この記事の対象:特定技能外国人の就業規則と服務規律を整える受入れ企業の人事・労務担当者、懲戒を検討する前に確認事項を整理したい登録支援機関の担当者

懲戒の前提:就業規則に種別と事由を定め、周知しておく

厚生労働省の裁判例の解説は、使用者が懲戒するには、就業規則であらかじめ懲戒の種別と事由を定め、労働者に周知しておかなければならないとしています。

厚生労働省の「確かめよう労働条件」は、労働者は労働契約によって企業秩序を守る義務を負い、使用者はその義務に違反した労働者を懲戒する権限を持つと説明しています。そのうえで、懲戒をするには、就業規則であらかじめ懲戒の種別と事由を定め、労働者に周知しておく必要があるとしています。

労働基準法第89条第9号は、就業規則に制裁の定めをする場合、その種類と程度を記載するよう求めています。作成や変更のときは、労働者の過半数で組織する労働組合、それがなければ労働者の過半数を代表する者の意見を聴く必要があります(第90条)。この記事は法令と公的資料の整理で、個別の処分の可否は、労働基準監督署や社会保険労務士などの専門家に確認してください。

就業規則の届出の手続は就業規則の届出のガイドで確認できます。

懲戒をする前にそろえる3点(条文と厚生労働省の資料から)
確認すること根拠内容
就業規則に種別と事由がある労基法第89条第9号制裁の種類と程度を就業規則に書く
意見聴取をした労基法第90条過半数組合または過半数代表者の意見を聴く
労働者に周知している労基法第106条・厚労省の裁判例の解説掲示、備え付け、書面の交付などで周知する

無効になる場合:合理的な理由を欠き、社会通念上相当でない懲戒

労働契約法第15条は、懲戒が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められないときは、権利の濫用として無効と定めています。

第15条は、懲戒に係る労働者の行為の性質や態様その他の事情に照らして判断すると定めています。就業規則に書いてあっても、行為の内容に比べて重すぎる処分は、無効になる場合があります。

解雇についても、労働契約法第16条が同じ基準を定めています。懲戒の種類や程度は、就業規則に制裁の定めをする場合に記載する事項とされています(労働基準法第89条第9号)。

厚生労働省のQ&Aは、会社のお金を私的に使い込んだ事例で、就業規則に刑事犯罪に相当する行為を懲戒処分の対象とする定めと、懲戒解雇の定めがあれば、会社が懲戒解雇を検討する場合も考えられるとしています。同時に、実際の判断は、経緯や事情、従業員の地位、責任などによるとも述べています。

解雇の予告と解雇予告手当は解雇予告のガイドで確認できます。

減給の制裁の上限:1回は平均賃金1日分の半額、総額は賃金総額の10分の1

就業規則で減給の制裁を定める場合、労働基準法第91条は、1回の額が平均賃金の1日分の半額、総額が一賃金支払期の賃金総額の10分の1を超えてはならないと定めています。

上限は2つあります。減給の「一回の額」は、平均賃金の1日分の半額までです。1つの賃金支払期(たとえば月給なら1か月分)に複数の減給があっても、その総額は、その期の賃金総額の10分の1までです。

厚生労働省のQ&Aは、第91条の制限を超えて就業規則に定めた部分は、第92条第1項により無効で、労働者には適用されないと説明しています。所轄の労働基準監督署長は、法令に触れる就業規則の変更を命じることもできます(第92条第2項)。

減給の制裁の2つの上限(労働基準法第91条)
上限内容
1回の額平均賃金の1日分の半額まで
総額一賃金支払期における賃金の総額の10分の1まで
上限を超えた定めその部分は無効(第92条第1項)。監督署長は就業規則の変更を命じることができる(第92条第2項)
  • 就業規則の減給の定めが、1回と総額の2つの上限に収まっているか確認する
  • 懲戒の種別と事由が、就業規則に具体的に書かれているか確認する
  • 処分の重さが、行為の内容に見合っているか確認する

懲戒解雇:解雇の基準は同じで、予告の例外には行政官庁の認定が要る

懲戒解雇にも労働契約法第16条の基準が当てはまり、労働基準法第20条の解雇予告を省くには、労働者の責に帰すべき事由について行政官庁の認定が必要です。

労働契約法第16条は、解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められないときは、権利の濫用として無効と定めています。懲戒の一つとして解雇をする場合も、就業規則の定めと周知に加え、この基準を満たす必要があります。

労働基準法第20条は、解雇の30日前の予告か、30日分以上の平均賃金の支払いを求めています。ただし書きで、労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合は、この限りでないとしています。その場合は、第20条第3項により、その事由について行政官庁の認定を受けなければなりません。

よくある質問

就業規則に書いていない行為でも、懲戒処分はできますか?

厚生労働省の裁判例の解説は、使用者が懲戒するには、就業規則であらかじめ懲戒の種別と事由を定め、労働者に周知しておかなければならないとしています。

就業規則で減給の制裁を定めた場合、いくらまで減額できますか?

労働基準法第91条により、1回の額は平均賃金の1日分の半額、総額は一賃金支払期の賃金総額の10分の1までです。上限を超える部分は無効です。

懲戒が重すぎると、無効になりますか?

労働契約法第15条は、懲戒が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められないときは、権利の濫用として無効と定めています。

特定技能外国人には、日本人と違う懲戒の基準がありますか?

労働基準法第3条は、国籍を理由に賃金や労働時間などの労働条件で差別的な取扱いをしてはならないと定めています。第91条の減給の上限など、労働基準法の決まりは国籍を問わず適用されます。

参照した公的一次資料

試算に使う一次資料の一覧と確認状況を見る

次に確認すること

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