この記事の対象:育成就労外国人の本人意向転籍を検討する受入れ機関・監理支援機関、転籍を希望する外国人本人
本人意向転籍の要件のうち技能・日本語能力が占める位置
本人意向転籍には複数の要件があり、技能・日本語能力の水準はその一つです。
出入国在留管理庁のQ&Aは、本人意向による転籍のための要件として、転籍を希望する育成就労外国人が分野ごとに分野別運用方針で定める一定水準の技能及び日本語の能力を修得していることを挙げています。これは転籍制限期間の経過、民間の職業紹介事業者を介さないこと、転籍先が優良な育成就労実施者であることなどと並ぶ、複数の要件のうちの一つです。
「育成就労制度運用要領のポイント」も、育成就労の目標として分野別運用方針に定められた技能試験・日本語能力試験のいずれにも合格する必要があるとし、日本語能力については本邦での生活・従事業務に必要な水準を試験で証明する方法として、原則「日本語教育の参照枠」のA2相当の水準を挙げています。
就労開始時から特定技能2号までの5段階
水準は在留期間の進行にあわせ、A1相当からB1相当まで段階的に上がります。
出入国在留管理庁・厚生労働省が公表する「分野別運用方針の主要な記載事項」は、一般的な技能水準・日本語能力水準を、育成就労の就労開始時、育成就労1年経過時、本人意向による転籍時、育成就労終了時・特定技能1号、特定技能2号の5段階で示しています。
技能水準は、段階ごとに次のとおりです。就労開始時は要件なしです。1年経過時と本人意向転籍時は育成就労評価試験(初級)です。
育成就労終了時と特定技能1号は、特定技能1号評価試験又は育成就労評価試験(専門級)です。特定技能2号は特定技能2号評価試験です。
日本語能力水準も、段階ごとに次のとおりです。就労開始時はA1相当以上、又はA1相当の講習の受講です。
1年経過時はA1相当以上、本人意向転籍時はA2.1相当以上です。育成就労終了時と特定技能1号はA2.2相当以上、特定技能2号はB1相当以上です。
| 段階 | 技能水準 | 日本語能力水準 |
|---|---|---|
| 育成就労の就労開始時 | ー | A1相当以上又はA1に相当する講習の受講 |
| 育成就労1年経過時 | 育成就労評価試験(初級) | A1相当以上 |
| 本人意向による転籍時 | 育成就労評価試験(初級) | A2.1相当以上 |
| 育成就労終了時・特定技能1号 | 特定技能1号評価試験又は育成就労評価試験(専門級) | A2.2相当以上 |
| 特定技能2号 | 特定技能2号評価試験 | B1相当以上 |
本人意向転籍時に必要なA2.1相当以上とは
転籍時点で求められるのはA1相当より高く、育成就労終了時のA2.2相当より低い、中間の水準です。
上表のとおり、本人意向転籍時に求められる日本語能力水準はA2.1相当以上で、技能水準は育成就労1年経過時と同じ育成就労評価試験(初級)です。育成就労終了時・特定技能1号移行時に求められるA2.2相当以上より一段階低く設定されています。
出典の資料には、A2.1・A2.2という区分そのものの試験名や採点方法の説明は記載されていません。日本語能力の証明方法や具体的な受験先は、出入国在留管理庁・外国人育成就労機構の最新の公式案内で確認してください。
分野別の日本語能力水準:17分野のうち介護と鉄道の運輸係員が上乗せ
分野別運用方針の別紙で育成就労の節がある17分野のうち、15分野は共通の水準で、介護と鉄道の運輸係員だけ高く設定されています。
出入国在留管理庁の分野別運用方針の別紙1〜7・9・11〜19(ビルクリーニング、リネンサプライ、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、宿泊、物流倉庫、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、林業、木材産業、資源循環、介護、鉄道)は、育成就労の各段階の日本語能力水準を定めています。航空と自動車運送業の別紙は特定技能のみの方針で、育成就労の節がありません。
