この記事の対象:複数社の見積書を比較し、費用漏れを防ぎたい担当者

自社の条件で費用の合計を確かめるときは、特定技能の受入れ費用の試算ツールで、公的資料で確認できた費目の概算と未確認費目の整理ができます。

総額の前に見積条件を揃える

見積総額が違うときは、単価差より先に、含まれている費目と計算単位が同じかを確認します。

登録支援機関、人材紹介、在留手続の外部依頼、渡航、住居準備等が一つの初期費用へまとめられていると、比較できません。支払先と役務を分けて書き出します。

登録支援機関と人材紹介会社は、根拠となる制度が異なります。登録支援機関は特定技能制度に基づき出入国在留管理庁長官の登録を受けた機関で、受入れ機関から委託された支援計画(義務的支援10項目)を実施します。

人材紹介会社は職業安定法に基づく有料職業紹介事業者で、求人・求職のマッチングを担う別の役務です。同じ見積書に両方の費用が並ぶ場合も、支払先・契約根拠・実施内容を混同せず別費目として確認します。

在留資格関係の書類作成を代行する役務は行政書士法に基づく行政書士(行政書士法人)の業務です。2026年1月1日施行の改正行政書士法は、無資格者が名目を問わず報酬を得てこの業務を行うことへの規制(第19条第1項)を明確化し、違反時に法人にも罰金刑を科す両罰規定(第23条の3)を新設しました。見積書に書類作成業務が含まれる場合は、支払先・契約根拠・実施者の資格を他の役務と同様に分けて確認します。

人数を掛ける費用、会社単位の費用、毎月発生する費用、1回だけ発生する費用を分けると、採用人数や入社月が変わった場合も再計算できます。

費目ごとに6列で確認する

費目名、金額、単位、発生時期、確認状況、負担者を一行にまとめます。

金額が分からない項目は0円にせず未確認とします。発生しないことを確認できた項目だけを対象外にします。

同じ名称でも、登録支援機関の定額報酬に含まれる場合と別途実費になる場合があります。契約書または見積条件へ戻って確認します。

見積書を転記する確認列
列記録する内容
費目紹介、支援、通訳、送迎、住居等
金額・単位1人当たり/会社全体
発生時期初回/月額
確認状況未確認/見積済み/対象外
負担者受入れ機関/本人/個別確認

見積書に並ぶ費目の例:初期費用・月額費用・実費

見積書の費目は、初期費用、月額費用、実費の3つに分けて並べると比べやすくなります。金額は見積書から転記し、公的な手数料だけを公式の金額と照らします。

初期費用は、契約や受入れの開始時に一度支払う費目です。月額費用は毎月支払う費目で、実費は、通訳や移動などで発生した分だけ請求される費目です。

どの費目がどの区分になるかは、見積書や契約書の書き方で決まります。同じ名称でも区分が違うことがあるため、費目ごとに契約書の定義へ戻って確認します。下の表は費目の例で、金額は載せていません。

在留諸申請の公的手数料は、許可を受ける在留期間によって額が変わる申請があります。見積書の金額は、出入国在留管理庁の公式ページの金額と照らして確認します。

見積書に並ぶ費目の例(金額欄は見積書から転記する)
区分費目の例確認する点
初期費用在留諸申請の公的手数料公式の金額と一致しているか。許可を受ける在留期間で額が変わる申請があるか
初期費用人材紹介手数料上限制手数料か届出制手数料か。返戻金制度の有無。登録支援機関の費用と別の行になっているか
初期費用雇入れ時の健康診断費用を受入れ側が負担する前提になっているか
初期費用空港送迎・帰国旅費受入れ機関が負担する費用として計上されているか
月額費用登録支援機関への支援委託費義務的支援10項目のどこまでを含むか。人数が変わったときの扱い
実費通訳費・交通費定額に含まれるか、別途請求か。請求の単位と上限

支援委託費は10項目との対応を見る

支援委託費の金額だけでなく、義務的支援10項目のどこまでを含むかを確認します。

全部委託なら全項目の実施方法と実費範囲、一部委託なら外部担当項目だけの見積を確認します。自社担当項目も社内工数・通訳・移動等が未確認のまま消えないようにします。

公的調査の平均値は過去時点の比較基準です。現在の見積額と混ぜず、見積がないときに自動で現在価格として採用しません。

運用要領は、10項目のうち下の5項目について実施の時期や回数を定めています。見積書で支援委託費の行を分けるときは、発生時期の欄をこの時期に合わせて確認します。

金額は載せていません。残りの5項目(住居確保・生活に必要な契約、公的手続等への同行、日本語学習の機会の提供、相談・苦情への対応、日本人との交流促進)は、本人の希望や必要に応じて行う支援で、本表の5項目のような時期の定めは確認していません。

義務的支援のうち、運用要領が実施時期を定めている5項目
支援項目運用要領が定める実施時期見積書で確認する点
事前ガイダンスの提供在留資格認定証明書の交付申請前(国内在留者は在留資格の変更申請前)入国前に発生する費目として計上されているか。通訳費が別行か
出入国する際の送迎入国時と出国時(一時帰国の出入国は含まない)入国時の送迎だけでなく、出国時の送迎の実費も含まれているか
生活オリエンテーションの実施入国後(在留資格の変更を受けた場合は変更後)、遅滞なく入国後すぐの費用として計上されているか。通訳費が別行か
転職支援外国人の責めに帰すべき事由によらずに特定技能雇用契約を解除するとき平時の月額に含めるか、発生したときの別途請求か
定期的な面談の実施・行政機関への通報外国人とその監督をする立場にある者それぞれと、3か月に1回以上月額に含まれるか。面談1回ごとの請求か。通訳の言語

