この記事の対象:特定技能外国人を雇う企業の人事・労務担当者
請求できる制限は3つ:所定外・時間外・深夜
要介護状態にある対象家族を介護する労働者が請求したときは、事業主は所定労働時間を超える労働、1か月24時間・1年150時間を超える時間外労働、午後10時から午前5時までの深夜の労働をさせてはなりません。
根拠は、育児・介護休業法の第16条の9(所定外労働)、第18条(時間外労働)、第20条(深夜業)です。いずれも、育児のための制限の条文(第16条の8、第17条、第19条)を、介護を行う労働者に準用する形で定められています。
時間外労働の制限は、36協定で定めた上限にかかわらず、1か月について24時間、1年について150時間までに抑える制度です(第17条第1項の制限時間)。ただし、いずれの制限も、事業の正常な運営を妨げる場合は除かれます。
厚生労働省の規定例は、育児と介護の制限を同じ条(第6条から第8条)にまとめ、日雇従業員を3つの制限すべてで対象外とする例を示しています。時間外労働の制限については、利用できない労働者の範囲をこれより広げることはできず、有期雇用の労働者も対象になると解説しています。
対象家族の範囲:祖父母・兄弟姉妹・孫まで
対象家族は、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母に、施行規則第3条の祖父母、兄弟姉妹、孫を加えた範囲です。要介護状態は、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態をいいます。
法第2条第4号は、対象家族を配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む)、父母、子、配偶者の父母と定め、これらに準ずる者として、施行規則第3条が祖父母、兄弟姉妹、孫を加えています。
要介護状態は、法第2条第3号が、負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、厚生労働省令で定める期間にわたり常時介護を必要とする状態と定め、施行規則第2条がその期間を2週間以上としています。
請求を受けた事業主は、対象家族の氏名と労働者との続柄、対象家族が要介護状態にある事実を証明できる書類の提出を求めることができます(施行規則第49条第1項第3号・第4号、第4項)。書類の種類は条文に列挙がないため、会社の規則で確認します。
請求は1か月前まで:期間は残業が1年以内、深夜が6か月以内
請求は、制限を開始する日と終了する日を明らかにして、開始予定日の1か月前までにします。1回の期間は、所定外労働と時間外労働の制限が1か月以上1年以内、深夜業の制限が1か月以上6か月以内です。
請求は、請求の年月日、労働者の氏名、対象家族の氏名と続柄、対象家族が要介護状態にある事実、制限期間の初日と末日を事業主に通知して行います。方法は書面が基本で、ファクシミリや電子メール等は事業主が適当と認める場合に限られます(施行規則第49条)。
所定外労働の制限と時間外労働の制限の期間は、互いに重複しないようにしなければなりません(第16条の8第2項、第17条第2項)。
規定例は、育児・介護のための所定外労働制限請求書などを人事担当者に提出する形を示しています。請求書の様式や提出先は、会社の規則で確認します。
請求できない労働者:入社1年未満など、制限ごとに違う
入社1年未満の労働者は、時間外労働の制限と深夜業の制限を請求できません。所定外労働の制限は、労使協定で除外を定めたときに限り、その労働者の請求を拒めます。週の所定労働日数が2日以下の労働者は、省令で除外の対象です(所定外労働は労使協定が前提)。
所定外労働の制限(第16条の8第1項を準用)は、労使協定で請求できないと定めた労働者の請求を拒めます。法が挙げる除外は、継続雇用1年未満の労働者と、省令で定める週の所定労働日数が2日以下の労働者です(施行規則第48条、第44条)。
時間外労働の制限(第17条第1項を準用)は、労使協定がなくても、入社1年未満の労働者と週の所定労働日数が2日以下の労働者が請求できません(施行規則第56条、第52条)。規定例は、日雇従業員も請求できない者としています。
深夜業の制限(第19条第1項を準用)では、入社1年未満の労働者のほか、深夜に介護できる16歳以上の同居の家族がいる労働者と、週の所定労働日数が2日以下または所定労働時間の全部が深夜にある労働者が請求できません(施行規則第65条、第66条)。同居の家族は、深夜に就業していない(月3日以下を含む)こと、心身の状況が介護できること、産前6週間(多胎は14週間)から産後8週間の間にないことのすべてを満たす者です。
| 区分 | 所定外労働 | 時間外労働 | 深夜業 |
|---|---|---|---|
| 入社1年未満 | 労使協定で除外 | 請求できない | 請求できない |
| 週の所定労働日数が2日以下 | 労使協定で除外 | 請求できない | 請求できない |
| 所定労働時間の全部が深夜 | 条文に定めなし | 条文に定めなし | 請求できない |
| 深夜に介護できる同居の家族がいる | 条文に定めなし | 条文に定めなし | 条件を満たせば請求できない |
請求が取り消される事由と、制限期間が終わる事由
開始予定日の前日までに対象家族が亡くなるなど、介護をしないことになる事由が生じたときは、請求はされなかったものとみなされます。制限期間の途中で同じ事由が生じたときは、その日に制限期間が終わります。
施行規則第50条が挙げる事由は、対象家族の死亡、離婚・婚姻の取消し・離縁などによる対象家族と労働者との親族関係の消滅、労働者自身の負傷や疾病などで制限期間の末日まで対象家族を介護できない状態になったことです。
請求がされなかったものとみなされた場合、労働者は、その事由が生じた旨を事業主に遅滞なく通知しなければなりません。
制限期間は、制限終了予定日の前日までに上の事由が生じたときのほか、労働者について産前産後休業、育児休業、出生時育児休業または介護休業の期間が始まったときにも終わります(第16条の9、第18条、第20条による準用)。育児のための制限と違い、子が小学校就学の始期に達したことによる終了の定めは、介護には準用されません。
- 対象家族が、配偶者・父母・子・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫のいずれかであることを確かめている
- 請求書に、対象家族の氏名・続柄・要介護状態にある事実が書かれている
- 請求の期間が、所定外・時間外は1年以内、深夜は6か月以内に収まっている
- 除外を定めた労使協定があるか、対象は何かを確認している
よくある質問
介護を理由に残業の制限を請求されたら、残業は何時間までですか?
1か月について24時間、1年について150時間を超える時間外労働をさせることはできません(育児・介護休業法第18条第1項で準用する第17条第1項)。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は除かれます。
祖父母や兄弟姉妹の介護でも請求できますか?
請求できます。対象家族には、配偶者、父母、子、配偶者の父母のほか、施行規則第3条により祖父母、兄弟姉妹、孫が含まれます。同居や扶養は条文の要件にありません。
入社したばかりの従業員から請求されたら断れますか?
入社1年未満の労働者は、時間外労働と深夜業の制限を請求できません。所定外労働の制限では、労使協定で除外を定めているときに限り、請求を拒めます。
請求した従業員の賃金はどう扱いますか?
賃金の扱いは、この法律の条文には定めがありません。就業規則や雇用契約書で確認し、個別の判断は都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談してください。
参照した公的一次資料
- e-Gov法令検索「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(確認日:2026年10月13日、次回確認:2027年1月13日)
- e-Gov法令検索「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(確認日:2026年10月31日、次回確認:2027年1月31日)
- 厚生労働省「育児・介護休業等に関する規則の規定例[簡易版](令和7年4月1日、10月1日施行対応版)」(確認日:2026年10月13日、次回確認:2027年1月13日)
- 厚生労働省「育児・介護休業法について」(確認日:2026年10月13日、次回確認:2027年1月13日)