介護は、育成就労を開始する時点でA2.2相当以上が求められ、別紙に講習の受講で代える定めは見当たりません。1年経過時は日本語学習プランの作成も加わり、終了時は介護特定技能評価試験(日本語)の合格も求められます。
本人意向転籍の制限期間も、ほかの分野の1年に対し2年です。鉄道の運輸係員は、開始時がA2.2相当以上、終了時がB1相当以上で、認定日本語教育機関の就労のための課程で追加50時間以上(合計150時間以上)の授業を受けさせる条件も別に置かれています。
分野ごとの技能試験の名称と整備状況は育成就労評価試験の分野別整備状況で確認できます。
| 分野 | 就労の開始時 | 開始後1年経過時 | 育成就労の終了時 | 本人意向転籍時 |
|---|---|---|---|---|
| 上記15分野(介護・鉄道の運輸係員を除く) | A1相当以上、または認定日本語教育機関等の同水準の講習の受講 | A1相当以上 | A2.2相当以上 | A2.1相当以上 |
| 介護 | A2.2相当以上 | A2.2相当以上と日本語学習プランの作成(B1相当以上に合格していれば不要) | A2.2相当以上と介護特定技能評価試験(日本語)の合格 | A2.2相当以上 |
| 鉄道(運輸係員の業務区分) | A2.2相当以上 | A2.2相当以上 | B1相当以上 | A2.2相当以上 |
| 鉄道(運輸係員以外の業務区分) | A1相当以上、または同水準の講習の受講 | A1相当以上 | A2.2相当以上 | A2.1相当以上 |
分野によって水準が異なる可能性
資料は「分野によっては、より高い日本語能力水準を求める場合もある」と注記しています。
「分野別運用方針の主要な記載事項」の表には、「分野によっては、より高い日本語能力水準を求める場合もある」との注記があります。具体的な分野と水準は、上の表のとおり各分野の別紙で確認できます。
資料が示す実例は、育成就労の対象外である自動車運送業分野(特定技能のみ)です。特定技能1号のバス・タクシー運転者の業務区分に求められる日本語能力水準は原則B1相当ですが、日本語サポーターの同乗などイレギュラー事象に適切に対処できる条件を満たす場合はA2.2相当に引き下げられるとされています。育成就労の本人意向転籍で分野別の上乗せがあるかどうかは、対象分野の分野別運用方針で個別に確認してください。
本人意向転籍時、転籍元は初期費用の補填を受けられるか
技能・日本語能力の水準とは別に、転籍先が転籍元へ一定の金額を支払う仕組みがあります。金額の算出に使う告示はまだ制定されていません。
出入国在留管理庁のQ&Aは、本人意向転籍の要件の一つとして「転籍先の育成就労実施者が転籍元の育成就労実施者に対して一定の金額を支払うこととしていること」を挙げ、この金額を「育成就労外国人の取次ぎ及び育成に係る費用として主務大臣が告示で定める額に、転籍元での就労期間に応じた按分率をかけた金額」と説明しています。
同Q&Aは「本人意向の転籍の際には、転籍元が受入れに要した初期費用について、転籍先が一定以上の金額を負担することとしました」としたうえで、「この告示は今後制定する予定です」と明記しています。本ページ確認時点(2026年9月26日)で、告示で定める金額・按分率の具体的な数値はまだ公表されていません。
よくある質問
本人意向転籍にはどの試験の合格が必要ですか?
技能は育成就労評価試験(初級)、日本語能力はA2.1相当以上です。
転籍時の水準は分野で違いますか?
一般的な基準はA2.1相当以上ですが、公的資料は「分野によっては、より高い水準を求める場合もある」と注記するのみで、具体的な分野・水準はこの資料からは分かりません。対象分野の分野別運用方針で確認してください。
育成就労終了時に必要な水準と何が違いますか?
