この記事の対象:特定技能外国人など外国人従業員を雇用する企業の社会保険担当者、出身国の年金制度との二重加入を心配している労務担当者
社会保障協定は24か国と結ばれ、ベトナムなどの国は一覧に載っていない
社会保障協定は、二国間で年金などの加入を調整する取り決めで、日本が協定を発効させている国は限られています。
日本年金機構によると、協定の目的は、保険料の二重負担を防ぐことと、年金の加入期間を通算して受給資格を得やすくすることの2つです。2025年12月1日にオーストリアとの協定が発効し、日本は24か国と協定が発効した状態になる、と同機構は案内しています。
2025年10月27日更新の発効済みの国の一覧には、ドイツ、英国、韓国、アメリカ、インド、フィリピン、中国などが載っています。ベトナム、インドネシア、ネパール、ミャンマーなどは載っていないため、これらの国の出身者には協定の調整は働きません。英国、韓国、中国、イタリアとの協定は、保険料の二重負担の防止だけが対象です。
出身国で見る対象:インド・フィリピン・中国は年金が対象
協定ごとに、二重加入の防止や期間通算の対象になる制度が違います。
日本年金機構の一覧表では、協定発効年月はインドが2016年10月、フィリピンが2018年8月、中国が2019年9月です。インドとフィリピンは、二重加入防止の対象が日本・相手国ともに公的年金制度で、加入期間の通算ができるとされています。中国は期間の通算ができません。
対象になっていない制度は、それぞれの国の法令に基づいて適用される、とも書かれています。表で年金のみが対象の国については、医療保険や雇用保険の扱いは協定では調整されません。
帰国時の年金の扱いは脱退一時金のガイドで確認できます。
| 相手国 | 協定発効年月 | 加入期間の通算 | 二重加入防止の対象(日本側) |
|---|---|---|---|
| インド | 2016年10月 | できる | 公的年金制度 |
| フィリピン | 2018年8月 | できる | 公的年金制度 |
| 中国 | 2019年9月 | できない | 公的年金制度 |
日本での現地採用は日本の制度、5年以内の一時派遣は派遣元国の制度
協定相手国の出身者でも、日本の事業所に採用された人は、原則として日本の社会保障制度に加入します。
日本年金機構は、協定により原則として就労する国の制度のみに加入する、と案内しています。協定相手国の事業主から日本の支店などに派遣される場合や、日本の企業に現地採用された場合は、日本の制度のみに加入します。
例外の代表は、派遣元国の事業主から、日本に5年を超えない見込みで一時派遣される場合です。このときは派遣元国の制度のみに加入し、日本の制度は免除されます。
派遣期間が5年を超える見込みの場合は、原則として日本の制度に加入します。協定によっては見込みにかかわらず派遣開始日から5年間が免除になるなど扱いが異なり、延長には両国機関の合意が要るため、個別の人がどちらに当たるかは年金事務所に確認します。
| 就労状況 | 加入する社会保障制度 |
|---|---|
| 協定相手国の事業主による5年以内の一時派遣 | 協定相手国の制度(日本は免除) |
| 5年を超えると見込まれる派遣 | 日本の制度 |
| 日本での現地採用 | 日本の制度 |
免除を受けるには、相手国の機関から適用証明書を取る
日本の年金への加入を免除されるには、相手国の制度に加入している証明が必要です。
日本年金機構の案内では、一時派遣の人が日本の制度の加入を免除されるには、協定相手国の実施機関から適用証明書の交付を受けます。申請は、派遣元の事業主が相手国の実施機関に行います。来日後は、日本の事業所に適用証明書を提出し、年金事務所に求められたときも提示します(ベルギー、フランスは本人が所持します)。
日本に住所を持つに至った人や日本の適用事業所に使用されるに至った人が免除に当たる場合は、「厚生年金保険・国民年金 条約等適用者に関する届書」(令和6年7月1日開始)を年金事務所または事務センターへ出します。一方、日本の制度のみに加入する現地採用の人は、事業主が厚生年金保険・健康保険の資格取得届を出します。
資格取得届の手続きは社会保険の資格取得・喪失のガイドで確認できます。
よくある質問
ベトナム出身の従業員は、社会保障協定で日本の年金が免除されますか?
日本年金機構の発効済みの国の一覧にベトナムは載っていないため、協定による免除は働きません。個別の取り扱いは年金事務所に確認してください。
フィリピンやインド出身の人を日本の企業が採用すると、日本の年金に入りますか?
日本年金機構は、日本の企業に現地採用された場合は日本の社会保障制度のみに加入すると案内しています。免除の代表例は、派遣元国の事業主から5年以内の見込みで一時派遣される場合で、協定によって扱いが異なります。
適用証明書は、どこに申請しますか?
協定相手国の実施機関に、派遣元の事業主が申請します。日本年金機構は、来日後に日本の事業所へ提出するよう案内しています。
協定の対象国なら、健康保険も免除されますか?
対象の制度は協定ごとに違います。日本年金機構の一覧表では、インド、フィリピン、中国は公的年金制度が二重加入防止の対象です。対象外の制度は各国の法令に基づいて適用されます。
参照した公的一次資料
- 日本年金機構「社会保障協定」(確認日:2026年10月14日、次回確認:2026年11月14日)
- 日本年金機構「協定を結んでいる国から日本で働く場合の加入すべき制度」(確認日:2026年10月23日、次回確認:2027年1月26日)
- 日本年金機構「協定を結んでいる国から日本で働く場合の手続き」(確認日:2026年10月23日、次回確認:2027年1月26日)
- 日本年金機構「協定を結んでいる国との協定発効時期および対象となる社会保険制度」(確認日:2026年10月23日、次回確認:2027年1月26日)