の実労働時間が総労働時間と合わないときの賃金の扱いが決まっています。
厚生労働省の手引きによると、実労働時間が総労働時間を超えた場合は、超えた時間の賃金を追加して支払います。足りない場合は、不足した時間分の賃金を控除して支払うか、不足時間を次の清算期間の総労働時間に加えて働かせるかのどちらかです。ただし、繰り越して加えた後の時間は、法定労働時間の総枠の範囲内である必要があります。
始業と終業を労働者に委ねる制度でも、使用者が労働時間の管理をしなくてよいわけではありません。同じ手引きは、実労働時間を把握して、適切な労働時間管理と賃金の清算を行う必要があると明記しています。
清算期間が1か月を超える場合に、その期間より短い期間しか働かなかった労働者(期間の途中で入社・退職した労働者など)については、働いた期間を平均して週40時間を超えた時間に、割増賃金を支払う必要があります(第32条の3の2)。
時間外労働の割増率は、割増賃金率のガイドで確認できます。
特定技能外国人に適用するときの確認点
条文は、フレックスタイム制の対象を国籍で区別していません。外国人に適用するときも、日本人と同じ導入の条件を満たす必要があります。
対象は協定で「労働者の範囲」として定めます。特定技能外国人だけを対象にするか、部署全体を対象にするかは、協定の定め方によります。
本人が協定と就業規則の内容を理解できるかについて、第32条の3には定めがありません。導入前に説明の方法を決めておくことが考えられます。
適用の可否や個別の定めは、所轄の労働基準監督署に確認してください。当サイトは個別の労務判断をしません。
- 就業規則等に、始業と終業の時刻を労働者の決定に委ねる旨を定めたか
- 書面の労使協定で、対象労働者の範囲・清算期間・総労働時間・標準となる1日の労働時間を定めたか
- 清算期間が1か月を超える場合に、有効期間を定め、所轄の労働基準監督署長へ届け出たか
- 実労働時間を日ごとに把握する方法を決めたか
- 総労働時間との過不足をどう清算するか(賃金の追加・控除・繰越)を決めたか
- 本人が内容を理解できる方法で説明したか
よくある質問
フレックスタイム制では、コアタイムを必ず設けますか?
必ず設ける必要はありません。厚生労働省の手引きによると、フレキシブルタイムやコアタイムは必ずしも設けなければならないものではなく、コアタイムを設けなければ働く日も労働者が選べます。設ける場合は、その開始と終了の時刻を協定で定めます。
清算期間は最長でどのくらいですか?
3か月です。労働基準法第32条の3第1項第2号は、清算期間を三箇月以内の期間に限ると定めています。
労使協定は労働基準監督署に届け出ますか?
清算期間が1か月を超える場合は、所轄の労働基準監督署長への届出が必要です。清算期間が1か月以内の場合は届出が不要です(第32条の3第4項、施行規則第12条の3第2項)。
実労働時間が総労働時間に足りないときは、どうなりますか?
厚生労働省の手引きによると、不足した時間分の賃金を控除して支払うか、不足時間を次の清算期間の総労働時間に加えるかのどちらかを選びます。加えた後の時間は、法定労働時間の総枠の範囲内にする必要があります。
参照した公的一次資料
- e-Gov法令検索「労働基準法」(昭和22年法律第49号)(確認日:2026年10月8日、次回確認:2027年1月8日)
- e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」第5条(労働条件の明示)・第7条の2(賃金の口座振込み等)・第12条の3(フレックスタイム制の協定事項と届出)・第19条(割増賃金の基礎となる1時間あたりの賃金)(確認日:2026年10月13日、次回確認:2027年1月13日)
- 厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」(滋賀労働局掲載)(確認日:2026年10月18日、次回確認:2027年1月27日)
- 厚生労働省「確かめよう労働条件」フレックスタイム制:多様で柔軟な働き方(確認日:2026年10月18日、次回確認:2027年1月18日)