育成就労終了時・特定技能1号移行時はA2.2相当以上、特定技能2号はB1相当以上と、転籍時のA2.1相当以上より高い水準が必要です。
日本語能力はどの試験で証明しますか?
出典の資料に具体的な試験名の指定は記載されていません。分野別運用方針・出入国在留管理庁の最新案内で確認してください。
本人意向転籍時、転籍元は初期費用の補填を受けられますか?
出入国在留管理庁のQ&Aは、転籍先が転籍元に対し、主務大臣が告示で定める金額に育成就労外国人の在籍期間に応じた按分率を乗じた金額を支払うこととしたと説明しています。金額を定める告示は本ページ確認時点(2026年9月26日)ではまだ制定されておらず、具体的な金額・按分率は確認できません。
参照した公的一次資料
- 厚生労働省「分野別運用方針の主要な記載事項②」(確認日:2026年8月22日、次回確認:2026年11月22日)
- 出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」(確認日:2026年10月22日、次回確認:2026年11月22日)
- 出入国在留管理庁「育成就労制度運用要領のポイント」(確認日:2026年9月7日、次回確認:2026年12月7日)
- 出入国在留管理庁「育成就労制度」(確認日:2026年10月22日、次回確認:2026年11月22日)
- 出入国在留管理庁「育成就労制度に係る制度の運用に関する基本方針・分野別運用方針」(確認日:2026年9月9日、次回確認:2026年12月9日)
- 出入国在留管理庁「育成就労制度に係る分野別運用方針 別紙1 介護」(介護分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針)(確認日:2026年9月26日、次回確認:2026年12月26日)
- 出入国在留管理庁 別紙11「鉄道分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針」(確認日:2026年10月8日、次回確認:2026年12月8日)
- 出入国在留管理庁 別紙2「ビルクリーニング分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針」(確認日:2026年10月8日、次回確認:2026年12月8日)
- 出入国在留管理庁 別紙4「工業製品製造業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針」(確認日:2026年10月8日、次回確認:2026年12月8日)
- 出入国在留管理庁 別紙15「飲食料品製造業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針」(確認日:2026年10月8日、次回確認:2026年12月8日)
- 「外食業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針」(閣議決定、別紙16)(確認日:2026年9月26日、次回確認:2026年12月26日)
- 出入国在留管理庁 別紙7「自動車整備分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針」(確認日:2026年10月7日、次回確認:2026年12月7日)
- 出入国在留管理庁 別紙12「物流倉庫分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針」(確認日:2026年10月7日、次回確認:2026年12月7日)
- 出入国在留管理庁 別紙17「林業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針」(確認日:2026年10月7日、次回確認:2026年12月7日)
- 出入国在留管理庁 別紙18「木材産業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針」(確認日:2026年10月7日、次回確認:2026年12月7日)
- 出入国在留管理庁 別紙19「資源循環分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針」(確認日:2026年10月1日、次回確認:2026年12月1日)
- 法務大臣ほか「リネンサプライ分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針」(確認日:2026年8月11日、次回確認:2026年11月11日)
- 「建設分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針」(閣議決定、別紙5)(確認日:2026年9月3日、次回確認:2026年12月3日)
- 「造船・舶用工業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針」(閣議決定、別紙6)(確認日:2026年9月26日、次回確認:2026年12月26日)
- 「宿泊分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針」(閣議決定、別紙9)(確認日:2026年9月26日、次回確認:2026年12月26日)
- 法務大臣・厚生労働大臣・国家公安委員会・外務大臣・農林水産大臣「農業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針」(分野別運用方針別紙13)(確認日:2026年9月27日、次回確認:2026年12月27日)
- 法務大臣・厚生労働大臣・国家公安委員会・外務大臣・農林水産大臣「漁業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針」(分野別運用方針別紙14)(確認日:2026年9月27日、次回確認:2026年12月27日)
次に確認すること
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