この記事の対象:特定技能外国人を会社の寮に住まわせる受入れ企業の総務・人事担当者、住居確保の支援を担当する登録支援機関の担当者

寮に関わる決まりは4つある

会社の寮が労働基準法の「事業の附属寄宿舎」に当たる場合、私生活の自由、寄宿舎規則の届出、設備の基準、新設時の計画届の4つが関わります。

労働基準法の第10章(第94条〜第96条の3)は、事業に附属する寄宿舎に労働者を住まわせる使用者の義務を定めています。設備の細かい基準は、厚生労働省令の事業附属寄宿舎規程にあります。これらは日本人の労働者も特定技能外国人も同じように対象にするもので、外国人だけに別の扱いをする規定ではありません。

入管法上の住居確保の支援とは別の決まりです。支援として住居を確保することと、寮が労働基準法上の寄宿舎に当たることは、両方が同時に成り立ちます。

どの建物が「事業の附属寄宿舎」に当たるかを定義した条文は、この記事で確認した範囲にはありません。社宅として民間のアパートを借り上げる場合などは、当たるかどうかを所轄の労働基準監督署に確認してください。なお、事業附属寄宿舎規程は、労働者を6か月以上の期間寄宿させる寄宿舎に適用されます。

寮の費用を給与とあわせて扱うときの社会保険の価額と所得税は、寮・食事の現物給与のガイドで確認できます。

寮に関わる4つの決まり
決まり内容根拠
私生活の自由寮に住む労働者の私生活の自由を侵さない。寮長などの選任に干渉しない労働基準法第94条、規程第4条
寄宿舎規則の届出起床・就寝・外出・外泊、行事、食事、安全衛生、建物・設備の管理について規則を作り、労働基準監督署長に届け出る労働基準法第95条、規程第1条の2
設備と安全衛生寝室の広さ、階段、消火設備、便所、浴場などの基準を満たす労働基準法第96条、規程第7条以下
新設・変更の計画届常時10人以上の労働者を使う事業などは、寄宿舎の設置・移転・変更の工事着手14日前までに届け出る労働基準法第96条の2、規程第3条の2

私生活の自由:外出の承認や行事への参加を強制しない

使用者は、寮に住む労働者の私生活の自由を侵してはならず、規程は侵す行為の例を3つ挙げています。

事業附属寄宿舎規程第4条は、私生活の自由を侵す行為として、外出または外泊について使用者の承認を受けさせること、教育・娯楽その他の行事に参加を強制すること、共同の利益を害する場所と時間を除いて面会の自由を制限することを挙げています。

労働基準法第94条は、寮長、室長など寄宿舎生活の自治に必要な役員の選任に、使用者が干渉してはならないとも定めています。

一方で、寄宿舎規則に書く事項には「起床、就寝、外出及び外泊に関する事項」が入っています(第95条第1項第1号)。規則に何をどこまで書けるかの線引きは条文だけでは決まらないため、案の段階で労働基準監督署に確認すると確実です。

  • 外出・外泊に事前の承認を求める決まりを作っていないか確かめる
  • 寮の行事への参加を強制していないか確かめる
  • 面会の制限が、共同の利益を害する場所と時間に限られているか確かめる

寄宿舎規則の作成・届出義務:同意書面と本人への提示

事業の附属寄宿舎に労働者を寄宿させる使用者は、5つの事項について寄宿舎規則を作り、行政官庁(労働基準監督署長)へ届け出る義務があります。第95条に人数の下限はなく、届出には寮に住む労働者の過半数を代表する者の同意を証明する書面を添えます。

寄宿舎規則に書く事項は、①起床、就寝、外出、外泊、②行事、③食事、④安全と衛生、⑤建物と設備の管理の5つです。規則を変えたときも届出が必要です。

このうち①〜④の事項の作成と変更には、寮に住む労働者の過半数を代表する者の同意が必要で、届出にはその同意を証明する書面を添えます。規程は、この書面に過半数を代表する者の氏名を書くこと、届出先が事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長であることを定めています。

規程は、規則の案をあらかじめ寮に住む労働者に周知すること(第2条)と、入寮させるときに本人へ規則を示すこと(第3条)も求めています。条文は、規則を示す言語を定めていません。

外国人が住む寮では、本人が読める言語の用意を検討するとよいでしょう。使用者と寮に住む労働者の双方が、寄宿舎規則を守る義務を負います(第95条第4項)。

  • 寄宿舎規則に5つの事項(起床・就寝・外出・外泊、行事、食事、安全衛生、建物設備の管理)が入っているか確かめる
  • 寮に住む労働者の過半数を代表する者の同意書面を用意する
  • 所轄の労働基準監督署長へ届け出る
  • 入寮するときに、本人が読める形で規則を渡して説明する

設備の基準:寝室は1人2.5㎡以上など

事業附属寄宿舎規程は、寝室、階段、消火設備、食堂、便所、浴場などの基準を定めています。主なものを表にしました。

寝室は、床の間と押入を除いて1人2.5㎡以上、1室の居住人員は16人以下と定められています。個人の身の回り品を入れる収納設備は個人別にし、各人専用の寝具を備えます。就眠時間が異なる2組以上の労働者を同じ寝室に住まわせることは、睡眠を妨げない方法を講じた場合を除いてできません。