見積依頼時に質問を固定する

候補ごとに質問を変えると比較できないため、同じ質問票を使います。

税の扱い、支払時期、返金条件、人数変更時の再計算、交通費等の実費、通訳言語、休日・夜間対応、再委託の有無を確認します。

複数拠点で受け入れる場合は、分野要件が法人単位か営業所単位かも確認します。ビルクリーニング分野では、外国人が働く営業所ごとに建築物清掃業または建築物環境衛生総合管理業の登録が必要なため、拠点追加に伴う登録確認や見積範囲を分けます。

月額単価の確認点は次の3つです。(1) 単価が税込か税抜か。(2) 課金の単位が支援対象の1人ごとか、事業所(会社)ごとか。

(3) 月の途中で支援が始まる場合や、人数が増減する場合に、日割りになるのか、その月は満額か、翌月から変わるのか。同じ「月額」でも条件が違うと比べられないため、回答は見積書の該当欄に書いてもらいます。

不明な回答は推測で埋めず、未確認として残します。確認済み金額だけで小計し、未確認件数を意思決定材料にします。

回答日と回答者も記録し、口頭説明だけでなく見積書・契約案の該当箇所へ結び付けます。契約更新時は同じ表を使い、単価だけでなく支援範囲や実費条件の変更も確認します。

  • 消費税を含むか
  • 支払日と契約期間
  • 人数変更時の単価
  • 実費の上限・精算方法
  • 対応言語と追加料金
  • 複数拠点の分野要件
  • 解約・不採用時の扱い

不許可・不交付・早期離職のとき、費用が戻るかを見積書で確かめる

公的な手数料は許可の時に納付する定めがあります。民間の紹介手数料は、返戻金制度の内容が契約書の明示事項です。どちらも、戻る額を見積書の段階で確認できる形にします。

在留資格の変更許可・在留期間の更新許可の手数料について、入管法第67条は、許可に係る記載、交付又は証印の時に納付すると定めています。許可前に不許可となった場合の手数料の扱いは、この条文からは読み取れないため、申請先の出入国在留管理官署へ確認します。在留資格認定証明書交付申請の手数料は、本サイトの海外採用のガイドのとおり無料です。

有料職業紹介事業者は、厚生労働省の業務運営要領で、手数料に関する事項と返戻金制度に関する事項を、求人者と求職者の双方へ書面等で明示しなければならないとされています。返戻金制度は、早期に離職したときなどに手数料の一部を戻す仕組みの有無と内容を示すものです。要領が定めているのは明示の義務で、戻す割合や期間は、要領からは分かりません。

登録支援機関の支援委託費や、行政書士等への手続報酬など、ほかの費目が戻るかどうかは、本節の出典では確認できていません。見積書の行ごとに、契約書の返金条件を確かめます。

戻る費用の確認先(確認できた範囲)
費目確認できたこと見積書・契約書で確かめる点
変更・更新許可の公的手数料許可に係る記載、交付又は証印の時に納付(入管法第67条)不許可の場合の扱いは官署へ確認
人材紹介の手数料返戻金制度を求人者へ明示する義務(業務運営要領)戻る割合・期間・対象となる離職の範囲
  • 返戻金制度の明示書面を受け取ったか
  • 戻る割合と期間が書面に書かれているか
  • 不許可・不交付のときの扱いが契約書にあるか
  • 手数料以外の費目の返金条件も行ごとに確認したか

試算ツールの内訳名と見積書の項目名の対応

試算ツールの内訳名は、見積書では別の名前で書かれていることがあります。対応を見て、未確認の費目を見積書の行へ割り当てます。

見積書の項目名は事業者ごとに異なるため、下の表の右列は書き方の例です。見積書の名前が表と違っても、金額・単位・発生時期は見積書の記載を優先し、不明な行は未確認のまま確認を依頼します。

対応する行が見積書に無い費目は、0円ではなく未確認として扱います。

対応が確認できたら、試算ツールへ戻り、見積済みの金額を入力して概算を更新してください。概算は目安であり、実際の費用は見積書と関係機関の案内で確認します。

試算ツールの内訳名と、見積書での項目名の例
試算ツールの内訳名見積書での項目名の例見積書で確認する点
全部委託の受入時報酬支援契約時報酬・初期費用登録支援機関へ一度支払う費用か。支援計画の作成等の範囲
全部委託の月額支援料支援委託費・月額管理費1人あたりか事業所あたりか。義務的支援10項目のどこまでを含むか
人材紹介紹介手数料・採用手数料支援委託費と別の行か。返戻金の条件
在留手続依頼申請取次費・書類作成費公的な手数料と外部への報酬が分かれているか
渡航・入国時移動航空券代・送迎費・査証関連費誰が負担する前提か。実費精算か定額か
住居準備住居手配費・敷金礼金・家具家電支援としての手配費と、住居そのものの費用が分かれているか
健康診断健康診断費受入れ側が負担する前提になっているか
分野固有費分野別の協議会費・試験関連費等分野ごとに必要な費目が見積に入っているか
自社支援の人件費・実費見積書に載らない社内の費用担当者の工数や通訳・移動の実費を、自社で別に見込んでいるか

よくある質問

未確認の費用は0円で計算してよいですか?

0円と未確認は分けてください。本サイトでは見積済み0円と未確認を区別し、確認済み金額だけを小計します。

公的調査の平均額を現在の見積として使えますか?

現在の標準価格とは限りません。調査時点を明示した比較基準として扱い、実際の契約では現在の見積書を優先してください。

複数社の総額だけを比較してもよいですか?

含まれる費目・単位・実費範囲が同じとは限りません。費目別に条件を揃えてから小計を比較してください。

参照した公的一次資料

試算に使う一次資料の一覧と確認状況を見る

次に確認すること

この記事の条件を引き継いで、未確認費目を整理する