この記事の対象:特定技能外国人を受け入れる事業所で、高年齢の従業員も働いている企業の人事・安全衛生担当者

努力義務の内容と、指針の適用日

労働安全衛生法第62条の2は、事業者に、高年齢者の労働災害を防ぐための措置を講じる努力義務を課しています。

条文は、事業者は高年齢者の労働災害の防止を図るため、高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善、作業の管理その他の必要な措置を講ずるように努めなければならない、と定めています。罰則つきの義務ではなく、努力義務です。

同条第2項に基づき、厚生労働大臣が「高年齢者の労働災害防止のための指針」を公表しました。基発0210第1号(令和8年2月10日)によると、この指針は令和8年4月1日から適用されています。同じ通達は、令和2年3月16日付けの「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」を令和8年3月31日で廃止するとしています。

厚生労働省の案内ページは、この指針をエイジフレンドリー指針と呼んでいます。指針は、各事業場の高年齢者の就労状況や業務の内容に応じて、実施できる対策に積極的に取り組むことを求めています。

指針が求める措置は5つの柱

指針の第2は、事業者が取り組む事項を、体制、職場環境の改善、健康や体力の把握、状況に応じた対応、安全衛生教育の5つに分けています。

どれも、リスクアセスメントの結果を踏まえて優先順位の高いものから取り組む形です。対策は、危険な作業の廃止・変更、手すりの設置などの工学的対策、マニュアルの整備などの管理的対策、身体負荷を軽減する個人用の装備の順で検討するとされています。

体制づくりの補足として、高年齢者の健康管理には産業医を中心とした産業保健体制を活用し、産業医が選任されていない事業場は地域産業保健センター等の外部機関を活用することが有効とされています。高年齢者が職場のリスクや不調を相談できる企業内の相談窓口を置くことも挙げられています。

指針第2の5つの柱と主な例(基発0210第1号の別添1)
柱指針に書かれた主な内容
1 体制の確立経営トップが高年齢者労働災害防止対策を盛り込んだ安全衛生方針を表明する。担当する組織や担当者を指定する。安全衛生委員会等で調査審議する(委員会がない事業場は、労働者の意見を聴く機会等で労使が話し合う)。リスクアセスメントを行う
2 職場環境の改善通路を含む作業場所の照度の確保、階段の手すり、段差の解消、防滑素材や防滑靴、警報音を聞き取りやすくする工夫、涼しい休憩場所、重量物の補助機器、勤務形態や作業マニュアルの見直し、定期的な休憩
3 健康や体力の把握雇入時と定期の健康診断を確実に実施する。体力チェックを継続的に行うことが望ましい。健康や体力の情報は、本人の同意の取得方法や取扱方法を安全衛生委員会等で定める
4 状況に応じた対応健康や体力の状況を踏まえて必要に応じ就業上の措置を講じる。適合する業務の提供に努める。心身両面にわたる健康保持増進措置に取り組む
5 安全衛生教育高年齢者本人への教育と、管理監督者等への教育を行う。腰痛や転倒など複数の災害を対象に年間計画を立てる

特定技能外国人の職場で確認すること

今回確認した指針と通達には、外国人労働者についての記載はありません。高年齢者の措置は、国籍に関係なく、その事業場で働く高年齢者に向けたものです。

外国人を受け入れる事業所では、次の点が重なります。1つ目は、職場環境の改善です。

通路の照度、段差、滑りやすい床、警報音の聞き取りやすさは、高年齢の従業員の転倒防止になるだけでなく、日本語が十分でない人にも危険を伝えやすくなります。ただし、指針がこれを外国人向けの措置として書いているわけではありません。

2つ目は、管理監督者の関わり方です。通達は、管理監督者が高年齢者の働く現場を見て声がけをし、作業に無理がないかを把握することが重要としています。外国人と高年齢者が同じ現場にいるときは、安全衛生教育を実施する側が、双方に配慮した作業の指示を決めておく必要があります。

3つ目は、情報の扱いです。体力チェックなどで得た情報は、不利益な取扱いを防ぐため、本人の同意の取得方法や取扱方法を、安全衛生委員会等や労働者の意見を聴く機会で定めるとされています。受入れ企業が外国人の体調管理で集める情報も、同じ考え方で扱う必要があります。

外国人本人への雇入れ時の教育は、この指針とは別に、労働安全衛生法第59条と規則第35条で義務づけられています。教材の選び方は別のガイドで確認できます。

外国人向けの教材は、外国人労働者向け安全衛生教育教材のガイドにまとめています。

夏場の暑熱対策と補助金の窓口

通達は、暑熱作業について、休憩時間の確保と、作業者の水分・塩分の摂取状況の確認を求めています。

熱中症の兆候が出たときは、速やかに作業を中断するなどの措置を講じます。早期発見の方法として、責任者の巡視、2人以上の作業者が互いの健康状態を確認するバディ制、責任者と労働者の双方向の定期連絡、これらの組合せが挙げられています。

厚生労働省の案内ページには、中小企業事業者の高年齢労働者の労働災害防止対策を対象にした「エイジフレンドリー補助金」の紹介があります。対象や金額、募集時期は年度ごとに変わるため、申請前に最新の募集要項を確認してください。

  • 安全衛生方針に高年齢者の労働災害防止を盛り込んだか
  • 担当する組織や担当者を決めたか
  • 安全衛生委員会等、または労働者の意見を聴く機会で話し合ったか
  • 通路の照度、段差、滑りやすい床を点検したか
  • 体力チェックを行う場合の同意と情報の取扱いを決めたか
  • 管理監督者が高年齢者の働く現場を見て声がけする運用にしたか

よくある質問

高年齢者の労働災害防止は、法律上の義務ですか?

労働安全衛生法第62条の2は、事業者が措置を講ずるように努めなければならないと定める努力義務です。指針は、その措置の適切で有効な実施のための事項を示したものです。

高年齢者の労働災害防止のための指針は、いつから適用ですか?

基発0210第1号(令和8年2月10日)は、令和8年4月1日から適用されるとしています。従来のガイドラインは令和8年3月31日で廃止です。

外国人労働者は、この指針の対象になりますか?

確認した指針と通達に、外国人についての記載はありません。事業場で働く高年齢者に向けた措置で、外国人が高年齢者であれば同じように対象になります。

エイジフレンドリー補助金は、誰でも使えますか?

厚生労働省の案内ページでは、中小企業事業者による高年齢労働者の労働災害防止対策などを対象とする補助と説明されています。対象や募集時期は年度で変わるため、最新の募集要項で確認してください。

参照した公的一次資料

試算に使う一次資料の一覧と確認状況を見る

次に確認すること

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