男性と女性は、完全な区画を設けて出入口を別にした場合を除き、同じ棟に住まわせられません。便所は男女別にし、便房の数は、寮に住む労働者が100人以下なら15人またはその端数ごとに1個です。

育成就労の運用要領は、寝室を1人4.5㎡以上とするなど、別の基準を挙げています。労働基準法の規程の基準とは別に定められた基準ですので、受入れの制度ごとの基準も確認してください。

規程には、事業の種類や寄宿の人数に応じて基準を修正できる許可の仕組み(第36条)もあります。自社の寮が基準を満たすか判断しにくいときは、労働基準監督署に相談してください。

事業附属寄宿舎規程の主な基準
項目基準条
寝室の広さ床の間・押入を除き1人2.5㎡以上。1室16人以下第19条
寝室の位置地下や3階以上には設けられない(一定の耐火構造などの建物は例外)第9条
避難階段2階以上の寝室に常時15人未満が寄宿する建物は1か所以上、15人以上は2か所以上第11条
消火設備適当かつ十分な消火設備を設ける第14条
食堂常時30人以上の労働者を寄宿させる寄宿舎に設ける(近接する事業場の食堂がある場合を除く)第24条
浴場他に利用できる浴場がない場合に設ける第27条
健康の検査毎年2回以上、体重測定と伝染性眼疾患・伝染性皮膚疾患の有無の検査(労働安全衛生法の健康診断を受けた回数に応じて減らせる)第31条
休養室・相談担当者常時50人以上を寄宿させる場合に、休養室を設け、衛生の相談担当者を定める第33条・第34条

新設・変更の計画届:工事着手の14日前まで

常時10人以上の労働者を使う事業などは、寄宿舎を設置・移転・変更する工事の14日前までに、計画を届け出ます。

労働基準法第96条の2は、常時10人以上の労働者を就業させる事業、厚生労働省令で定める危険な事業または衛生上有害な事業が、寄宿舎を設置・移転・変更しようとするときは、基準に従って定めた計画を工事着手の14日前までに行政官庁に届け出るよう求めています。ここでいう10人は、寮に住む人数ではなく、事業で就業させる労働者の人数です。

規程は、様式第1号の届書に、周囲の状況と四隣との関係を示す図面、建築物の各階の平面図と断面図を添えて、所轄の労働基準監督署長へ提出するよう定めています。寄宿舎の一部だけを変更するときは、その部分だけの届出で足ります。行政官庁は、労働者の安全と衛生に必要と認めるときは、工事の着手を差し止めたり、計画の変更を命じたりできます。

  • 自社の事業の就業労働者が常時10人以上かを確かめる
  • 新設・移転・変更の工事日程を、着手の14日前より前に置く
  • 周囲の状況・四隣との関係の図面、各階の平面図と断面図を用意する

寮費の徴収は別の決まり:費用の見込みに入れる範囲

寮の設備を整える費用と、寮費を本人から徴収するときの決まりは、別々に確認します。

この記事で確認した条文は、寮の設備や手続を事業者に求めるもので、寮費の額や、その費用を本人に負担させてよいかどうかを決める規定は含みません。金額はこの記事では示しません。

特定技能の運用要領は、食費・居住費など本人が定期に負担する費用について、本人が内容を十分に理解して合意していること、額が実費に相当する額などの適正な額であること、費用の明細書などの書面が示されることを求めています。寮費を給与から差し引く場合は、賃金の全額払いの原則との関係も確認が必要です。

設備の基準を満たすための改修や、消火設備・寝具・収納設備の整備は、寮を設ける事業者の側の準備として、早い段階で見積りを取って費用の見込みに入れておくと、後から不足しません。

食費・居住費の徴収の決まりは食費・居住費の徴収のガイドで確認できます。

よくある質問

会社の寮を作った場合、寄宿舎規則の届出は必要ですか?

寮が労働基準法の「事業の附属寄宿舎」に当たる場合は必要です。第95条は、起床・就寝・外出・外泊、行事、食事、安全衛生、建物・設備の管理について規則を作り、行政官庁に届け出ることを求めています。当たるかどうかは、所轄の労働基準監督署に確認してください。

外出や外泊を事前の承認制にしてもよいですか?

事業附属寄宿舎規程第4条は、外出または外泊について使用者の承認を受けさせることを、私生活の自由を侵す行為の例として挙げています。規則への書き方は、案の段階で労働基準監督署に確認すると確実です。

寮の寝室は1人何㎡必要ですか?

事業附属寄宿舎規程第19条は、床の間と押入を除いて1人2.5㎡以上、1室16人以下としています。育成就労の運用要領は別に1人4.5㎡以上を挙げています。受入れの制度ごとの基準も確認してください。

民間のアパートを借り上げて住まわせる場合も、寄宿舎の規定が適用されますか?

「事業の附属寄宿舎」を定義した条文は、この記事で確認した範囲にはありません。借り上げた住宅が当たるかどうかは、所轄の労働基準監督署に確認してください。

参照した公的一次資料

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